世界初のマラリアワクチン(RTS,S)、流行国の子どもを対象に価格を半額以下に引き下げ、5ドル未満に
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Bharat Biotech社は、プロセス改善、生産能力の拡大、製造コストの削減、利益率の抑制およびGSKとのパートナーシップにより価格引き下げを実現
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2026~2030年のGaviの増資プロセスに対する誓約の一環として、Bharat Biotech社とGSKが発表
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Gaviの支援のもと、2025年末までにアフリカの12の流行国でRTS,Sの定期予防接種プログラムを展開予定
この資料は、英国GSK plcが2025年6月25日に発表したプレスリリースの日本語抄訳であり、報道関係者各位の利便性のために提供するものです。この資料の正式言語は英語であり、その内容およびその解釈については英語が優先されます。詳細は https://www.gsk.comをご参照ください。
Bharat Biotech International社(BBIL)とGSK(本社:英国)は、Gaviワクチンアライアンス(Gavi)への取り組みとして、世界初のマラリアワクチンを継続的に提供することを発表しました。Bharat Biotech社は、GSKがPATHおよびその他のパートナーと開発したRTS,Sの価格を2028年までに段階的に半額以下に引き下げ、5ドル未満で提供します。プロセス改善、生産能力の拡大、製造コストの削減および利益率の抑制によってこの価格引き下げを進めます。今回の発表は、Gaviの次期増資期間(Gavi 6.0、2026~2030)に向けた両社の誓約の一環として行われました。
RTS,Sは、2021年に世界保健機関(World Health Organization、WHO)によって推奨された初のマラリアワクチンです。その後、GSKは生産能力の向上と効率化のために大規模な投資を行い、またBharat Biotech社への技術移転を進めてきました。同時に、Bharat Biotech社は2億ドル以上を投資し、大規模生産対応の新製造施設の建設、製品開発および技術移転を推進しています。こうした改善を行うことで、マラリアワクチンの価格を段階的に引き下げることが可能となりました。価格の引き下げは間もなく開始され、2028年には両社間の技術移転が完了し、価格引き下げが完全に実現される予定です。
Gaviの支援のもと、アフリカの12の流行国は、2025年末までに定期予防接種プログラムでRTS,Sを導入する予定です。これは、GSKがBharat Biotech社やPATHとともに、WHO、実施国、MedAccess、Gaviの協力を得て、命を救うマラリアの予防接種をアフリカの流行国の子どもたちへ届ける重要な取り組みを行った結果として実現しました。
Bharat Biotech International社の会長であるクリシュナ・エラ(Krishna Ella)博士は次のように述べています。
「Gavi 6.0に対する今回の誓約は、価格設定の発表以上の意味があり、地球規模の公平性、革新、そして協力へのコミットメントを意味します。この歴史的な発表を通じて、何百万人もの子どもたちと家族にとってマラリアが負担になっている現状を変えることを目指しています。私たちにとって、今回の発表は協力を超えた約束なのです。GSKと力を合わせ、GaviやWHOと緊密に協働することで、マラリアのリスクがある子どもたちの差し迫ったニーズに応えられるワクチン供給に向けた重要な一歩を踏み出します。Bharat Biotech社では、技術は安全性、手頃な価格、アクセスのしやすさという3つの重要な要件を満たすべきだと考えています。この協力によって、信念を現実の成果に変え、命を救うワクチンを最も必要としているコミュニティに届けることを目指しています」
GSKのチーフ・グローバルヘルス・オフィサーのトーマス・ブリューワー(Thomas Breuer)は次のように述べています。
「2021年に私たちはBharat Biotech社とともにマラリアを克服するための持続可能な解決策を見出すという共通の目標を掲げました。そして本日、私たちは世界初のマラリアワクチンの長期的な価格目標にGSKが貢献をしたことを発表いたします。この重要なマイルストーンは、Bharat Biotech社ならびにGaviのパートナーであるPATHおよびWHOの協力を通じて達成されました。マラリアを含む感染症のあり方を変え、アフリカ全体の子供たちと家族の生活に変化をもたらすという私たちのコミットメントを示しています。GSKのチームはBharat Biotech社と緊密に連携し、ワクチン製造技術の移転を進めるとともに、製造効率を大きく改善しました。その成果が、今回のGaviへの増資に対する誓約につながりました」
GSK、PATHおよびその提携企業が開発したマラリアワクチンの研究では、マラリア流行国における複数年にわたる調査を行い、複数の季節および感染率の高い地域で長年にわたりデータを収集しました。2019年から2023年にかけて、ガーナ、ケニア、マラウイで実施されたマラリアワクチン導入プログラム(Malaria Vaccine Implementation Programme、MVIP)の影響評価において、WHOは、RTS,Sワクチンを接種した200万人以上の小児(上記期間でワクチン接種に適格な年齢)において、全死因死亡率が13%低下し、重症マラリアによる入院が22%減少したことを報告しました1。また、感染率の高い地域において、マラリア予防薬の季節性投与を併用するという条件下で、WHOが推奨するマラリアワクチン2種類の季節性接種について検討したところ、マラリアの発症を約75%予防することが示されました2。
マラリアワクチンは、季節性マラリアの予防薬、マラリア治療薬、室内残留性散布(IRS)、蚊帳などの他の介入とともに、マラリアの「ツールボックス」を構成しています。マラリア対策としてWHOによって推奨されている介入はいずれもそれ単独で効果が十分なわけではありませんが、マラリアワクチンはマラリアに対する介入として影響力が大きいものに数えられます。こうした状況を進めるためにGSKでは、流行国の子どもたちを重度のマラリアからさらに守るための新しいワクチンの研究開発を開始しています。本研究は、マラリア原虫のライフサイクルの別の段階を標的とするもので、マラリア対策の「ツールボックス」を全体的に進化・拡充することで根絶の取り組みの一助となることを目的としています。
Gaviワクチンアライアンス事務局長(Chief Executive Officer、CEO)であるサニア・ニシュタール(Sania Nishtar)博士は次のように述べています。
「GSK社とBharat Biotech社がもたらした革新が、何百万人もの子どもたちと地域社会をマラリアから守ることにつながることを嬉しく思っています。パートナーの支援を得てGaviは、アフリカの20カ国、つまり世界中のマラリア疾病負荷の70%超を抱える国々を支援し、その子どもたち、地域社会、保健システムを守る手助けをしてきました。私たちの目標は、2030年末までにアフリカ全土でさらに5,000万人以上の子どもたちを守ることです。GSK社とBharat Biotech社とのこのような協力関係は、私たちの目標達成に向けた重要な一歩です」
ガーナのキンタンポ保健研究センターの所長であるクワク・ポク・アサンテ(Kwaku Poku Asante)博士は次のように述べています。
「マラリアワクチンの開発と普及に携わる疫学者として私は、アフリカの疾病負荷が高い地域でマラリアのワクチンが効果を発揮している場面を目の当たりにしてきました。流行国の研究コミュニティ、産業界、NGO、多国間機関の間で協力することで、世界初のマラリアワクチンは、小児の重症マラリアによる全死因死亡率と入院を減少させることに寄与しています。本日発表されたBharat Biotech社による長期的な価格引き下げとGSKの貢献は、マラリアに関わるコミュニティにとって重要な節目です。ワクチンのコストを抑えられれば、流行国で最も影響を受けているコミュニティの子どもたちをより多く守ることができます。マラリア対策の進化を維持するだけでなく、加速させるためには、手頃な価格を維持することが必要不可欠です」
Bharat Biotech International社(BBIL)について
BBILは、インドのハイデラバードのゲノムバレーに本社を置くバイオテクノロジー企業であり、感染症と闘うためのワクチンと生物学的製剤を手頃な値段で提供することに取り組んでいます。BBILは、世界各国より145件以上の特許を取得しており、19種類以上のワクチンと4種類の生物学的製剤からなる製品ポートフォリオを有しています。また、125カ国以上で登録を受けており、世界保健機関(WHO)の医薬品事前認証を取得しています。BBILは、世界中に90億回分以上のワクチンを供給しており、またインフルエンザH1N1、ロタウイルス、日本脳炎、狂犬病、コレラ、チクングニア熱、ジカ熱に対するワクチンに加え、世界初となる腸チフスに対する破傷風トキソイド結合型ワクチンを開発しました。そしてコロナ禍に対処するために、自国産の新型コロナウイルスワクチンを開発しました。
Bharat Biotech社の詳細については、www.bharatbiotech.comをご確認ください。
グラクソ・スミスクライン(GSK)について
GSKは、サイエンス、テクノロジー、人財を結集し、力を合わせて病に先手を打つことを存在意義とするグローバルなバイオ医薬品企業です。詳しくはhttps://jp.gsk.comをご参照ください。
1. World Health Organization, World Malaria Report 2024 https://www.who.int/teams/global-malaria-programme/reports/world-malaria-report-2024 (Accessed June 2025)
2. World Health Organization, Malaria vaccines (RTS,S and R21) (Accessed June 2025)