RSウイルスを含む呼吸器ウイルスの有病率や予後への影響を評価する医師主導の観察研究「EVERY study」の成果が「Journal of Infection and Chemotherapy」に掲載
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RSウイルス感染症に関する日本の成人患者さんでの新たなエビデンスを創出
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RSウイルスをはじめとする感染症が治療経過やアウトカムに与える影響を明らかにする
グラクソ・スミスクライン株式会社(本社:東京都港区、代表取締役社長:ポール・リレット、以下GSK)は、特定非営利活動法人臨床評価研究所(所在地:京都府中京区、代表:粉川洋幸)が実施する、救急入院した呼吸器症状を有する50歳以上の患者さんを対象としたRSウイルスを含む呼吸器ウイルスの有病率や予後への影響を評価する観察研究「EVERY study(The Effect of respiratory Virus infection on EmeRgencY admission study)」の成果が「Journal of Infection and Chemotherapy」に掲載されたことをお知らせします。今回の発表は、研究開始後、初めての集計結果となります。
EVERY studyは、急性呼吸器症状を呈して救急外来から入院した50歳以上の患者さんでの、RSウイルスを主とした呼吸器ウイルスの有病率、危険因子、入院経過への影響を評価することを目的とした医師主導の多施設前向き観察研究です。
高齢者、慢性の基礎疾患(喘息、COPD、心疾患など)のある方、免疫機能が低下している方は、RSウイルス感染症の重症化リスクが高くなり、肺炎、入院、死亡などの重篤な転帰につながる可能性があります1,2,3,4。呼吸器疾患やその他の急性疾患が原因で救急入院した患者さんの多くでは、呼吸器ウイルス感染症がその誘因となっている可能性がありますが5,6、呼吸器疾患やその他の疾患の急性増悪と呼吸器ウイルス感染症との関連について、日本ではこれまで十分に検討されていませんでした。
EVERY studyは、対象となる患者さんの背景や家族構成、家族の症状、日常生活などの危険因子についても詳しく評価します。RSウイルスなどの感染症が治療経過やアウトカムに与える影響を明らかにすることで、救急入院した患者さんの適切な管理に役立てることを目指します。
本論文の責任著者で、兵庫医科大学 臨床疫学 主任教授の森本剛先生は次のように述べています。
「日本において、呼吸器感染症やその他の基礎疾患を有する成人の患者さんにおけるRSウイルスの有病率やその影響を評価したエビデンスは不十分でした。RSウイルスや他の呼吸器ウイルスに感染した患者さんと非感染患者さんの間には、院内死亡率や入院期間、基礎疾患の進行などの経過に違いが生じる可能性があります。本研究が成人のRSウイルス感染症に関する知見を深め、日本における公衆衛生のさらなる向上に貢献することを期待しています。」
GSK代表取締役社長のポール・リレットは次のように述べています。
「RSウイルスは呼吸器に影響を及ぼす感染症であり、特に高齢者や基礎疾患を持つ方々にとっては重篤なリスクを伴います。現在、成人のRSウイルス感染症の治療については対症療法のみで、日本における高齢の成人のRSウイルスに関する疫学データは限られています。今後、本研究がさらに進むことで、RSウイルスを含む呼吸器ウイルス感染症が及ぼす影響について新たな知見が得られることを願っています。」
EVERY studyの詳細は、Journal of Infection and Chemotherapyをご覧ください。
EVERY studyについて
EVERY study(Effect of respiratory Virus infection on EmeRgencY admission Study)は、救急入院患者さんにおける呼吸器ウイルスの有無および入院後の経過に関するカルテ情報を元にした多施設前向き観察研究です。研究参加施設において、救急入院した患者さんのうち、適格基準を満たした50歳以上の患者さんを対象としています。3,000例を目標症例とし、研究終了日は2025年3月31日です。本研究は、医師主導で実施され、GSKは研究事務局および研究企画責任者との契約に基づき、研究に係る費用を負担しています。(ClinicalTrials.gov 登録No.:NCT05913700)EVERY studyの詳細は、Journal of Infection and Chemotherapy(https://www.jiac-j.com/article/S1341-321X(24)00183-1/abstract)をご参照ください。
RSウイルス(呼吸器合胞体ウイルス)について
RSウイルスは、肺などの呼吸器に影響を及ぼす一般的な感染性ウイルスです。特に、高齢者、慢性の基礎疾患(喘息、COPD、心疾患など)のある方、免疫機能が低下している方は、RSウイルス感染症の重症化リスクが高くなり、肺炎、入院、死亡などの重篤な転帰につながる可能性があります1,2,3,4。また、RSウイルス感染症は、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、心疾患などの基礎疾患の増悪の原因となることもあります1,7。先進国の60歳以上の成人において、RSウイルスは、毎年47万人以上の入院と約33,000人の院内死亡原因、日本では約63,000人の入院と約4,500人の院内死亡原因であると推定されます8。
GSKのRSウイルス感染症への取り組みについて
GSKの「アレックスビー筋注用」は、60歳以上を対象にRSウイルスによる感染症の予防を効能又は効果として、2023年9月に日本で初めて製造販売承認を取得し、2024年1月に販売開始しました。現在、RSウイルスによる感染症に罹患するリスクが高い50~59歳の成人への接種対象者拡大について、日本で承認申請中です。
RSウイルスワクチンは、厚生労働省より開発優先度の高いワクチンとして2013年に指定され、開発要請が出されました9。2022年には、RSウイルス感染症は、厚生科学審議会ワクチン分科会研究開発および生産・流通部会により、ワクチン戦略における「重点感染症」のひとつに選定されました。
RSウイルスに関する情報ウェブサイト「RSウイルス.jp」について
GSKでは、RSウイルス感染症に関する理解を深めていただくために、一般の方々向けの疾患情報ウェブサイト「RSウイルス.jp」を開設しており、疾患の症状、治療や予防などの情報を提供しています。RSウイルス感染症に関する詳しい情報は、「RSウイルス.jp」と検索、あるいは、URL(https://rsvirus.jp/)やこちらの二次元バーコードからアクセスし、ご覧ください。
グラクソ・スミスクライン(GSK)について
GSKは、サイエンス、テクノロジー、人財を結集し、力を合わせて病に先手を打つことを存在意義とするバイオ医薬品のグローバルリーダーです。GSKは、免疫学、遺伝学、先端テクノロジーを駆使し、感染症、免疫・呼吸器疾患、オンコロジーをはじめとする疾患領域の研究開発に注力しています。そして、ワクチン、スペシャリティ医薬品、ジェネラル医薬品を通じて、病気の予防と治療に貢献します。詳細情報はhttps://jp.gsk.comをご参照ください。
1 Centers for Disease Control and Prevention (CDC), RSV in Older Adults and Adults with Chronic Medical Conditions, 2023.
2 Belongia EA et al: Open Forum Infect Dis 2018; 5(12), ofy316.
3 Branche AR et al. Incidence of Respiratory Syncytial Virus Infection Among Hospitalized Adults, 2017-2020, Clin Infect Dis 2022;74: 1004–1011.
4 Wyffels V et al: Adv Ther 2020; 37(3),1203-1217.
5 Shimizu K, Yoshii Y, Morozumi M, et al. Pathogens in COPD exacerbations identified by comprehensive real-time PCR plus older methods. Int J Chron Obstruct Pulmon Dis 2015;10:2009–16.
6 Kan-O K, Washio Y, Fujimoto T, et al. Differences in the spectrum of respiratory viruses and detection of human Rhinovirus C in exacerbations of adult asthma and chronic obstructive pulmonary disease. Respir Investig 2022;60:129–36.
7 Ivey KS et al: J Am Coll Cardiol 2018; 71(14), 1574-1583.
8 Savic M, Penders Y, Shi T, Branche A, Pirçon J-Y. Respiratory syncytial virus disease burden in adults aged 60 years and older in high-income countries: a systematic literature review and meta-analysis, Influenza Other Respir Viruses 2022 2023; 17:e13031.
9 厚生労働省, 健感発1216第1号 平成25年12月16日 開発優先度の高いワクチンの研究開発(開発要請).