GSK、RSウイルスワクチン「アレックスビー」と帯状疱疹予防ワクチン「シングリックス」の同時接種における良好な速報データを発表

  • 主要評価項目である両ワクチンを同時接種した場合の免疫応答は単独接種と比較して非劣性

  • RSウイルスワクチンと帯状疱疹ワクチンとの同時接種の反応原性と安全性プロファイルは許容範囲内

  • 成人ワクチンの同時接種に関する科学的理解を深める新たなデータ

グラクソ・スミスクライン株式会社(本社:東京都港区、代表取締役社長:ポール・リレット、以下GSK)は、RSウイルスワクチン「アレックスビー(遺伝子組換えRSウイルスワクチン)」と、帯状疱疹予防ワクチン「シングリックス(遺伝子組換え帯状疱疹ワクチン)」を50歳以上の成人を対象に同時接種した場合の反応原性と安全性を評価する第III相試験(NCT05966090)1,2について、良好な速報データが発表されたことをお知らせします。本データは、スペインのバレンシアで開催された欧州老年医学会(European Geriatric Medicine Society:EuGMS、2024年9月18日~20日)のレイトブレイキングセッションで発表されました2

RSウイルスワクチン「アレックスビー」は、日本(RSウイルスによる感染症の予防)、米国、欧州、英国を含む50カ国で、60歳以上を対象にRSウイルスによる下気道疾患の予防を効能または効果として承認されています。加えて、米国や欧州連合加盟国/欧州経済領域を含む数カ国では、RSウイルスによる感染症のリスクが高い50~59歳を対象に、下気道疾患の予防を適応として承認されています。また、「シングリックス」は、50歳以上を対象に帯状疱疹の予防を適応症として承認されています。

本データでは、両ワクチンを同時接種した場合、単独接種と比較して免疫応答の非劣性が示されました2。同時接種の反応原性と安全性プロファイルは許容範囲内でした2。両群で最も多く報告された有害事象は、注射部位の疼痛、疲労、筋肉痛で、発現期間は両群で同程度でした2

GSK代表取締役社長のポール・リレットは次のように述べています。
「RSウイルスワクチンと帯状疱疹ワクチンの同時接種に関するデータを共有できることを嬉しく思います。成人のワクチン接種は、個人にも地域社会にも利益をもたらしますが、成人のワクチン接種率は十分とはいえない状況です。同時接種の忍容性を示したこれらのデータは、成人ワクチンの接種に関する科学的理解を深め、成人のワクチン接種における障壁を取り除くことに寄与し得る前向きな一歩です。」

本試験の結果は、査読付き論文として提出され、米国食品医薬品局(FDA)、欧州医薬品庁(EMA)、その他の規制当局への承認申請に使用される予定です。

NCT05966090試験について
本試験は、50歳以上の成人を対象に、GSKのRSウイルスワクチン「アレックスビー」と帯状疱疹予防ワクチン「シングリックス」の単独接種と比較して、同時接種における免疫応答の非劣性を評価する第III相非盲検多国間試験です2

被験者530人を、初回来院時に帯状疱疹ワクチン初回接種とGSKのRSウイルスワクチンを同時接種する群(同時接種群)と、初回来院時に帯状疱疹ワクチンの初回接種のみを行う群(コントロール群)に1対1で無作為に割り付けました。対照群には31日目にGSKのRSウイルスワクチンが接種されました1,2。主要評価項目は、GSKのRSウイルスワクチンと帯状疱疹ワクチンを同時接種した場合の、別々の来院時に接種した場合に対する液性免疫応答の非劣性でした1,2。主な副次的評価項目は、GSKのRSウイルスワクチンと帯状疱疹ワクチンを別々に接種した場合と比較した、同時接種の反応原性および安全性でした1,2

抗gE抗体濃度、RSV-AおよびRSV-B中和抗体価は、両ワクチン接種後に上昇し、GSKのRSウイルスワクチンおよび帯状疱疹ワクチンに対する液性免疫応答の主要評価項目における非劣性基準を満たしました2。最も多く報告された有害事象は、両群とも、注射部位の疼痛、疲労、筋肉痛でした2

RSウイルスワクチン「アレックスビー(Arexvy)」について
アレックスビー(Arexvy)は、アジュバント添加、遺伝子組換えRSウイルスワクチンで、膜融合前型で安定化した遺伝子組換えRSウイルスF糖タンパク質(RSVPreF3)抗原を含有しています。この抗原には、GSK独自のAS01Eアジュバントを組み合わせています。

アレックスビー(Arexvy)は、日本(RSウイルスによる感染症の予防)、米国、欧州、英国を含む50カ国で、60歳以上を対象にRSウイルスによる下気道疾患の予防を効能または効果として承認されています。その他の国々でも規制当局による審査が進行中です。承認地域以外の商標名は各国の規制当局の承認に基づき決定されます。また、米国欧州連合加盟国/欧州経済領域を含む数カ国では、RSウイルスによる感染症のリスクが高い50~59歳を対象に、下気道疾患の予防を適応として承認されており、日本では現在申請中です。

GSKが所有するAS01アジュバントシステムには、Agenus社の完全子会社であるAntigenics社よりライセンス供与されたQS-21 STIMULONアジュバントが含まれています。

成人におけるRSウイルス(呼吸器合胞体ウイルス)について
RSウイルスは、肺などの呼吸器に影響を及ぼす一般的な感染性ウイルスです。特に、高齢者、慢性の基礎疾患(喘息、COPD、心疾患など)のある方、免疫機能が低下している方は、RSウイルス感染症の重症化リスクが高くなり、肺炎、入院、死亡などの重篤な転帰につながる可能性があります3,4,5,6。また、RSウイルス感染症は、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、心疾患などの基礎疾患の増悪の原因となることもあります3,7。先進国の60歳以上の成人において、RSウイルスは、毎年47万人以上の入院と約33,000人の院内死亡原因、日本では約63,000人の入院と約4,500人の院内死亡原因であると推定されます8

帯状疱疹予防ワクチン「シングリックス(Shingrix)」について
シングリックス(遺伝子組換え帯状疱疹ワクチン)は、生ワクチンではない遺伝子組換えサブユニットワクチンで、50歳以上の成人の帯状疱疹の予防を適応としています。シングリックスは、抗原である糖タンパクE(gE)およびAS01Bというアジュバントシステムを組み合わせたものであり、帯状疱疹の発症リスクである加齢に伴う自然な免疫低下に寄与する可能性があります9,10。なお、水痘の一次感染(水ぼうそう)の予防効能は有していません。

日本において、シングリックスは50歳以上を対象として(2018年3月23日)、および、帯状疱疹の発症リスクが高いと考えられる18歳以上を対象として(2023年6月26日)承認を取得しました。

帯状疱疹について
帯状疱疹は、子供の頃などに感染した水ぼうそうと同じウイルス「水痘・帯状疱疹ウイルス」が、体の中で再活性化することで発症する皮膚の病気です。日本人成人の90%以上は、帯状疱疹の原因となるウイルスがすでに体内に潜んでいる可能性があり、50歳を過ぎると帯状疱疹の発症が増え始め、80歳までに約3人に1人が帯状疱疹を発症するといわれています11

帯状疱疹の症状には、通常、胸部、腹部または顔面などに痛みを伴う水疱やかゆみを伴う発疹が現れ、しばしば灼熱感、発赤、または刺すような痛みを伴うこともあります。さらに、発疹が消えた後、帯状疱疹後神経痛(PHN)という痛みが3カ月間以上続くことがあります。PHNは、帯状疱疹の最も一般的な合併症です12

また、高血圧・糖尿病・リウマチ・腎不全といった基礎疾患がある方は、帯状疱疹の発症リスクが高くなるという報告もあります。例えば、帯状疱疹の発症に関連があると報告された17疾患のある患者さんを対象にした調査(*)では、高血圧の患者さんは、帯状疱疹を発症するリスクが約1.9倍、糖尿病は約2.4倍などというデータが報告されています13

(*)2001~2007年に日本の単一施設での電子カルテの記録から、帯状疱疹の発症に関連があると報告された17疾患(脳腫瘍、肺がん、乳がん、食道がん、胃がん、大腸がん、婦人科がん、悪性リンパ腫、全身性エリテマトーデス、関節リウマチ、シェーグレン症候群、糖尿病、高血圧、腎不全、椎間板ヘルニア、白内障、うつ病)の患者さん(帯状疱疹発症769例および帯状疱疹非発症54,723例)を対象に、それぞれの疾患がある場合の帯状疱疹の発症のリスクをその疾患がない方と比較した。例えば、「高血圧がない」とは、17疾患のうち高血圧の疾患はなかったが、いずれかの疾患があった方を指す。

グラクソ・スミスクライン(GSK)について
GSKは、サイエンス、テクノロジー、人財を結集し、力を合わせて病に先手を打つことを存在意義とするバイオ医薬品のグローバルリーダーです。GSKは、免疫学、遺伝学、先端テクノロジーを駆使し、感染症、免疫・呼吸器疾患、オンコロジーをはじめとする疾患領域の研究開発に注力しています。そして、ワクチン、スペシャリティ医薬品、ジェネラル医薬品を通じて、病気の予防と治療に貢献します。詳細情報はhttps://jp.gsk.comをご参照ください。

 


1. Clinicaltrials.gov, “A Study on Safety and Immune Response of Investigational RSV OA Vaccine in Combination With Herpes Zoster Vaccine in Healthy Adults (RSV-OA=ADJ-020)”, NCT05966090 – available at: https://clinicaltrials.gov/study/NCT05966090 - Accessed in September 2024.
2. Dennis P, et al. Co-administration of the adjuvanted respiratory syncytial virus (RSV) prefusion F protein vaccine (RSVPreF3 OA) with the adjuvanted recombinant zoster vaccine (RZV) in adults ≥50 years of age. Abstract presented at European Geriatric Medicine Society (EuGMS); 18–20 September 2024, Valencia, Spain.
3. Centers for Disease Control and Prevention (CDC), RSV in Older Adults and Adults with Chronic Medical Conditions, 2023.
4. Belongia EA et al: Open Forum Infect Dis 2018; 5(12), ofy316.
5. Branche AR et al. Incidence of Respiratory Syncytial Virus Infection Among Hospitalized Adults, 2017-2020, Clin Infect Dis 2022;74: 1004–1011.
6. Wyffels V et al: Adv Ther 2020; 37(3),1203-1217.
7. Ivey KS et al: J Am Coll Cardiol 2018; 71(14), 1574-1583.
8. Savic M, Penders Y, Shi T, Branche A, Pirçon JY. Respiratory syncytial virus disease burden in adults aged 60 years and older in high-income countries: A systematic literature review and meta-analysis. Influenza Other Respir Viruses. 2023;17(1):e13031. doi:10.1111/irv.1303.
9. Cunningham, AL, et al. Efficacy of the Herpes Zoster Subunit Vaccine in Adults 70 Years of Age or Older. New England Journal of Medicine. 2016;375(11):1019-32.
10. The GSK proprietary AS01 adjuvant system contains QS-21 Stimulon® adjuvant licensed from Antigenics LLC, a wholly owned subsidiary of Agenus Inc. (NASDAQ: AGEN), MPL and liposomes.
11. Shiraki K. et al.: Open Forum Infect Dis. 4(1), ofx007, 2017.
12. Hata A. et al.: Infection. 39(6), 537-544, 2011.
13. Dworkin RH, et al. Diagnosis and assessment of pain associated with herpes zoster and postherpetic neuralgia. J Pain 2008;9:S37–44.