GSK、60歳以上を対象としたRSウイルスワクチン「アレックスビー筋注用」の製造販売承認を取得

  • 国内初のRSウイルスによる感染症を予防する60歳以上の成人向けワクチンが誕生

  • 日本では毎年60歳以上の成人でRSウイルス感染症によって63,000人の入院と4,500人の院内死亡が推定される

  • 主要な第III相臨床試験から得られた有効性データなどに基づき承認を取得

グラクソ・スミスクライン株式会社(本社:東京都港区、代表取締役社長:ポール・リレット、以下 GSK)は、本日、60歳以上の成人を対象とするRSウイルスによる感染症の予防を目的とした組換えRSウイルスワクチン「アレックスビー筋注用」(以下、アレックスビー)について、製造販売承認を取得したことをお知らせします。アレックスビーは、60歳以上の成人を対象とするRSウイルスワクチンとして日本で初めて承認されました。

東邦大学 医学部 微生物・感染症学講座 舘田一博 教授は次のように述べています。
「RSウイルス感染症を含む下気道感染症は、世界における死亡原因の第4位であることがWHOより報告されています1。RSウイルスは、小児のみならず成人における呼吸器感染症の一般的かつ重大な原因であり、飛沫感染や接触感染により感染します。RSウイルス感染による入院の大半は高年齢成人で、基礎疾患がある場合は重症化するリスクがさらに高まります。」

GSKのチーフ・サイエンティフィック・オフィサーのトニー・ウッド(Tony Wood)は次のように述べています。
「GSKは感染症から人々を守るため、ワクチンの製品群を拡充してまいりました。米国、欧州、英国、カナダに続き、本日、日本でもアレックスビーが承認され、対象となる日本の皆様に初めてRSウイルスワクチン、アレックスビーをお届けできるようになることを嬉しく思います。」

GSK代表取締役社長のポール・リレットは次のように述べています。
「このたびのRSウイルスワクチンの承認は、現在でも特定の治療法のない主要な感染性の病原体のひとつであるRSウイルスから、日本の高年齢成人を守るための重要な一歩です。そして、特に高齢化が加速する日本において、120年にわたるワクチン開発の歴史を持つGSKの呼吸器領域のリーダーとしての役割を果たすものです。引き続き、規制当局や医療従事者をはじめ関係者の皆様と協力しながら、できるだけ速やかにアレックスビーをお届けできるよう尽力してまいります。」

このたびの承認は、GSKの主要な第III相臨床試験であるAReSVi-006(Adult Respiratory Syncytial Virus)試験から得られたデータ(New England Journal of Medicine)に基づいています。本試験では、特定の基礎疾患を有する患者さんを含め、RSウイルスによる下気道疾患に対して全般的に高いワクチン効果が認められました。

本試験では60歳以上の成人におけるRSウイルスによる下気道疾患(RSV-LRTD)に対する本ワクチンの統計学的に有意かつ臨床的に重要な全般的有効性[82.6%(96.95% CI:57.9-94.1、12,466例中7例対12,494例中40例)]が示され、主要評価項目が達成されました。また、特定の心肺系および内分泌代謝系の疾患など、注目すべき併存疾患を有する60歳以上の成人での有効性は94.6%(95% CI:65.9-99.9、4,937例中1例対4,861例中18例)でした2。アレックスビーは、概ね良好な安全性プロファイルを示しました。最も多く認められた特定有害事象は、注射部位疼痛、疲労、筋肉痛、頭痛、関節痛でした。これらは概ね軽度から中等度であり、一過性でした。

「アレックスビー」(組換えRSウイルスワクチン)について
アレックスビーは、アジュバント添加RSウイルスワクチンであり、膜融合前型で安定化された遺伝子組換えRSウイルスF糖タンパク質(RSVPreF3)抗原を含有しています。この抗原には、GSK独自のAS01Eアジュバントを組み合わせています。60歳以上の成人を対象にRSウイルスによる感染症の予防を効能または効果として、2023年9月25日に承認を取得しました。

基礎疾患を有する集団を含む50~59歳の成人を対象としたRSウイルスワクチンの臨床試験の募集が完了しています。試験結果は、第III相有効性試験であるAReSVi-006試験および免疫原性試験であるAReSVi-004試験の追加結果とともに、2023年に得られる予定です。これらの試験では、年1回の再接種スケジュールと、RSウイルスワクチンの単回接種後の複数シーズンにわたる予防効果・免疫原性を継続して評価します。

アレックスビー(Arexvy)は米国(FDA)で、60歳以上の成人のRSウイルスワクチンとして2023年5月、世界で初めて承認されました。同年、欧州(欧州委員会)、英国、カナダでも承認されています。GSKが所有するAS01アジュバントシステムには、Agenus社の完全子会社であるAntigenics社よりライセンス供与されたQS-21 Stimulonアジュバントが含まれています。

AReSVi-006試験について
AReSVi-006(Adult Respiratory Syncytial Virus)試験は、60歳以上の成人を対象にGSKのアジュバント添加RSVPreF3ワクチンの単回接種の有効性を検証する、ランダム化、プラセボ対照、観察者盲検、多国間第III相試験です。日本を含む17カ国から約25,000例(うち、日本人約1,000例)が登録されました。最初の結果は2023年2月にNew England Journal of Medicine日本語訳プレスリリース)に発表されました。

RSウイルス(呼吸器合胞体ウイルス)について
RSウイルスは、肺および呼吸器に影響を及ぼす一般的な感染性ウイルスです。高年齢成人では、加齢に伴う免疫機能低下などのため重症化リスクが高く、基礎疾患のある高年齢成人ではより重症化するリスクが高くなるといわれています。RSウイルスにより、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、喘息、慢性心不全などの病態が悪化し、肺炎、入院、死亡などの重篤な転帰につながる可能性があります。呼吸器感染症のひとつで、日本で5番目に多い死因は肺炎であり3、RSウイルス感染症で入院した患者さんのうち、約半数が肺炎を罹患したことが米国のデータで示されています4。RSウイルス感染症による60歳以上の成人での入院と院内死亡は、先進国では毎年47万人以上の入院と約33,000人の院内死亡、日本では約63,000人の入院と約4,500人の院内死亡が推定されます5

グラクソ・スミスクライン(GSK)について
GSKは、サイエンス、テクノロジー、人財を結集し、力を合わせて病に先手を打つことを存在意義とするバイオ医薬品のグローバルリーダーです。GSKは、免疫学、遺伝学、先端テクノロジーを駆使し、感染症、免疫・呼吸器疾患、オンコロジーをはじめとする疾患領域の研究開発に注力しています。そして、ワクチン、スペシャリティ医薬品、ジェネラル医薬品を通じて、病気の予防と治療に貢献します。詳細情報はhttps://jp.gsk.comをご参照ください。

 


1 WHO,“The top 10 causes of death” December 2020.
2 The New England Journal of Medicine, Respiratory Syncytial Virus Prefusion F Protein Vaccine in Older Adults https://www.nejm.org/doi/10.1056/NEJMoa2209604
3 MHLW, Handbook of Health and Welfare Statistics 2022.
4 Ackerson et al., Clin Infect Dis. 2019.
5 Savic M et al., “Respiratory syncytial virus disease burden in adults aged 60 years and older in high-income countries: A systematic literature review and meta-analysis”, in Influenza Other Respir Viruses 2023;17(1):e13031. doi.org/10.1111/irv.13031.