再発または難治性の多発性骨髄腫に対するBlenrepの併用療法を英国医薬品医療製品規制庁が承認

  • DREAMM-7試験で全生存期間の延長がみられるなど2つの直接比較第III相試験で優れた有効性

  • 効果的な選択肢が必要とされる早期治療(初回再発時)のあり方がBlenrep併用療法によって変化する可能性1,2,3

  • 英国で世界初の承認(現在14ヵ国で申請中で、年内に承認予定)

 


この資料は、英国GSK plcが2025年4月17日に発表したプレスリリースの日本語抄訳であり、報道関係者各位の利便性のために提供するものです。この資料の正式言語は英語であり、その内容およびその解釈については英語が優先されます。詳細は https://www.gsk.comをご参照ください。


 

GSK(本社:英国)は、Blenrep(ベランタマブ マホドチン)が英国医薬品医療製品規制庁(Medicines and Healthcare products Regulatory Agency:MHRA)より承認されたことを発表しました。英国においてBlenrepは、少なくとも1ライン以上の治療歴を有する多発性骨髄腫の成人患者さんに対する、ボルテゾミブとデキサメタゾンとの併用療法(BVd療法)、およびレナリドミドを含む1ライン以上の治療歴を有する患者さんに対する、ポマリドミドとデキサメタゾンとの併用療法(BPd療法)として承認されました。この英国規制当局による承認は、これらの適応症および治療レジメンにおけるBlenrepの世界初の承認となります。

今回のMHRAによるBlenrep併用療法の承認は、第III相試験であるDREAMM-7およびDREAMM-8試験において再発または難治性の多発性骨髄腫に対する優れた有効性の結果に基づいています。両試験において、Blenrepの併用療法は標準治療と比較して無増悪生存期間(PFS)が統計学的に有意かつ臨床的に意義のある改善を示し、DREAMM-7試験では全生存期間(OS)の延長が認められています2,3,4。また、Blenrepの併用療法の安全および忍容性プロファイルは、個々の薬剤の既知のプロファイルとおおむね一致しています2,3

 

GSKのR&Dオンコロジー部門のグローバルヘッドでシニアバイスプレジデントのヘシャム・アブドラ(Hesham Abdullah)は次のように述べています。
「このたびの英国におけるBlenrepの併用療法承認は、寛解と再発を繰り返す多発性骨髄腫を有する患者さんにとって画期的な節目となります。BCMAを標的とする抗体薬物複合体(ADC)であるBlenrepは、強固な第III相試験データの裏付けにより、標準治療に比して生存期間と寛解期間を延長し、初回再発時または再発後の治療のあり方を再定義する可能性があります。」

現在、多発性骨髄腫患者のほとんどが再発を経験しており、英国では診断後5年時点で生存しているのはわずか55%です5。Blenrepは多発性骨髄腫を対象とした抗BCMA(B細胞成熟抗原)ADCであり、再発時または再発後の患者さんに差別化された作用機序を提供します。Blenrepの併用療法は、複雑な前投与レジメンや入院を必要とせず、あらゆるがん治療環境でさまざまなタイプの患者さんに投与することができます。

国際骨髄腫財団のチーフメディカルオフィサーであり、シティ・オブ・ホープがんセンターのトランスレーショナル・ゲノミクス研究所の教授であるジョセフ・ミカエル(Joseph Mikhael)医師は次のように述べています。
「多発性骨髄腫の患者さんが診断時に併用療法を受けることが増えている中、寛解期間、ひいては生存期間の延長にはBlenrepのように異なる作用機序を用いた治療オプションが地域の医療機関で利用可能になることが重要です。今回の承認により、多くの患者さんにとって、治療を受けられる拠点が専門医療機関ならびに地域の医療機関の両方に広がることを嬉しく思います。」

DREAMM-7試験およびDREAMM-8試験のいずれでも、多発性骨髄腫の二次治療以降の治療において、標準治療の3剤併用療法との比較において、Blenrepの併用療法によって統計学的に有意かつ臨床的に意義のあるPFSの延長がみられました2,3。DREAMM-7試験では、Blenrepの併用療法はダラツムマブをベースとする対照療法に対してPFSの中央値を約3倍に延長しました(それぞれ36.6ヵ月と13.4ヵ月。ハザード比[hazard ratio、以下HR]:0.41[95% 信頼区間(CI):0.31~0.53]、p<0.00001)2。DREAMM-7試験ではまた、追跡期間の中央値39.4ヵ月の時点で、重要な副次評価項目であるOSも達成し、ダラツムマブをベースとする対照療法(251例)と比較して、Blenrepの併用療法(243例)で死亡リスクが42%低下し、臨床的に意義のある結果が認められました(HR:0.58、95% CI:0.43~0.79、p=0.00023)4。3年時点でのOS率は、Blenrepの併用療法群では74%、ダラツムマブの併用療法群では60%でした。DREAMM-8試験では、追跡期間の中央値21.8ヵ月の時点で、PFS中央値はBlenrepの併用療法群では未到達であったのに対し、ボルテゾミブの併用療法群では12.7ヵ月でした3

Blenrepの併用療法は、高リスクの細胞遺伝学的異常やレナリドミドへの抵抗性などの予後不良な特徴を有する患者さんを含め、幅広い患者さんでベネフィットが認められました。両試験とも、その他の有効性の副次評価項目において、対照療法と比較してより深く持続的な奏功が得られることが示されました2,3

Blenrepの既知のリスクである眼に関連する副作用は、投与間隔の延長や減量によって管理することで、DREAMM-7試験、DREAMM-8試験での眼に関する副作用による治療中止率はいずれも約9%となりました2,3。Blenrepの併用療法で最も一般的に報告された眼科所見以外の有害事象(患者さんの30%超)は、DREAMM-7試験で血小板減少症(87%)と下痢(32%)、DREAMM-8試験のBlenrep併用療法で好中球減少症(63%)、血小板減少症(55%)、新型コロナウイルス感染症(37%)でした。

Blenrepの併用療法は現在、処方薬ユーザーフィー法(Prescription Drug User Fee Act: PDUFA)による審査終了予定日を2025年7月23日としている米国6、欧州連合7、日本(優先審査)8、中国(DREAMM-7試験の結果に基づき、併用療法は画期的治療薬指定を受け、承認申請は優先審査)9、カナダ、スイス(DREAMM-8試験の優先審査)を含む14ヵ国で審査中です。

多発性骨髄腫について
多発性骨髄腫は世界で3番目に多い血液のがんで、一般的に治療可能であるものの治癒困難な疾患と考えられています10,11。世界で毎年約18万人以上の患者さんが新たに多発性骨髄腫と診断されています12。英国の多発性骨髄腫の発現率は欧州諸国の中で第5位であり、重大な懸念事項になっています。英国では、毎年約6,500人以上の患者さんが新たに多発性骨髄腫と診断されており、有病者数は5年間で19,400例以上と推定されます13,14。多発性骨髄腫は、既存の治療に対して抵抗性を示すことが多いため、新しい治療法の開発が求められています1。多発性骨髄腫患者さんの多くは地域のがん治療施設で治療を受けており、専門医療機関外でも投与可能で、副作用が管理しやすい、新しい効果的な治療法が早急に求められています15,16

Blenrepについて
Blenrepは、非切断型のリンカーを介して、ヒト化抗BCMAモノクローナル抗体に細胞傷害性薬剤であるアウリスタチンFを結合させたADCです。薬剤リンカー技術はSeagen社からライセンス供与されています。また、モノクローナル抗体は、協和キリングループのBioWa社からライセンス供与を受けたPOTELLIGENT技術を用いて製造しています。

適応症
英国では、Blenrepは成人患者さんに対する以下の多発性骨髄腫治療が適応となります。

  • 1ライン以上の治療歴を有する患者さんを対象としたボルテゾミブおよびデキサメタゾンとの併用療法
  • 1ライン以上の治療歴(レナリドミドを含む治療を含む)を有する患者さんを対象としたポマリドミドおよびデキサメタゾンとの併用療法

 

DREAMM-7試験について
DREAMM-7試験は、1ライン以上の多発性骨髄腫治療歴を有し、直近の治療中または治療後に病勢進行が確認された再発又は難治性の多発性骨髄腫患者さんを対象に、ベランタマブ マホドチンとBorDexとの併用療法と、ダラツムマブとBorDexとの併用療法とで有効性および安全性を比較する第III相多施設共同無作為化非盲検試験です。本試験では、合計494例の患者さんを、ベランタマブ マホドチンとBorDexの併用療法、またはダラツムマブとBorDexの併用療法に1:1の比率で無作為に割り付けました。ベランタマブ マホドチンについては2.5mg/kgの用量で3週間ごとに静脈内に投与しました。主要評価項目は、独立効果判定委員会の評価によるPFSとし、主な副次評価項目は、OS、奏効期間(duration of response:DOR)、微小残存病変(minimal residual disease:MRD)の陰性達成率(次世代シークエンシングにより評価)としました。その他の副次的評価項目は、全奏効率(overall response rate:ORR)、安全性、患者さんの報告による生活の質のアウトカムとしました。DREAMM-7試験の結果は、2024年2月に開催された米国臨床腫瘍学会(ASCO)プレナリーシリーズで初めて発表され、2024年ASCO年次総会でアンコール発表として共有されたうえで、New England Journal of Medicine誌に掲載されました。

 

DREAMM-8試験について
DREAMM-8試験は、1ライン以上の多発性骨髄腫治療歴(レナリドミドを含む治療を含む)を有し、直近の治療中または治療後に病勢進行が確認された再発または難治性の多発性骨髄腫患者さんを対象に、ベランタマブ マホドチンとポマリドミドおよびデキサメタゾンとの併用療法(BPd療法)と、ボルテゾミブとポマリドミドおよびデキサメタゾンとの併用療法(PVd療法)とで有効性および安全性を比較する第III相多施設共同無作為化非盲検試験です。本試験では、合計302例の患者さんを、BPd療法またはPVd療法に1:1の比率で無作為に割り付けました。DREAMM-7試験の対象とした患者さんの集団と比較して、DREAMM-8試験の患者さんは前治療の割合が高く、全例にレナリドミドの投与歴があり、78%がレナリドミドに抵抗性を示していました。また25%にダラツムマブの投与歴があり、その大半がダラツムマブに抵抗性を示していました。ベランタマブマホドチンについては、1サイクル目に2.5mg/kgを静脈内投与し、その後4週ごとに1.9mg/kgの用量を静脈内投与しました。主要評価項目は、独立効果判定委員会の評価によるPFSとし、重要な副次評価項目は、OS、次世代シークエンシングにより評価した微少残存病変(minimal residual disease: MRD)陰性率としました。その他の副次評価項目は、全奏効率(overall response rate:ORR)、奏効期間(duration of response:DOR)、安全性、患者さんの報告による生活の質のアウトカムとしました。結果は、2024年ASCO年次総会で初めて発表され、New England Journal of Medicine誌に掲載されました3

オンコロジー領域におけるGSKの取り組み
GSKは新たな治療領域としてオンコロジー領域に注力しており、がん免疫療法および腫瘍細胞標的療法の画期的な治療法の開発を通じて、血液悪性腫瘍、婦人科がん、その他固形腫瘍領域を中心に、患者さんの予後改善に向けて取り組んでいます。

グラクソ・スミスクライン(GSK)について
GSKは、サイエンス、テクノロジー、人財を結集し、力を合わせて病に先手を打つことを存在意義とするグローバルなバイオ医薬品企業です。詳しくはhttps://jp.gsk.comをご参照ください。

 


1 Nooka AK, Kastritis E, Dimopoulos MA. Treatment options for relapsed and refractory multiple myeloma. Blood. 2015;125(20). doi:10.1182/blood-2014-11-568923.
2 Hungria V, Robak P, Hus M et al. Belantamab Mafodotin, Bortezomib, and Dexamethasone for Multiple Myeloma. N Engl J Med. 2024 Aug 1;391(5):393-407. doi: 10.1056/NEJMoa2405090. Epub 2024 Jun 1. PMID: 38828933.
3 Dimopoulos MA, Beksac M, Pour L, Delimpasi S et al. Belantamab Mafodotin, Pomalidomide, and Dexamethasone in Multiple Myeloma. N Engl J Med. 2024 Aug 1;391(5):408-421. doi: 10.1056/NEJMoa2403407. Epub 2024 Jun 2. PMID: 38828951.
4 Hungria V, Robak P, H Marek et al. Belantamab Mafodotin, Bortezomib, and Dexamethasone Vs Daratumumab, Bortezomib, and Dexamethasone in Relapsed/Refractory Multiple Myeloma: Overall Survival Analysis and Updated Efficacy Outcomes of the Phase 3 Dreamm-7 Trial. Presented at the 66th American Society of Hematology (ASH) Annual Meeting and Exposition. December 2024.
5 National Health Service. Cancer Survival in England, cancers diagnosed 2016 to 2020, followed up to 2021. Available at: https://digital.nhs.uk/data-and-information/publications/statistical/cancer-survival-in-england/cancers-diagnosed-2016-to-2020-followed-up-to-2021/survival-by-cancer-group.
6 GSK press release issued 25 November 2024. Blenrep combinations accepted for review by the US FDA for the treatment of relapsed/refractory multiple myeloma. Available at: https://www.gsk.com/en-gb/media/press-releases/blenrep-combinations-accepted-for-review-by-the-us-fda-for-the-treatment-of-relapsedrefractory-multiple-myeloma/.
7 GSK press release issued 19 July 2024. Blenrep (belantamab mafodotin) combinations in multiple myeloma accepted for review by the European Medicines Agency. Available at: https://www.gsk.com/en-gb/media/press-releases/blenrep-belantamab-mafodotin-combinations-in-multiple-myeloma-application-accepted-for-review-by-the-european-medicines-agency/.
8 GSK press release issued 17 September 2024. Blenrep (belantamab mafodotin) combinations in relapsed/refractory multiple myeloma accepted for regulatory review in Japan. Available at: https://www.gsk.com/en-gb/media/press-releases/blenrep-belantamab-mafodotin-combinations-in-relapsedrefractory-multiple-myeloma-accepted-for-regulatory-review-in-japan/.
9 GSK press release issued 9 December 2024. Blenrep (belantamab mafodotin) combination accepted for priority review in China in relapsed/refractory multiple myeloma. Available at: https://www.gsk.com/en-gb/media/press-releases/blenrep-belantamab-mafodotin-combination-accepted-for-priority-review-in-china-in-relapsedrefractory-multiple-myeloma/.
10 Sung H, Ferlay J, Siegel R, et al. Global Cancer Statistics 2020: GLOBOCAN Estimates of Incidence and Mortality Worldwide for 36 Cancers in 185 Countries. CA Cancer J Clin. 2021;71(3):209-249. doi:10.3322/caac.21660.
11 Kazandjian D. Multiple myeloma epidemiology and survival: A unique malignancy. Semin Oncol. 2016;43(6):676-681.doi: 10.1053/j.seminoncol.2016.11.004.
12 Global Cancer Observatory. International Agency for Research on Cancer. World Health Organization. Multiple Myeloma fact sheet. Available at: https://gco.iarc.who.int/media/globocan/factsheets/cancers/35-multiple-myeloma-fact-sheet.pdf. Accessed 5 March 2025.
13 Global Cancer Observatory. International Agency for Research on Cancer. World Health Organization. Age-Standardized Rate (World) per 100,000, Incidence, Both sexes, in 2022. Available at: https://gco.iarc.who.int/today/en/dataviz/bars?mode=population&cancers=35&populations=100_112_191_196_203_208_233_246_250_276_300_348_352_372_380_40_428_440_442_470_498_499_528_56_578_616_620_642_643_688_70_703_705_724_752_756_8_804_807_826&types=0&sort_by=value0 Accessed 5 March 2025.
14 Global Cancer Observatory. International Agency for Research on Cancer. World Health Organization. United Kingdom fact sheet. Available at: https://gco.iarc.who.int/media/globocan/factsheets/populations/826-united-kingdom-fact-sheet.pdf Accessed 5 March 2025.
15 Gajra A, Zalenski A, Sannareddy A, et al. Barriers to Chimeric Antigen Receptor T-Cell (CAR-T) Therapies in Clinical Practice. Pharmaceut Med. 2022 Jun;36(3):163-171.
16 Crombie J, Graff T, Falchi L, et al. Consensus recommendations on the management of toxicity associated with CD3×CD20 bispecific antibody therapy. Blood (2024) 143 (16): 1565-1575.