GSK、鼻茸を伴う慢性鼻副鼻腔炎の患者さんを対象としたデペモキマブの良好な結果を発表

  • 第III相試験であるANCHOR-1およびANCHOR-2試験において、デペモキマブは6カ月(26週)に1回投与でプラセボと比較し、鼻茸を伴う慢性鼻副鼻腔炎における鼻茸の縮小や鼻閉の改善を示した

  • 本結果は、初回評価時点からみられ、52週間にわたって持続

  • 最新のデータは、2025年米国アレルギー・喘息・免疫学会(AAAAI)/世界アレルギー機構(WAO)合同会議で発表され、The Lancetに同日掲載

 


この資料は、英国GSK plcが2025年3月1日に発表したプレスリリースの日本語抄訳であり、報道関係者各位の利便性のために提供するものです。この資料の正式言語は英語であり、その内容およびその解釈については英語が優先されます。詳細は https://www.gsk.comをご参照ください。


 

GSK(本社:英国)は、鼻茸を伴う慢性鼻副鼻腔炎の成人患者さんを対象に、デペモキマブとプラセボをいずれも標準治療(standard of care、以下SOC)と併用したときの有効性と安全性を比較評価する第III相臨床試験であるANCHOR-1試験とANCHOR-2試験における良好な結果を発表しました。デペモキマブはインターロイキン5(interleukin-5、以下IL-5)を標的とする長時間作用型のモノクローナル抗体です。IL-5は、2型炎症で主要な役割を果たすサイトカイン(タンパク質)であり、2型炎症は鼻茸を伴う慢性鼻副鼻腔炎の患者さんの最大85%に認められます3,8。これらの試験結果は、カリフォルニア州サンディエゴで開催された2025年米国アレルギー・喘息・免疫学会(American Academy of Allergy, Asthma and Immunology:AAAAI)/世界アレルギー機構(World Allergy Organization:WAO)合同会議で発表され、同日にThe Lancetに掲載されました。

ANCHOR-1試験(271例)とANCHOR-2試験(257例)では、デペモキマブの6カ月(26週)に1回投与により鼻茸の大きさと鼻閉という2つの重要な疾患の重症度に関する臨床指標でプラセボと比較して臨床的に意味のある、統計学的に有意な改善を示し、主要評価項目を達成しました6,7。さらに、2つの試験の併合解析では、プラセボと比較して以下の指標がベースラインより改善(減少)しました。

  • 52週時点の鼻茸スコア(Nasal polyp score:NPS、0~8)(治療群間差[95%CI]:-0.7[-0.9, -0.4]、名目上のp<0.001)
  • 49~52週の平均鼻閉スコア(言語式評価スケール[verbal response scale:VRS、0~3])(治療群間差[95% CI]:-0.24[-0.39, -0.08]、名目上のp=0.003)

ANCHOR-1試験およびANCHOR-2試験では、実際の臨床診療を反映するため、症状の重症度が異なる患者集団を広く登録しました。治療効果は初回評価時点で観察され、52週目まで持続しました6,7

シニアバイスプレジデントで呼吸器・免疫/炎症領域のR&Dグローバルヘッドのカイヴァン・カヴァンディ(Kaivan Khavandi)は、次のように述べています。
「今回発表したデータは、デペモキマブが長時間作用型治療薬として妥当であるとする一連のエビデンスを補強するもので、6カ月(26週)に1回の投与によって鼻茸が有意に減少することを示すものです。一部の患者さんでは再手術が必要となり、また多くの患者さんで全身性ステロイドの長期投与が必要となることから、本疾患の症状を持続的に改善でき、また負担を軽減できる治療選択肢に対して、医療上のニーズがあると考えます5,8,9。」

両試験の副次的評価項目として鼻漏VRSスコア、嗅覚消失VRSスコアのベースラインからの変化、副鼻腔画像検査におけるLund-Mackay CTスコア、および疾患関連の生活の質の指標であるSNOT-22に対し併合解析を行ったところ、プラセボと比較してデペモキマブで名目上有意な改善が認められました6,7

ANCHOR試験(併合)では、52週目までに全身性ステロイド(systemic corticosteroids、以下SCS)、手術、disease-modulating medication(2型炎症を標的とする生物学的製剤、全身性ステロイド薬の長期使用などの開始を含む)による介入を受けなかった割合がデペモキマブ群で74%(200例)とプラセボ群で64%(164例)でした(オッズ比[95% CI]:0.58[0.40, 0.86]、名目上のp=0.006)6,7。手術またはdisease-modulating medicationによる介入のみ検討した場合でもデペモキマブが優越性を示す傾向にあり、手術またはdisease-modulating medicationを受けなかった割合がデペモキマブ群で88%(239例)であるのに対し、プラセボ群では83%(213例)でした(ハザード比[95%CI]:0.713[0.453, 1.124]、p=0.146)。

有害事象(adverse events、AE)が生じた患者さんの割合は、ANCHOR-1試験(74%[106例]対79%[101例])とANCHOR-2試験(76%[98例]対80%[102例])ともにデペモキマブ群とプラセボ群で同程度でした6,7。これは、2型炎症を伴う喘息の患者さんを対象としたデペモキマブの第III相試験であるSWIFT-1試験およびSWIFT-2試験の結果と一致しています1。さらに、ANCHOR-1およびANCHOR-2試験を通じてAEのために治療を中止または試験を中止したのは、デペモキマブを投与された患者さんの1%未満(2例)とプラセボを投与された患者さんの1%(3例)でした。治験責任医師により治験薬投与との関連ありと判断された重篤な有害事象はありませんでした6,7

鼻茸を伴う慢性鼻副鼻腔炎は、一般人口の最大2.6%が罹患している慢性疾患です5。手術およびSCSの使用を含む現状のSOCでは、慢性的な本疾患の影響に対処できる最適なものではなく、患者さんの約半数は症状がコントロール不良のまま過ごしています。SCSを短期間投与することで症状を一時的に改善することができますが、反復使用することで糖尿病、心血管疾患、白内障および骨粗鬆症のリスクが増加するなどの重篤な有害事象が生じることが知られています。手術によって症状を改善することもできますが、手術では抑えきれない基礎病態としての炎症により最大60%の患者さんで18カ月以内に鼻茸や症状が再発するとされています10

ANCHOR-1およびANCHOR-2試験の結果は、SWIFT-1およびSWIFT-2試験のデータとともに、2型炎症を伴う喘息および鼻茸を伴う慢性鼻副鼻腔炎を適応とした規制当局への申請の裏付けとして世界各国で使用されています。現在、上記の適応でデペモキマブを承認している国や地域はありません。

ANCHOR-1試験、ANCHOR-2試験について6,7
ANCHOR-1およびANCHOR-2試験では、鼻茸を伴う慢性鼻副鼻腔炎の患者さんを対象にデペモキマブの安全性および有効性を評価しました。両試験は、52週間の無作為化、二重盲検、並行群間比較、プラセボ対照、多施設共同試験として実施されました。ANCHOR-1試験のFull Analysis Set (FAS集団)デペモキマブとSOCとの併用群143例、プラセボとSOCとの併用群128例であり、ANCHOR-2試験の最大解析対象集団はデペモキマブとSOCとの併用群129例、プラセボとSOCとの併用群128例でした。

全528例とも、両鼻腔で鼻茸がみられる(内視鏡下で両側のNPSが5以上)など鼻茸を伴う慢性鼻副鼻腔炎のコントロールが不十分であり、鼻茸を伴う慢性鼻副鼻腔炎の手術歴を有するかSCSによる治療歴またはSCSへの不耐性を有していました。SOCに加えて、デペモキマブまたはプラセボを6カ月(26週間)間隔で投与しました。

鼻茸を伴う慢性鼻副鼻腔炎について
鼻茸を伴う慢性鼻副鼻腔炎は、鼻粘膜の炎症により、鼻茸という軟部組織の増殖が生じる病態です8,9。鼻茸を伴う慢性鼻副鼻腔炎の患者さんでは、鼻閉、嗅覚消失、顔面痛、睡眠障害、感染症、鼻汁などの症状がみられ、これらは精神的および身体的健康に影響を及ぼす可能性があります3-5,10。IL-5は、2型炎症において主要なサイトカイン(タンパク質)であり、鼻茸を伴う慢性鼻副鼻腔炎の患者さんの最大85%で検出されます3,8。IL-5は、鼻茸を伴う慢性鼻副鼻腔炎患者さんの副鼻腔および鼻茸組織に高濃度で頻繁に見られ、より重篤な疾患と関連しています。

デペモキマブについて
デペモキマブは、インターロイキン-5(interleukin-5:IL-5)を標的とするモノクローナル抗体であり、鼻茸を伴う慢性鼻副鼻腔炎において、第III相試験で評価されたIL-5を標的とする長時間作用型の生物学的製剤です。デペモキマブは、半減期が長く、IL-5に対する高い結合親和性と効力により、ANCHOR試験において、6カ月(26週)の投与間隔で検討されました6,7。これらの試験において、デペモキマブは血中好酸球の早期かつ持続的な抑制を示し、IL-5活性の重要な指標となりました6,7

第III相プログラムには、他のIL-5関連疾患におけるデペモキマブの評価も含まれています。これには重症喘息、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(eosinophilic granulomatosis with polyangiitis:EGPA)、および好酸球増多症候群(hypereosinophilic syndrome:HES)が含まれます1,11,12,13。重症喘息における最初の第III相試験であるSWIFT-1およびSWIFT-2試験の結果は、New England Journal of Medicine誌に掲載されています1

呼吸器領域におけるGSKの取り組み
GSKは、何十年にもわたる呼吸器領域の先進的な取り組みを基盤とし、より意欲的な治療目標を達成し、次世代の標準治療を開発し、何億人もの呼吸器疾患の患者さんのために将来の呼吸器疾患治療のあり方を変えていきます。業界をリードする呼吸器疾患治療薬のポートフォリオとワクチン、生物学的製剤、吸入薬のパイプラインを有するGSKは、あらゆる種類の喘息やCOPDに加え、難治性の慢性咳嗽や間質性肺疾患を伴う全身性強皮症のような希少疾患とともに生きる患者さんの転帰と生活を改善することに注力しています。GSKは、基礎疾患の機能不全を改善し、疾患の進行を予防するために最新の科学技術を活用しています。

グラクソ・スミスクライン(GSK)について
GSKは、サイエンス、テクノロジー、人財を結集し、力を合わせて病に先手を打つことを存在意義とするバイオ医薬品のグローバルリーダーです。詳細情報はhttps://jp.gsk.comをご参照ください。

 


1 Jackson DJ, et al. Six Monthly Depemokimab in Severe Asthma With an Eosinophilic Phenotype. NEJM. Published on September 9 at NEJM.org
2 Han JK, et al. Mepolizumab for chronic rhinosinusitis with nasal polyps (SYNAPSE): a randomised, double-blind, placebo-controlled, phase 3 trial. Lancet Respir Med. 2021;9(10):1141-1153.
3 Kato A, et al. Endotypes of chronic rhinosinusitis: Relationships to disease phenotypes, pathogenesis, clinical findings, and treatment approaches. Allergy. 2022;77(3):812-826.
4 De Corso E, et al. How to manage recurrences after surgery in CRSwNP patients in the biologic era: a narrative review. Acta Otorhinolaryngol Ital. 2023;43(Suppl. 1):S3-S13.
5 Chen S, et al. Systematic literature review of the epidemiology and clinical burden of chronic rhinosinusitis with nasal polyposis. Curr Med Res Opin. 2020;36(11):1897-1911.
6 ClinicalTrials.gov. Efficacy and Safety of Depemokimab (GSK3511294) in Participants With Chronic Rhinosinusitis With Nasal Polyps (ANCHOR-1). Available at: https://clinicaltrials.gov/study/NCT05274750. Accessed February 2025.
7 ClinicalTrials.gov. Efficacy and Safety of Depemokimab (GSK3511294) in Participants With Chronic Rhinosinusitis With Nasal Polyps (ANCHOR-2) Available at: https://clinicaltrials.gov/study/NCT05281523. Accessed February 2025.
8 Bachert C, et al. EUFOREA expert board meeting on uncontrolled severe chronic rhinosinusitis with nasal polyps (CRSwNP) and biologics: Definitions and management. J Allergy Clin Immunol. 2021;147(1):29-36.
9 Global Initiative for Asthma (GINA). Global strategy for asthma management and prevention. 2021 main report. https://ginasthma.org/gina-reports/. Accessed February 2025.
10 Bachert C, et al. Burden of Disease in Chronic Rhinosinusitis with Nasal Polyps. J Asthma Allergy. 2021;b 11;14:127-134. doi: 10.2147/JAA.S290424. PMID: 33603409; PMCID: PMC7886239.
11 ClinicalTrials.gov. An Open-Label Extension Study of GSK3511294 (Depemokimab) in Participants Who Were Previously Enrolled in 206713 (NCT04719832) or 213744 (NCT04718103) (AGILE). Available at: https://clinicaltrials.gov/study/NCT05243680. Accessed February 2025.
12 ClinicalTrials.gov. A Study of GSK3511294 (Depemokimab) Compared With Mepolizumab or Benralizumab in Participants With Severe Asthma With an Eosinophilic Phenotype (NIMBLE). Available at: https://clinicaltrials.gov/study/NCT04718389. Accessed February 2025.
13 ClinicalTrials.gov. Efficacy and Safety of Depemokimab Compared With Mepolizumab in Adults With Relapsing or Refractory Eosinophilic Granulomatosis With Polyangiitis (EGPA). Available at: https://clinicaltrials.gov/study/NCT05263934. Accessed February 2025.