GSK、RSウイルスワクチン「アレックスビー筋注用」のRSウイルスによる感染症に罹患するリスクが高い50~59歳の成人への接種対象者拡大について日本で承認申請
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RSウイルスによる感染症に罹患するリスクが高い50~59歳を対象とする第III相臨床試験の良好な結果に基づき申請
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特定の基礎疾患を有する50歳以上の成人ではRSウイルスによる感染症の罹患リスクが高まる
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GSKはこの年齢層でのRSウイルスワクチンの承認申請を行う最初の企業
グラクソ・スミスクライン株式会社(本社:東京都港区、代表取締役社長:ポール・リレット、以下 GSK)は、本日、RSウイルスによる感染症の予防を目的とした「アレックスビー筋注用」(以下、アレックスビー)について、厚生労働省にRSウイルスによる感染症に罹患するリスクが高いと考えられる50~59歳の成人への適応拡大の承認申請をしたことをお知らせします。
本申請は、RSウイルスによる感染症に罹患するリスクが高いと考えられる50~59歳を対象とするアレックスビーの免疫応答と安全性を評価する第III相臨床試験(NCT05590403)の良好な結果に基づいています。アレックスビーは、60歳以上を対象とするRSウイルス感染症予防ワクチンとして今年9月に製造販売承認を取得しており、このたびの承認申請は接種対象者を拡大するものです。
成人のRSウイルスの疾病負担は、疾患認知度の低さや検査実施率、サーベイランス研究での検出不足により過小評価される可能性がありますが1、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、喘息、慢性心不全2、糖尿病3などの基礎疾患を有する患者さんはRSウイルスの感染症に対するリスクが高く、肺炎、入院、または死亡につながる可能性もあります4。呼吸器系ウイルスの有病率に関する国際的なシステマティックレビューでは、COPDの急性増悪患者さんの10例中1例でRSウイルスが検出されました5。
GSK代表取締役社長のポール・リレットは次のように述べています。
「このたびの申請は、現在でも特定の治療法のない主要な感染性の病原体のひとつであるRSウイルスから、この年齢層の対象となる皆様を守るための重要な一歩となります。」
GSKは、RSウイルスによる感染症に罹患するリスクが高いと考えられる50歳~59歳においてRSウイルスワクチンの接種対象者拡大の承認申請を行う最初の企業です。米国とEUにおける申請状況については2024年早期に発表予定です。
「アレックスビー(Arexvy)」(組換えRSウイルスワクチン)について
アレックスビーは、アジュバント添加RSウイルスワクチンであり、膜融合前型で安定化された遺伝子組換えRSウイルスF糖タンパク質(RSVPreF3)抗原を含有しています。この抗原には、GSK独自のAS01Eアジュバントを組み合わせています。
日本では、60歳以上を対象にRSウイルスによる感染症の予防を効能または効果として、2023年9月25日、本邦初となる承認を取得しました。また、米国(FDA)では、2023年5月に世界で初めて承認され、同年、欧州(欧州委員会)、英国、カナダでも承認されています。その他の国々でも規制当局による審査が進行中です。承認地域以外の商標名は各国の規制当局の承認に基づき決定されます。
GSKが所有するAS01アジュバントシステムには、Agenus社の完全子会社であるAntigenics社よりライセンス供与されたQS-21 STIMULONアジュバントが含まれています。STIMULONはAgenus社の子会社であるSaponiQx社の商標です。
試験デザインについて
NCT05590403は、RSウイルスによる下気道疾患のリスクが高い50~59歳を対象に、GSKのRSウイルスワクチンを単回接種したときの免疫応答の非劣性を60歳以上と比較して評価し、また安全性についても比較検討する第III相、プラセボ対照、観察者盲検、ランダム化、国際共同、免疫原性試験です。RSウイルスによる感染症の罹患リスク増加の原因となる疾患としてあらかじめ特定した慢性疾患(慢性肺疾患、慢性心血管疾患、糖尿病、慢性腎臓病、慢性肝疾患)を有し、病状が安定している50~59歳の成人570例で免疫応答を評価しました。あらかじめ特定した上記の慢性疾患を有さない50~59歳の成人を含めた570例における免疫応答についても、60歳以上と比較して評価しました。
本試験の主要評価項目として、ワクチン接種後1ヵ月の時点におけるRSV-A型およびRSV-B型に対する中和抗体価を50~59歳を含む両群で、60歳以上と比較しました。安全性および免疫原性に関する副次的評価項目および三次評価項目も設定しました。
本試験の結果は、今後開催される医学学会で発表され、査読付き学術誌に提出される予定です。本データは、米国疾病予防管理センター(CDC)の予防接種実施諮問委員会(ACIP)で2023年10月25日に発表されました。添付文書の適応拡大の可能性を裏付けるものとして、米国食品医薬品局(FDA)およびその他の規制当局にも提出されます。
RSウイルス(呼吸器合胞体ウイルス)について
RSウイルスは、肺および呼吸器に影響を及ぼす一般的な感染性ウイルスです6。高齢の成人では、加齢に伴う免疫機能低下などのためRSウイルスに感染するリスクが高くなります。RSウイルスにより、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、喘息、慢性心不全などの病態が悪化し、肺炎、入院、死亡などの重篤な転帰につながる可能性があります4。基礎疾患のある高齢の成人ではより重症化するリスクが高くなるといわれています7。
60歳以上の成人において、先進国では毎年RSウイルス感染症によって47万人以上の入院と約33,000人の院内死亡、日本では約63,000人の入院と約4,500人の院内死亡が推定されます1。
グラクソ・スミスクライン(GSK)について
GSKは、サイエンス、テクノロジー、人財を結集し、力を合わせて病に先手を打つことを存在意義とするバイオ医薬品のグローバルリーダーです。GSKは、免疫学、遺伝学、先端テクノロジーを駆使し、感染症、免疫・呼吸器疾患、オンコロジーをはじめとする疾患領域の研究開発に注力しています。そして、ワクチン、スペシャリティ医薬品、ジェネラル医薬品を通じて、病気の予防と治療に貢献します。詳細情報はhttps://jp.gsk.com/をご参照ください。
1 Savic M, Penders Y, Shi T, Branche A, Pirçon J-Y. Respiratory syncytial virus disease burden in adults aged 60 years and older in high-income countries: a systematic literature review and meta-analysis, Influenza Other Respir Viruses 2022 2023; 17:e13031.
2 Falsey, AR et al. Respiratory syncytial virus infection in elderly and high-risk adults, in New Engl J Med 2005; 352:1749-59.
3 Richard Osei-Yeboah et al, Respiratory syncytial virus-associated hospitalisation in adults with comorbidities in two European countries, PROMISE investigators, preprint, August 2023.
4 Centers for Disease Control and Prevention (CDC), RSV in Older Adults and Adults with Chronic Medical Conditions, 2023.
5 Zwaans WA et al., The relevance of respiratory viral infections in the exacerbations of chronic obstructive pulmonary disease—A systematic review, in J Clin Virol 2014;61:181–188.
6 National Foundation for Infectious Diseases. Respiratory Syncytial Virus. www.nfid.org/infectious-disease/rsv/
7 Branche AR et al. Incidence of Respiratory Syncytial Virus Infection Among Hospitalized Adults, 2017-2020, Clin Infect Dis 2022;74:1004–1011.