GSK、成人および青年期(12歳以上)女性を対象とした単純性尿路感染症の治療薬「Blujepa(ゲポチダシン)」が米国FDAより承認を取得
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Blujepa(ゲポチダシン)が約30年ぶりの単純性尿路感染症に対する新規作用機序を有する経口抗菌薬として承認
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単純性尿路感染症は女性の半数以上が生涯で一度は発症し、約30%の患者さんで再発
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主要な第III相試験であるEAGLE-2およびEAGLE-3のデータに基づき承認
この資料は、英国GSK plcが2025年3月25日に発表したプレスリリースの日本語抄訳であり、報道関係者各位の利便性のために提供するものです。この資料の正式言語は英語であり、その内容およびその解釈については英語が優先されます。詳細は https://www.gsk.comをご参照ください。
GSK(本社:英国)は、ゲポチダシンに感受性のある病原性細菌(大腸菌、クレブシエラ肺炎桿菌、シトロバクター・フレンディ、腐性ブドウ球菌、エンテロコッカス・フェカリス)による単純性尿路感染症(uncomplicated urinary tract infections、以下uUTI)の成人女性(40kg以上)および青年期(12歳以上、40kg以上)を対象とした治療薬「Blujepa(ゲポチダシン)」について、米国食品医薬品局(FDA)より承認を取得したことをお知らせします。
GSKの科学者によって発見されたBlujepaは、新規作用機序を有するファースト・イン・クラスの経口抗菌薬で、GSKの感染症ポートフォリオの一部です。
GSKチーフ・サイエンティフィック・オフィサーのトニー・ウッド(Tony Wood)は次のように述べています。
「女性に最も多くみられる感染症のひとつである単純性尿路感染症において、このたびのBlujepaの承認は極めて重要な節目となるでしょう。当社は、uUTIに対する新規作用機序を有する経口抗菌薬であるBlujepaを開発し、約30年ぶりに、uUTIの再発や既存治療に対する耐性化が懸念される患者さんへ新たな選択肢を提供できることを嬉しく思います。」
uUTIは女性で最も多くみられる感染症で、米国では年間最大1,600万人の女性に発症しています1-4。女性の半数以上が生涯で一度はuUTIを発症し5、約30%の女性がuUTIの1回以上の再発に苦しんでいます。不快感や日常生活の制限など、患者さんは大きな負担を強いられています6。また、薬剤耐性菌によるuUTIが増加しており、治療失敗率を高める可能性があるため、新たな治療オプションが必要とされています7。
マイアミ大学医学部の臨床医学教授であるトーマス・フートン(Thomas Hooton)医学博士は次のように述べています。
「多くの患者さんにとって、単純性尿路感染症は日常生活に深刻な影響を及ぼす負担となります。感染症を再発する患者さんが増加する中、患者さんの困難と医療制度への負担に対処するため、抗菌薬の継続的な研究が必要であることは明らかです。」
本承認は、uUTIの確定診断を受けた成人の女性(40kg以上)および小児(12歳以上、40kg以上)の患者さんを対象に、uUTIに対する現在の主要な標準治療薬の1つであるニトロフラントイン*に対する非劣性を示した主要な第III相試験EAGLE-2およびEAGLE-3の良好な結果に基づいています8。EAGLE-2試験では、治療成功率はニトロフラントインで47.0%(135/287例)であったのに対し、Blujepaは50.6%(162/320例)、共変量で補正した投与群間差は4.3%(95%CI:-3.6~12.1)であり、非劣性が認められました8。EAGLE-3試験では、Blujepaがニトロフラントインに対して統計学的に有意な優越性を示しました(片側p値:0.0003)。治療成功率は、ニトロフラントインで43.6%(115/264例)であったのに対し、Blujepaは58.5%(162/277例)で、共変量で補正した投与群差は14.6%、95%CIは6.4~22.8でした8。(*本邦承認だが現在販売中止)
第III相試験(EAGLE-2およびEAGLE-3)でみられたBlujepaの安全性および忍容性プロファイルは、過去の試験結果と一致していました8。Blujepaを投与した患者さんで最も多く報告された有害事象(adverse event:AE)は胃腸障害でした。最も多く報告された有害事象は下痢(16%)で、次いで悪心(9%)でした。Blujepaを投与した患者さんのうち、胃腸障害の有害事象が報告された患者さんでの最大重症度は、そのほとんどが軽度(グレード1、69%)および中等度(グレード2、28%)でした。グレード3の胃腸障害が報告された患者さんは、胃腸障害が報告された患者さんの3%で、全ての患者さんの1%未満でした。両試験をあわせて、治験薬との因果関係が否定できない重篤な有害事象が、各治療群(Blujepa群およびニトロフラントイン群)で1件認められました8。
米国での販売開始は2025年下半期を予定しています。
Blujepa(ゲポチダシン)の開発は、米国保健福祉省の戦略的準備・対策局の生物医学先端研究開発局(Biomedical Advanced Research and Development Authority:BARDA)のフェデラルファンドの一部(契約番号HHSO100201300011C)および米国国防総省の国防脅威削減局(DTRA)のフェデラルファンド(契約番号HDTRA1-07-9-0002)より資金提供を受けて行われています。
Blujepa(ゲポチダシンメシル酸塩水和物:ゲポチダシン、gepotidacin)について
Blujepaは、GSKの科学者により発見された、殺菌作用を持つファースト・イン・クラスのトリアザアセナフチレン系抗菌薬です。他の抗菌薬とは異なる作用機序によって細菌のDNA複製を阻害する、新規の作用機序を有する抗菌薬であり、2つの異なるII型トポイソメラーゼ酵素に結合してバランスよく阻害します。これにより、既存薬への耐性を示す分離株を含む、ほとんどの尿路病原細菌(大腸菌および腐性ブドウ球菌など)や淋菌に対して抗菌活性を示します。Blujepaは、2つの標的酵素にバランスよく結合し阻害することから、病原菌がBlujepaに対する耐性を獲得するためには、両酵素の変異が必要となります。したがって、耐性発現の可能性は低くなると考えられています。また有効性および安全性は、薬剤耐性菌によるものも含むuUTIおよび淋菌感染症の患者さんを対象とした第III相臨床試験において確認されています。
EAGLE(Efficacy of Antibacterial Gepotidacin Evaluated)第III相プログラムについて
成人および青年期の患者さんを対象としたゲポチダシンの国際共同第III相臨床プログラムは、3つの試験で構成されています。
EAGLE-2試験およびEAGLE-3試験(単純性尿路感染症の非劣性試験)は、単純性尿路感染症の成人女性患者さん1,531例と青年期女性患者さん1,605例を対象に、ゲポチダシン(1,500mgを1日2回5日間経口投与)の有効性と安全性をニトロフラントイン(100mgを1日2回5日間経口投与)と比較しています。いずれの試験も治験期間は約28日間です。主要評価項目は、ニトロフラントインに感受性を持つ適格な尿路病原細菌を有する患者さんでの治癒判定(Test-of-Cure:ToC)来院時(Day10~13)の臨床的消失および細菌学的消失を指標とした複合評価項目です。EAGLE-1試験(泌尿生殖器の淋菌感染症の非劣性試験)は、単純性淋菌感染症患者さん628例を対象として、ゲポチダシンの有効性と安全性を、セフトリアキソンとアジスロマイシンの併用と比較しています。
GSKの感染症領域における取り組み
70年以上にわたり感染症領域でのイノベーションをリードしているGSKは、業界最大かつ最も多様な医薬品およびワクチンのパイプラインを有している企業のひとつで、世界的にアンメットニーズの高い疾患に対する予防と治療薬の開発を目指しています。GSKは、イノベーション、アクセス、適正使用における専門知識と能力をもとに、抗菌薬耐性の予防とその軽減という課題に取り組んでいます。
抗菌薬ではゲポチダシンに加え、Spero Therapeutics Inc.社との間で、複雑性尿路感染症(complicated urinary tract infections:cUTI)の治療薬候補として開発後期段階の抗菌薬であるテビペネムHBrをパイプラインに追加する独占的ライセンス契約を2022年9月に締結しました。GSKは現在、第III相試験であるPIVOT-PO試験の組入れを行っています。また、SCYNEXIS社との間で、外陰腟カンジダ症(vulvovaginal candidiasis:VVC)の治療およびVVCの再発率低下を適応とした新規の抗真菌薬であるBrexafemme(ibrexafungerp錠)に対する独占的ライセンス契約を2023年3月に締結しました。
グラクソ・スミスクライン(GSK)について
GSKは、サイエンス、テクノロジー、人財を結集し、力を合わせて病に先手を打つことを存在意義とするバイオ医薬品のグローバルリーダーです。詳細情報はhttps://jp.gsk.comをご参照ください。
1 AdvaniSD, et al. Poster presented at: ISPOR 2024; May 5-8,2024. Presentation EPH17.
2 FoxmanB, et al. Urinary tract infection: self-reported incidence and associated costs. Ann Epidemiol.2000;10(8):509-15.
3 FoxmanB. Urinary Tract Infection Syndromes: Occurrence, Recurrence, Bacteriology, Risk Factors, and Disease Burden. Infect Dis Clin North Am.201428(1):1-13.
4 United States Census Bureau. Age and Sex Composition:2020.[Available from:https://www2.census.gov/library/publications/decennial/2020/census-briefs/c2020br-06.pdf LastaccessedMarch2025].
5 Czajkowski, K, et al. Urinary tract infection in women. Prz Menopauzalny.2021;20(1):40-7.
6 Little P, et al. Presentation, pattern, and natural course of severe symptoms, and role of antibiotics and antibiotic resistance among patients presenting with suspected uncomplicated urinary tract infection in primary care: observational study. BMJ.2010;340:b5633.
7 Kaye KS, et al. Antimicrobial resistance trends inurine Escherichia coli isolates from adult and adolescent females in the United States from 2011 to 2019: rising ESBL strains and impact on patient management. Clin Infect Dis2021;73:1992-1999.
8 Wagenlehner, Florian et al. Oral gepotidacin versus nitrofurantoin in patients with uncomplicated urinary tract infection (EAGLE-2 and EAGLE-3): two randomised, controlled, double-blind, double-dummy, phase 3, non-inferiority trials. The Lancet, Volume 403, Issue 10428, 741 – 755.