GSK、再発又は難治性の多発性骨髄腫に対するブーレンレップの併用療法について日本で製造販売承認を取得
-
DREAMM-7試験で全生存期間の延長がみられるなど2つの直接比較第III相試験で優れた有効性
-
ブーレンレップ併用療法は、より効果的な選択肢が必要とされる早期治療(初回再発時)のあり方を変える可能性1,2,3
-
ブーレンレップ併用療法における英国での承認に続く2カ国目の承認
グラクソ・スミスクライン株式会社(本社:東京都港区、代表取締役社長:ポール・リレット、以下GSK)は、本日、再発又は難治性の多発性骨髄腫を有する成人患者さんに対するブーレンレップ点滴静注用100mg(一般名:ベランタマブ マホドチン、ブーレンレップ)の併用療法について、製造販売承認を取得したことをお知らせします。
本承認は、少なくとも1ライン以上の治療歴を有する多発性骨髄腫の成人患者さんに対する、ベランタマブ マホドチンとボルテゾミブおよびデキサメタゾンとの併用療法(BelaVd療法)、ならびにベランタマブ マホドチンとポマリドミドおよびデキサメタゾンとの併用療法(BelaPd療法)を評価した、第III相試験であるDREAMM-7試験とDREAMM-8試験で示した再発又は難治性の多発性骨髄腫に対する優れた有効性の結果に基づいています。両試験において、ブーレンレップの併用療法は標準治療と比較して無増悪生存期間(PFS)が統計学的に有意かつ臨床的に意義のある改善を示し、DREAMM-7試験では全生存期間(OS)の延長が認められています2,3,4。また、ブーレンレップの併用療法の安全性および忍容性プロファイルは、個々の薬剤の既知のプロファイルとおおむね一致しています2,3。
この日本での承認は、再発又は難治性の多発性骨髄腫治療におけるブーレンレップの併用療法において、2カ国目の承認となり、先月の英国医薬品医療製品規制庁(MHRA)による世界初の承認に続くものです。
ブーレンレップは多発性骨髄腫の患者さんにおける高い医療上の必要性から、2024年8月に厚生労働省により希少疾病用医薬品に指定され、再発又は難治性の多発性骨髄腫の承認審査においては優先審査の対象品目でした。
GSKのR&Dオンコロジー部門のグローバルヘッドでシニアバイスプレジデントのヘシャム・アブドラ(Hesham Abdullah)は次のように述べています。
「今回の承認により、日本の再発又は難治性の多発性骨髄腫患者さんにブーレンレップの併用療法を治療選択肢としてお届けできるようになります。患者さんは初回再発以降に、標準治療と比較して寛解および生存期間を延長するさらなる治療選択肢を必要とされています。ブーレンレップの併用療法は2つの第III相試験で示された優れた有効性に基づき、治療のあり方を変える可能性があり、専門医療機関と地域の医療機関の両方で治療を受けられるという利点があります。」
GSK代表取締役社長のポール・リレットは次のように述べています。
「多発性骨髄腫は依然として治癒が難しい疾患であり、日本での患者さんの数は年々増加傾向にあります5。患者さんは予後を改善する可能性のある革新的な治療法を期待されています。このたびの承認によって、日本の多発性骨髄腫患者さんがより長く、より充実した生活を送れるよう貢献できることを大変嬉しく思います。」
多発性骨髄腫患者さんのほとんどが再発を経験しており、日本では5年生存率は約43%です5。ブーレンレップは、多発性骨髄腫を対象とした抗BCMA(B細胞成熟抗原)抗体薬物複合体(ADC)であり、初回再発以降の患者さんに新たな作用機序を有する薬剤を提供することになります。ブーレンレップの併用療法は、複雑な前投与レジメンや入院を必ずしも必要とせず、あらゆるがん治療環境でさまざまなタイプの患者さんに投与することができます。
DREAMM-7試験およびDREAMM-8試験においてブーレンレップの併用療法は、高リスクの細胞遺伝学的異常やレナリドミドへの抵抗性などの予後不良な特徴を有する患者さんを含め、幅広い患者さんでベネフィットが認められました。両試験とも、その他の有効性の副次評価項目において、対照療法と比較して臨床的に意味のある、より深く持続的な奏効が示されました2,3。
また、DREAMM-7試験およびDREAMM-8試験において眼に関する副作用発現時には投与間隔の延長や減量等を行い、治療中止率はいずれも約9%でした2,3。ブーレンレップの併用療法で最も多く報告された眼科所見以外の有害事象(患者さんの30%超)は、DREAMM-7試験で血小板減少症(87%)と下痢(32%)、DREAMM-8試験で好中球減少症(63%)、血小板減少症(55%)、新型コロナウイルス感染症(37%)でした。
現在、ブーレンレップの併用療法は米国6(処方薬ユーザーフィー法、Prescription Drug User Fee Act: PDUFAによる審査終了予定日が2025年7月23日)、欧州連合7、中国(DREAMM-7試験の結果に基づき、併用療法は画期的治療薬指定を受け、承認申請は優先審査)8、カナダ、スイス(DREAMM-8試験の優先審査)を含む世界の主要国で審査中です。
多発性骨髄腫について
多発性骨髄腫は世界で3番目に多い血液のがんで、一般的に治療可能であるものの治癒困難な疾患と考えられています9,10。世界で毎年約18万人以上の患者さんが新たに多発性骨髄腫と診断されており、日本でも毎年7,200件以上が新たに報告されています11,12,13,14。多発性骨髄腫は、既存の治療に対して抵抗性を示すことが多いため、新しい治療法の開発が求められています1。多発性骨髄腫患者さんの多くは地域のがん治療施設で治療を受けており、専門医療機関外でも投与可能で、副作用が管理しやすい、新しい効果的な治療法が早急に求められています15,16。
ブーレンレップ(Blenrep、一般名:ベランタマブ マホドチン)について
ブーレンレップは、非切断型のリンカーを介して、ヒト化抗BCMAモノクローナル抗体に細胞傷害性薬剤であるアウリスタチンFを結合させたADCです。日本において、ブーレンレップは再発又は難治性の多発性骨髄腫を有する成人患者さんの治療を適応とします。2025年4月、英国医薬品医療製品規制庁(MHRA)は、少なくとも1ライン以上の治療歴を有する多発性骨髄腫の成人患者さんを対象にブーレンレップの併用療法を承認しました。米国、欧州連合、中国、カナダ、スイスなど世界の主要国において審査中で、年内に承認が見込まれています。
英国では、成人患者さんに対して再発又は難治性の多発性骨髄腫治療が適応となります。1ライン以上の治療歴を有する患者さんを対象としたボルテゾミブおよびデキサメタゾンとの併用療法、および、1ライン以上の治療歴(レナリドミドを含む治療を含む)を有する患者さんを対象としたポマリドミドおよびデキサメタゾンとの併用療法です。
薬剤リンカー技術はSeagen社からライセンス供与されています。また、モノクローナル抗体は、協和キリングループのBioWa社からライセンス供与を受けたPOTELLIGENT技術を用いて製造しています。
DREAMM-7試験について
DREAMM-7試験は、1ライン以上の多発性骨髄腫治療歴を有し、直近の治療中または治療後に病勢進行が確認された再発又は難治性の多発性骨髄腫患者さんを対象に、ベランタマブ マホドチンとBorDexとの併用療法と、ダラツムマブとBorDexとの併用療法とで有効性および安全性を比較する第III相多施設共同無作為化非盲検試験です。本試験では、合計494例の患者さんを、ベランタマブ マホドチンとBorDexの併用療法、またはダラツムマブとBorDexの併用療法に1:1の比率で無作為に割り付けました。ベランタマブ マホドチンについては2.5mg/kgの用量で3週間ごとに静脈内に投与しました。主要評価項目は、独立効果判定委員会の評価によるPFSとし、主な副次評価項目は、OS、奏効期間(duration of response:DOR)、微小残存病変(minimal residual disease:MRD)の陰性達成率(次世代シークエンシングにより評価)としました。その他の副次的評価項目は、全奏効率(overall response rate:ORR)、安全性、患者さんの報告による生活の質のアウトカムとしました。
DREAMM-7試験では、ブーレンレップの併用療法はダラツムマブをベースとする対照療法に対してPFSの中央値を約3倍に延長しました(それぞれ36.6カ月と13.4カ月。ハザード比[hazard ratio、以下HR]:0.41[95% 信頼区間(CI):0.31~0.53]、p<0.00001)。DREAMM-7試験ではまた、追跡期間の中央値39.4カ月の時点で、重要な副次評価項目であるOSも達成し、ダラツムマブをベースとする対照療法(251例)と比較して、ブーレンレップの併用療法(243例)で死亡リスクが42%低下し、統計学的に有意かつ臨床的に意義のある結果が認められました(HR:0.58、95% CI:0.43~0.79、p=0.00023)。3年時点でのOS率は、ブーレンレップの併用療法群では74%、ダラツムマブの併用療法群では60%でした。
PFSの結果は、2024年2月に開催された米国臨床腫瘍学会(ASCO)プレナリーシリーズで発表され、New England Journal of Medicine誌に掲載されました。またOSの結果は、2024年12月に米国血液学会(ASH)の年次総会で発表されました2,4。
DREAMM-8試験について
DREAMM-8試験は、1ライン以上の多発性骨髄腫治療歴(レナリドミドを含む治療を含む)を有し、直近の治療中または治療後に病勢進行が確認された再発又は難治性の多発性骨髄腫患者さんを対象に、ベランタマブ マホドチンとポマリドミドおよびデキサメタゾンとの併用療法(BelaPd療法)と、ボルテゾミブとポマリドミドおよびデキサメタゾンとの併用療法(PVd療法)とで有効性および安全性を比較する第III相多施設共同無作為化非盲検試験です。本試験では、合計302例の患者さんを、BelaPd療法またはPVd療法に1:1の比率で無作為に割り付けました。DREAMM-7試験の対象とした患者さんの集団と比較して、DREAMM-8試験の患者さんは前治療の割合が高く、全例にレナリドミドの投与歴があり、78%がレナリドミドに抵抗性を示していました。また25%にダラツムマブの投与歴があり、その大半がダラツムマブに抵抗性を示していました。ベランタマブマホドチンについては、1サイクル目に2.5mg/kgを静脈内投与し、その後4週ごとに1.9mg/kgの用量を静脈内投与しました。主要評価項目は、独立効果判定委員会の評価によるPFSとし、重要な副次評価項目は、OS、次世代シークエンシングにより評価した微少残存病変(minimal residual disease: MRD)陰性率としました。その他の副次評価項目は、全奏効率(overall response rate:ORR)、奏効期間(duration of response:DOR)、安全性、患者さんの報告による生活の質のアウトカムとしました。
DREAMM-8試験では、PFSについて、ボルテゾミブの併用療法(147例)と比べて、ベランタマブ マホドチンの併用療法(155例)で、統計学的に有意かつ臨床的に意義のある改善が認められました(ハザード比[hazard ratio、以下HR]:0.52[95%信頼区間(CI):0.37~0.73]、p<0.001)。追跡期間の中央値21.8カ月の時点でPFSの中央値は、ベランタマブ マホドチンの併用療法でまだ到達しておらず(95% CI:20.6~未達[not yet reached、以下NR])、ボルテゾミブの併用療法では12.7カ月(95% CI:9.1~18.5)でした。1年後の時点で病勢進行が認められず生存していた患者さんの割合は、ベランタマブ マホドチンの併用療法群で71%(95% CI:63~78)であったのに対し、ボルテゾミブの併用療法群では51%(95% CI:42~60)でした。さらに、予後不良のサブグループ(レナリドミドに対する抵抗性を示す患者さんや細胞遺伝学的高リスクの患者さんなど)を含め事前に規定したすべてのサブグループで、ベランタマブ マホドチンとPomDexの併用療法のベネフィットが認められました。中間解析では、全生存期間(OS)の改善傾向が認められるものの、統計学的有意差を示す基準にはまだ達していませんでした(HR:0.77[95% CI:0.53~1.14])。OSの追跡調査を継続し、さらなる解析を実施していく予定です。
結果は、2024年ASCO年次総会で初めて発表され、New England Journal of Medicine誌に掲載されました3。
GSKのオンコロジー領域における取り組み
GSKは、がん患者さんの生活の質(QOL)の向上やより長く生きること、予後改善に貢献することを目指しており、現在注力している血液悪性腫瘍と婦人科がんに加え、肺がんや消化器がんを含む固形腫瘍へも治療領域を拡大し、研究開発に取り組んでいます。
グラクソ・スミスクライン(GSK)について
GSKは、サイエンス、テクノロジー、人財を結集し、力を合わせて病に先手を打つことを存在意義とするバイオ医薬品のグローバルリーダーです。GSKは、免疫系科学と先端技術に重点をおき、呼吸器・免疫・炎症、オンコロジー、感染症をはじめとする疾患領域の研究開発に注力しています。そして、スペシャリティ医薬品、ワクチン、ジェネラル医薬品で、病気を予防し治療します。詳しくはhttps://jp.gsk.comをご参照ください。
1 Nooka AK, Kastritis E, Dimopoulos MA. Treatment options for relapsed and refractory multiple myeloma. Blood. 2015;125(20). doi:10.1182/blood-2014-11-568923.
2 Hungria V, Robak P, Hus M et al. Belantamab Mafodotin, Bortezomib, and Dexamethasone for Multiple Myeloma. N Engl J Med. 2024 Aug 1;391(5):393-407. doi: 10.1056/NEJMoa2405090. Epub 2024 Jun 1. PMID: 38828933.
3 Dimopoulos MA, Beksac M, Pour L, Delimpasi S et al. Belantamab Mafodotin, Pomalidomide, and Dexamethasone in Multiple Myeloma. N Engl J Med. 2024 Aug 1;391(5):408-421. doi: 10.1056/NEJMoa2403407. Epub 2024 Jun 2. PMID: 38828951.
4 Hungria V, Robak P, H Marek et al. Belantamab Mafodotin, Bortezomib, and Dexamethasone Vs Daratumumab, Bortezomib, and Dexamethasone in Relapsed/Refractory Multiple Myeloma: Overall Survival Analysis and Updated Efficacy Outcomes of the Phase 3 Dreamm-7 Trial. Presented at the 66th American Society of Hematology (ASH) Annual Meeting and Exposition. December 2024.
5 National Cancer Registry (Ministry of Health, Labour and Welfare), tabulated by Cancer Information Service, National Cancer Center, Japan. Available here: https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/cancer/26_mm.html#anchor1. Accessed 12 September 2024.
6 GSK press release issued 25 November 2024. 再発又は難治性の多発性骨髄腫に対するBlenrep併用療法の承認申請を米国食品医薬品局が受理 https://jp.gsk.com/ja-jp/news/press-releases/20241205-blenrep-combinations-accepted-for-review-by-the-us-fda-for-the-treatment-of-relapsedrefractory-multiple-myeloma/.
7 GSK press release issued 19 July 2024. 多発性骨髄腫に対するBlenrep併用療法の承認申請について欧州医薬品庁が受理 https://jp.gsk.com/ja-jp/news/press-releases/20240802-blenrep-belantamab-mafodotin-combinations-in-multiple-myeloma-application-accepted-for-review-by-the-european-medicines-agency/.
8 GSK press release issued 9 December 2024. Blenrep (belantamab mafodotin) combination accepted for priority review in China in relapsed/refractory multiple myeloma. Available at: https://www.gsk.com/en-gb/media/press-releases/blenrep-belantamab-mafodotin-combination-accepted-for-priority-review-in-china-in-relapsedrefractory-multiple-myeloma/.
9 Sung H, Ferlay J, Siegel R, et al. Global Cancer Statistics 2020: GLOBOCAN Estimates of Incidence and Mortality Worldwide for 36 Cancers in 185 Countries. CA Cancer J Clin. 2021;71(3):209-249. doi:10.3322/caac.21660.
10 Kazandjian D. Multiple myeloma epidemiology and survival: A unique malignancy. Semin Oncol. 2016;43(6):676–681.doi: 10.1053/j.seminoncol.2016.11.004.
11 Global Cancer Observatory. International Agency for Research on Cancer. World Health Organization. Multiple Myeloma fact sheet. Available at: https://gco.iarc.who.int/media/globocan/factsheets/cancers/35-multiple-myeloma-fact-sheet.pdf. Accessed 5 March 2025.
12 Global Cancer Observatory. International Agency for Research on Cancer. World Health Organization. Age-Standardized Rate (World) per 100,000, Incidence, Both sexes, in 2022. Available at: https://gco.iarc.who.int/today/en/dataviz/bars?mode=population&cancers=35&populations=100_112_191_196_203_208_233_246_250_276_300_348_352_372_380_40_428_440_442_470_498_499_528_56_578_616_620_642_643_688_70_703_705_724_752_756_8_804_807_826&types=0&sort_by=value0. Accessed 5 March 2025.
13 Ozaki S, Handa H, Saitoh T, et al. Trends of survival in patients with multiple myeloma in Japan: a multicenter retrospective collaborative study of the Japanese Society of Myeloma. Blood Cancer J. 2015 Sep 18;5(9):e349.
14 Handa H, Ishida T, Ozaki S et al. Treatment pattern and clinical outcomes in multiple myeloma patients in Japan using the Medical Data Vision claims database. PLoS One. 2023 Apr 6;18(4):e0283931.
15 Gajra A, Zalenski A, Sannareddy A, et al. Barriers to Chimeric Antigen Receptor T-Cell (CAR-T) Therapies in Clinical Practice. Pharmaceut Med. 2022 Jun;36(3):163-171.
16 Crombie J, Graff T, Falchi L, et al. Consensus recommendations on the management of toxicity associated with CD3×CD20 bispecific antibody therapy. Blood (2024) 143 (16): 1565–1575.