GSK、リネリキシバットが第III相試験GLISTENにおいて原発性胆汁性胆管炎(PBC)における胆汁うっ滞性そう痒症(持続的な強いかゆみ)に対し良好な結果を示したことを発表
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胆汁うっ滞性そう痒症およびかゆみに関連した睡眠障害に対し、プラセボ群と比較して迅速かつ有意で持続的な改善を示し、主要評価項目と主な副次評価項目を達成
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胆汁うっ滞性そう痒症はPBC患者さんの多くに見られ、睡眠障害など生活の質に重大な影響を及ぼす
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最新結果は2025年欧州肝臓学会(EASL)で発表
この資料は、英国GSK plcが2025年5月8日に発表したプレスリリースの日本語抄訳であり、報道関係者各位の利便性のために提供するものです。この資料の正式言語は英語であり、その内容およびその解釈については英語が優先されます。詳細は https://www.gsk.comをご参照ください。
GSK(本社:英国)は、まれな自己免疫性肝疾患である原発性胆汁性胆管炎(primary biliary cholangitis、以下PBC)に関連する胆汁うっ滞性そう痒症(持続的な強いかゆみ)を有する成人患者さんを対象に、回腸胆汁酸トランスポーター(ileal bile acid transporter、以下IBAT)を標的とした治験段階の阻害剤であるリネリキシバットを評価した第III相試験GLISTENにおいて、良好な結果が得られたことを発表しました。全体のデータは2025年欧州肝臓学会(EASL)で発表されました。
GLISTEN試験では、主要評価項目である24週間の治療期間にわたる月間かゆみスコアのベースラインからの変化量において、リネリキシバット群(n=119)がプラセボ群(n=119)と比較して統計学的に有意な改善を示しました(最小二乗平均値の群間差 [95% 信頼区間]:-0.72 [-1.15, -0.28], p=0.001)。かゆみの評価には、0-10の数値評価スケール(Numerical Rating Scale、以下NRS)によって最大のかゆみを数値化したスコア(WI-NRS)を用いました。24週間の治療期間中の各月の最悪の週間かゆみスコアを月間かゆみスコアとしました。この結果は、リネリキシバットがPBCの主要な症状である持続的な強いかゆみを改善する可能性を支持するものです。
GLISTEN試験では、治療2週目の週間かゆみスコアや24週間の治療期間にわたる睡眠スコア(NRS)を含む、主な副次評価項目も達成されました。
- リネリキシバットによるかゆみの改善は迅速であり、治療2週目の時点でプラセボと比較して有意な改善を示しました(最小二乗平均値の群間差 [95% 信頼区間]:-0.71 [-1.07, -0.34], p<0.001)。この改善効果は試験期間を通じて持続しました。
- 患者さんの生活の質に影響するかゆみに関連した睡眠障害に対しても、リネリキシバット群はプラセボ群と比較して有意な改善を示しました(24週間にわたる睡眠スコアの最小二乗平均値の群間差 [95% 信頼区間]:-0.53 [-0.98, -0.07], p=0.024)。
- リネリキシバット群ではより多くの参加者が臨床的意義のあるかゆみの改善(WI-NRSが3ポイント以上減少)を報告し、その割合は治療24週目の時点でプラセボ群の43%に対して56%でした(群間差 [95% 信頼区間]:13% [0%-27%], 名目上p=0.043)
GSKのシニアバイスプレジデントおよび呼吸器・免疫・炎症部門のR&Dグローバルヘッドであるカイヴァン・カヴァンディ(Kaivan Khavandi)は、次のように述べています。
「持続的な強いかゆみはPBC患者さんの多くに見られ、これは睡眠、精神的健康および生活の質に影響を及ぼします。リネリキシバットによって、かゆみとそれに関連する睡眠障害という、患者さんにとって非常に重要でありながらこれまで十分に治療されてこなかった高いアンメットニーズに応えることに一歩近づきました。」
リネリキシバットの安全性プロファイルは、以前の試験およびIBAT阻害のメカニズムから想定されたものと一致しており、消化器系の副作用がリネリキシバット群でより多くみられました。最も一般的な有害事象である下痢は、ほとんどが軽度のものであり、下痢による治験薬投与中止はリネリキシバット群で4%、プラセボ群で1%未満でした。
トロント大学ヘルスネットワークの自己免疫性肝疾患研究のリリー・アンド・テリー名誉委員長兼自己免疫性および希少肝疾患部門ディレクターで、GLISTEN試験の筆頭著者であるギデオン・ハーシュフィールド(Gideon Hirschfield)教授は次のように述べています。
「多くのPBC患者さんを診察し、前期第II相試験から本剤の開発に関わってきた研究者として、GLISTEN試験で見られたリネリキシバットによるそう痒症とそれに関連する睡眠障害の明確な改善は、臨床的に重要かつ意義があると考えます。」
リネリキシバットは現在、世界のどの国・地域でも承認されていません。
原発性胆汁性胆管炎における胆汁うっ滞性そう痒症について
原発性胆汁性胆管炎(PBC)は、胆汁うっ滞性肝疾患であり、肝臓からの胆汁の流れが障害を受けた結果、循環血中に過剰な胆汁酸が生じ、胆汁うっ滞性そう痒症(皮膚を掻いても軽減しない体内のかゆみ)を引き起こすと考えられています。そう痒症はPBCの病期や肝機能検査値のコントロールの程度を問わず発現する可能性があり、PBC患者さんの最大90%がさまざまな程度の重症度で経験します1。PBCに対する一次治療は、約70%の患者さんで疾患自体の進展抑制が得られる2ものの、そう痒の重症度や生活への影響を軽減することはありません3。胆汁うっ滞性そう痒症は患者さんを衰弱させる重大な影響を及ぼす疾患であり、睡眠障害、疲労、生活の質の低下をもたらすのみならず、肝不全がなくとも肝移植が必要になる場合もあります4。
リネリキシバット(linerixibat:GSK2330672)について
リネリキシバットは、回腸胆汁酸トランスポーター(IBAT)の阻害剤であり、原発性胆汁性胆管炎(PBC)というまれな自己免疫性肝疾患でみられる胆汁うっ滞性そう痒症(かゆみ)を治療できる可能性がある経口薬として開発されています。リネリキシバットは、胆汁酸の再吸収を阻害することにより、循環血中のさまざまな起痒物質を減少させます。米国食品医薬品局と欧州医薬品庁はリネリキシバットを、PBCにおける胆汁うっ滞性そう痒症の治療を適応とした希少疾病用医薬品に指定しています。
GLISTEN試験について
GLISTEN試験は、胆汁うっ滞性そう痒症を有する238人のPBC患者さんを対象として、実薬群とプラセボ群に均等に割り付けた(各群n=119)、第III相ランダム化二重盲検プラセボ対照比較試験です(NCT04950127、GSK試験番号212620)。主要な解析では、リネリキシバットの有効性および安全性をプラセボと比較して評価しました。中等度から重度のそう痒症を有する参加者が登録されました。参加者はリネリキシバットまたはプラセボのいずれかの投与を受けたのち、試験のパートBに移行すると投与群が変わる場合もありました。主要評価項目及び副次評価項目として、NRSを用いた最大のかゆみ及びかゆみに関連した睡眠障害の評価を実施しました。試験中はガイドラインで推奨されているそう痒症治療を安定した用量で継続することが許容されました。本試験はPBC患者さんを対象とした国際共同臨床試験として初めて米国、欧州連合、中国および日本を含む世界19カ国において実施・完了した試験です。
GSKの肝臓領域における取り組み
GSKは、肝疾患患者さんのために複数の治療法の可能性を研究しています。原発性胆汁性胆管炎(PBC)に加え、慢性B型肝炎、アルコール関連肝疾患(ALD)、代謝機能障害関連脂肪肝炎(MASH)に対する治療法の可能性を研究しています。
GSKについて
GSKは、サイエンス、テクノロジー、人財を結集し、力を合わせて病に先手を打つことを存在意義とするグローバルなバイオ医薬品企業です。詳しくはhttps://jp.gsk.comをご参照ください。
1 Gungabissoon U, et al. BMJ Open Gastroenterol 2024; 11(1)
2 Carbone M, et al. Lancet Gastroenterol Hepatol. 2018 Jul 13;3(9):626–634
3 Smith 2025; Hepatol Commun.9(3):e0635
4 Lindor KD, et al. Hepatology. 2019;69(1):394-419