GSK、60歳以上を対象としたRSウイルスワクチン「アレックスビー」についてRSウイルス流行期3シーズンでのRSウイルス予防効果を示す良好なデータを発表
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アレックスビーは、RSウイルス感染症に対するリスクが高い人も含む60歳以上でのRSウイルス流行期3シーズンにわたる有効性と安全性を示した初めてのRSウイルスワクチン
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安全性と反応原性データは第III相試験プログラムで当初得られた結果と一致
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今後、ワクチン追加接種スケジュールを決定するためのより長期的な追跡調査を継続予定
この資料は、英国GSK plcが2024年10月8日に発表したプレスリリースの日本語抄訳であり、報道関係者各位の利便性のために提供するものです。この資料の正式言語は英語であり、その内容およびその解釈については英語が優先されます。 詳細は https://www.gsk.comをご参照ください。
GSK(本社:英国)は、RSウイルス感染症に対するリスクが高い人も含む60歳以上の成人を対象として、RSウイルスによる下気道疾患(LRTD)に対するRSウイルスワクチン「Arexvy(アジュバント添加RSウイルスワクチン)(以下 アレックスビー)」の単回接種の有効性を評価する第III相試験AReSVi-006(Adult Respiratory Syncytial Virus)において、RSウイルス流行期3シーズンにわたる新たなデータが得られたことをお知らせします(NCT04886596)1。これらのデータは、米国胸部疾患学会(American College of Chest Physicians)によるCHEST 2024の年次総会にて発表されました。
アレックスビーは、世界で初めて承認されたRSウイルスワクチンであり、60歳以上の成人(特定の基礎疾患を有するためRSウイルス感染症に対するリスクが高い人も含む)における有効性に基づき承認されました。本結果において、アレックスビーを単回接種後、RSウイルス流行期3シーズンにわたる本ワクチンの累積有効性は、プラセボ投与群と比較して、RSウイルス感染による下気道疾患(RSV-LRTD)に対しては62.9%(97.5% CI, 46.7-74.8;12,468例中48例 対 12,498例中215例)、重度のRSV-LRTDに対しては67.4%(95% CI, 42.4-82.7;12,468例中15例 対 12,498例中75例)と、臨床的な意義を示しました。3回目の流行期シーズンでは、RSV-LRTDに対する本ワクチンの有効性は48.0%(95% CI, 8.7-72.0;4,988例中16例 対 10,031例中61例)でした。
これらの結果には、70~79歳の高齢者と特定の基礎疾患を有する成人におけるRSウイルスのサブタイプに対する有効性が含まれています。RSウイルスは、病態を悪化させ入院に至る可能性があるため、RSウイルス流行期3シーズンにわたる累積有効性は、健康に大きな影響をもたらすと考えられます。そして、アレックスビーは、医療従事者が年間を通じて柔軟に接種できるという可能性を示唆しています。長期的には、最適な予防効果を維持するために追加接種が必要です。GSKは、ワクチン接種スケジュールや追加接種の最適な時期に関する決定に役立てるために、追加接種を含む有効性と免疫応答に関するデータを引き続き推奨機関と共有していきます。
RSウイルスは、肺および呼吸器に影響を及ぼす一般的な感染性ウイルスであり、感染者数は世界中で、年齢を問わず毎年6,400万人と推定されています2。基礎疾患、免疫低下状態、または加齢によって成人のRSウイルスによる疾患のリスクが高くなるといわれています。RSウイルスにより、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、喘息、慢性心不全など様々な病態が悪化し、肺炎、入院、死亡などの重篤な転帰につながる可能性があります3。先進国の60歳以上の成人では、毎年、RSウイルスによる入院は465,000例以上、死亡は33,000例以上におよびます4。
GSKチーフ・サイエンティフィック・オフィサーのトニー・ウッド(Tony Wood)は次のように述べています。
「これらの新しいデータは、アレックスビーの単回接種によって、RSウイルス流行期3シーズンにわたり、RSウイルス感染症のリスクがある数百万人もの高齢の方々をRSウイルス感染症から守り、公衆衛生に利益をもたらす可能性があることを示しており、喜ばしく思います。アレックスビーは、RSウイルス流行期3シーズンにわたって有効性と安全性を示した初めてのRSウイルスワクチンです。引き続き、より長期的な追跡調査によるデータを共有し、推奨機関による最適な追加接種時期の決定に役立てていただく予定です。」
評価項目 | シーズン1終了時点の有効性* | シーズン2終了時点の有効性 | シーズン3終了時点の有効性 | 3シーズンにわたる累積有効性** |
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RSウイルス感染による下気道疾患 (RSV-LRTD) |
検証的主要評価項目: 追跡期間中央値6.7カ月 82.6% 96.95% CI, 57.9–94.1 12,466例中7例 対 12,494例中40例 |
記述的副次評価項目: 追跡期間中央値6.3カ月 56.1% 95% CI, 28.2–74.4 4,991例中20例 対 10,031例中91例 |
記述的副次評価項目: 追跡期間中央値7カ月 48.0% 95% CI, 8.7-72.0 4,988例中16例 対 10,031例中61例 |
検証的副次評価項目: 追跡期間中央値30.6カ月 62.9% - シーズンを共変量とする*** 97.5% CI, 46.7-74.8 12,468例中48例 対 12,498例中215例 69.1% - シーズンを共変量としない(事後解析) 97.5% CI, 55.8-78.9 12,468例中48例 対 12,498例中215例 |
重度下気道疾患 | 記述的副次評価項目 94.1% 95% CI, 62.4–99.9 12,466例中1例 対 12,494例中17例 |
記述的副次評価項目 64.2% 95% CI, 6.19–89.2 4,991例中5例 対 10,031例中28例 |
記述的副次評価項目 43.3% 95% CI, -45.3-81.3 4,988例中6例 対 10,031例中21例 |
記述的副次評価項目 67.4% - シーズンを共変量とする*** 95% CI, 42.4-82.7 12,468例中15例 対 12,498例中75例 72.3% - シーズンを共変量としない(事後解析) 95% CI, 51.3 – 85.2 12,468例中15例 対 12,498例中75例 |
1つ以上の注目すべき併存疾患が認められる参加者でのRSウイルス感染による下気道疾患 (RSV-LRTD) |
記述的副次評価項目 94.6% 95% CI, 65.9–99.9 4,937例中1例 対 4,861例中18例 |
記述的副次評価項目 51.5% 95% CI, 7.4 – 76.6 1,981例中12例 対 3,895例中48例 |
記述的副次評価項目 57.8% 95% CI, 8.0-83.0 2,000例中8例 対 3,924例中37例 |
記述的副次評価項目 64.7% - シーズンを共変量とする*** 95% CI, 45.1-78.1 25 of 5,014例中25例 対 4,951例中116例 71.1% - シーズンを共変量としない(事後解析) 95% CI, 55.2 – 82.0 5,014例中25例 対 4,951例中116例 |
* 絶対数(解析対象例数中の発症例数)をワクチン接種群対プラセボ群で示す
** ワクチンの有効性は、年齢、地域、シーズン(流行期)で調整したポアソンモデルを用いて推定
*** シーズン性の共変量とは、異なるシーズン間の疾患発現率のばらつきを反映するために調整したデータのこと
安全性および反応原性データは、第III相臨床試験プログラムで当初得られた結果と一致していました。シーズン1では、ワクチンの忍容性は概して良好でした。最も高頻度に認められた有害事象は、ワクチン接種後4日以内の注射部位疼痛、疲労、筋肉痛、頭痛、関節痛でした。
これらの新しいデータは、CHEST 2024の年次総会での発表に加えて、科学的査読付きのジャーナルに投稿し、審査のために規制当局に提出する予定です。
AReSVi-006試験について
本試験は、60歳以上の成人を対象にGSKアジュバント添加高年齢成人用RSウイルスワクチンの単回接種の有効性を3年間にわたり検証し、その後の年1回追加接種後の有効性を、それぞれプラセボ群と比較する、ランダム化、プラセボ対照、観察者盲検、国際共同、第III相試験です。これまでに17カ国から約25,000例が登録されました。本試験の主要評価項目は、1回目のRSウイルス流行期シーズン後のRSウイルスによる下気道疾患(RSV-LRTD)に対するワクチンの有効性でした。結果は、2023年2月に「New England Journal of Medicine」に発表されました5。
1回目のRSウイルス流行期シーズン後、RSウイルスワクチン群の12,469例の被験者をさらにRSウイルスワクチン群またはプラセボ群のいずれかにランダムに割り付け、RSウイルスによる下気道疾患の発現について追跡調査しました。2回目および3回目のRSウイルス流行期シーズン終了時点でプラセボと比較したRSウイルスによる下気道疾患に対するワクチン単回接種のワクチンの有効性と、年1回の追加接種後にプラセボと比較したワクチンの有効性を、検証的副次評価項目としました。
GSKのRSウイルスワクチン「アレックスビー(Arexvy)」について
アレックスビーは、アジュバント添加RSウイルスワクチンであり、膜融合前型で安定化した遺伝子組換えRSウイルスF糖タンパク質(RSVPreF3)抗原を含有しています。この抗原には、GSK独自のAS01Eアジュバントを組み合わせています。
アレックスビーは、60歳以上を対象にRSウイルスによる下気道疾患の予防を適応として米国FDAにより世界で初めて承認されました(2023年5月)。現在、日本(RSウイルスによる感染症の予防)やヨーロッパを含む50カ国で、60歳以上を対象にRSウイルスによる下気道疾患の予防を効能または効果として承認されています。さらに、米国とEUでは、RSウイルスによる感染症のリスクが高い50~59歳を対象に、下気道疾患の予防を適応として承認されています。日本を含む他の国々でも規制当局による審査が進行中です。承認地域以外の商標名は各国の規制当局の承認に基づき決定されます。
本ワクチンは公式の推奨事項に従って使用されます。他のワクチンと同様に、すべてのワクチン接種者で防御免疫応答が誘導されるわけではありません。
GSKが所有するAS01アジュバントシステムには、Agenus社の完全子会社であるAntigenics社よりライセンス供与されたQS-21 STIMULONアジュバントが含まれています。
GSK(グラクソ・スミスクライン)について
GSKは、サイエンス、テクノロジー、人財を結集し、力を合わせて病に先手を打つことを存在意義とするバイオ医薬品のグローバルリーダーです。詳細情報はhttps://jp.gsk.comをご参照ください。
1 Clinicaltrials.gov, “Efficacy Study of GSK's Investigational Respiratory Syncytial Virus (RSV) Vaccine in Adults Aged 60 Years and Above”. Available at: https://clinicaltrials.gov/study/NCT04886596 - last accessed: September 2024.
2 National Institute of Allergy and Infectious Diseases, Respiratory Syncytial Virus (RSV). Available at: https://www.niaid.nih.gov/diseases-conditions/respiratory-syncytial-virus-rsv – last accessed: September 2024.
3 Centers for Disease Control and Prevention (CDC), RSV in Older Adults, 2024. Available at: https://www.cdc.gov/rsv/older-adults/index.html - Last accessed: September 2024.
4 Savic M, et al., “Respiratory syncytial virus disease burden in adults aged 60 years and older in high-income countries: a systematic literature review and meta-analysis”, in Influenza Other Respir Viruses, 2023, 17(1):e13031, DOI: 10.1111/irv.13031.
5 Papi A. et al, “Respiratory Syncytial Virus Prefusion F Protein Vaccine in Older Adults”, in New England Journal of Medicine, 2023;388:595-608 DOI: 10.1056/NEJMoa2209604.