GSKのデペモキマブ、2型炎症を伴う喘息および鼻茸を伴う慢性鼻副鼻腔炎の承認申請を米国食品医薬品局が受理

  • 承認された場合、デペモキマブは本適応において、6カ月(26週)に1回投与となる初めての長時間作用型の生物学的製剤となる可能性

  • 本申請は、SWIFT試験とANCHOR試験の良好な結果に基づく

  • SWIFT-1およびSWIFT-2試験において、デペモキマブは追加療法として重症喘息の増悪を減少

  • ANCHOR-1およびANCHOR-2試験において、デペモキマブはプラセボと比較し、鼻茸を伴う慢性鼻副鼻腔炎における鼻茸の大きさの縮小や鼻閉の改善を示した

 


この資料は、英国GSK plcが2025年3月3日に発表したプレスリリースの日本語抄訳であり、報道関係者各位の利便性のために提供するものです。この資料の正式言語は英語であり、その内容およびその解釈については英語が優先されます。詳細は https://www.gsk.comをご参照ください。


 

GSK(本社:英国)は、デペモキマブの2つの適応症に対する生物学的製剤承認申請(Biologics License Application:BLA)を米国食品医薬品局(FDA)が受理したことを発表しました。本申請は、中用量から高用量の吸入コルチコステロイド(ICS)と他の喘息コントローラーを使用している成人および12歳以上の小児における好酸球性を特徴とする2型炎症の喘息の追加維持療法、およびコントロール不十分な鼻茸を伴う慢性鼻副鼻腔炎の成人における追加維持療法です。米国FDAは、処方薬ユーザーフィー法(Prescription Drug User Fee Act:PDUFA)による審査終了予定日を2025年12月16日としました。

シニアバイスプレジデントで呼吸器・免疫領域のR&Dグローバルヘッドのカイヴァン・カヴァンディ(Kaivan Khavandi)は、次のように述べています。
「今回の2つの適応に対する同時の承認申請は、喘息患者さんおよび鼻茸を伴う慢性鼻副鼻腔炎患者さんや医療システムの負担軽減に寄与する上で、デペモキマブに対するわたしたちの自信を示しています。SWIFT試験とANCHOR試験は、デペモキマブの年2回投与によって、2型炎症の主な因子であるIL-5を持続的に抑制する可能性を裏付けています。」

デペモキマブは、インターロイキン-5(interleukin-5、以下IL-5)を標的とするモノクローナル抗体であり、第III相試験で評価されたIL-5を標的とする初の長時間作用型の生物学的製剤です1-3。デペモキマブは、半減期が長く、IL-5に対する高い結合親和性と効力により、SWIFT試験およびANCHOR試験において、6カ月(26週)の投与間隔で検討されました1-3。これらの試験において主要評価項目を達成し、デペモキマブは2型炎症を伴う喘息患者さんおよび鼻茸を伴う慢性鼻副鼻腔炎患者さんの主要な疾患要因を持続的に抑制し、年2回(26週ごと)の投与間隔で主要な臨床結果を達成できることが示されました1-3。他の疾患で研究で示されているように、投与間隔を長くすることで、患者さんのアドヒアランスなど、最適な治療への障壁を克服できる可能性が示されています4

IL-5は、2型炎症において重要なサイトカイン(タンパク質)であることが知られています1,5,6。血中好酸球数を特徴とする2型炎症は、多くの病態の根本的な要因となっています。この2型炎症は、治療が困難な喘息患者さんの多くに存在し、疾患および症状の悪化や入院と関連しています5-7。また、2型炎症の所見は鼻茸を伴う慢性鼻副鼻腔炎患者さんの最大80%に認められ、重症度や症状と関連しています8-12

米国では、現在約2,500万人以上が喘息に罹患しており、そのうち40%が前年に少なくとも1回の喘息発作を経験したと報告されています13,14。これは、医療資源や患者さんの生活において、この疾患が大きな負担になることを示しています。毎年、喘息は約9.5万件の入院と約90万件の救急受診を引き起こしており、私たちは、喘息や鼻茸を伴う慢性鼻副鼻腔炎のような呼吸器疾患の患者さんや医療システムに与える負担を軽減するために尽力しています14

米国では、人口の1.1%が慢性鼻副鼻腔炎を罹患しており、そのうち最大20%が鼻茸を伴っています8。鼻茸を伴う慢性鼻副鼻腔炎の患者さんは、鼻閉、嗅覚消失、顔面痛、睡眠障害、感染症、鼻汁などの症状がみられ、これらは精神的および身体的健康に影響を及ぼす可能性があります8-11。これらの症状により、鼻茸を伴う慢性鼻副鼻腔炎が全体的な生活の質に与える影響は、COPD、喘息、糖尿病などの他の慢性疾患と同等であると報告されています9

現在、デペモキマブは、世界のどの国・地域においても承認されていません。

デペモキマブ開発プログラムについて
喘息の第III相プログラムは、重症喘息患者さんを対象としたSWIFT-1試験、SWIFT-2試験、また非盲検継続投与試験であるAGILE試験で構成されています1,15。加えて、メポリズマブまたはベンラリズマブで治療中の重症喘息患者さんを対象にデペモキマブに切り替えたときの有効性および安全性を評価するNIMBLE試験が進行中です16

鼻茸を伴う慢性鼻副鼻腔炎の第III相プログラムには、ANCHOR-1試験とANCHOR-2試験の2つの試験が含まれています2,3

現在、デペモキマブは好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(eosinophilic granulomatosis with polyangiitis:EGPA)患者さんを対象としたOCEAN試験17や好酸球増多症候群(hypereosinophilic syndrome:HES)患者さんを対象としたDESTINY試験18など、他のIL-5を介する疾患を適応として第III相試験で評価・検討されています。

SWIFT-1試験、SWIFT-2試験について
SWIFT-1試験およびSWIFT-2試験はいずれも、52週間の無作為化、二重盲検、プラセボ対照、並行群間比較、多施設共同第III相試験です1。これらの試験では、それぞれ382例および380例の血中好酸球数を特徴とする2型炎症を有する成人および12歳以上の小児の重症喘息患者さんをデペモキマブ群またはプラセボ群それぞれに無作為に割り付け、中~高用量の吸入ステロイド薬と1種類以上の長期管理薬の標準治療に併用投与し、追加療法として用いたデペモキマブの有効性と安全性を評価しました1。各試験の解析対象集団(Full Analysis Set:FAS)の例数は以下のとおりです。SWIFT-1試験:デペモキマブ群250例、プラセボ群132例、SWIFT-2試験:デペモキマブ群252例、プラセボ群128例1

本試験の結果はNew England Journal of Medicine誌に掲載されています1

ANCHOR-1試験、ANCHOR-2試験について
ANCHOR-1試験とANCHOR-2試験は同一の試験デザインで、いずれも同じ主要評価項目と副次的評価項目を用い、鼻茸を伴う慢性鼻副鼻腔炎の成人患者さんにおける追加療法としてのデペモキマブの有効性と安全性をプラセボと比較評価しました2,3。いずれも、52週間の無作為化、二重盲検、並行群間比較、プラセボ対照、多施設共同試験として実施しました2,3。各試験の解析対象集団(FAS)の例数は以下のとおりです。ANCHOR-1試験:デペモキマブ群143例、プラセボ群128例、ANCHOR-2試験:デペモキマブ群129例、プラセボ群128例。

両試験ともに、52週時の内視鏡検査における鼻茸スコア合計のベースラインからの変化量と、49週から52週時の鼻閉の言語式評価スケール(verbal response scale:VRS)症状スコアの平均値のベースラインからの変化量の2つの主要評価項目を達成しました。ANCHOR-1試験とANCHOR-2試験の治験薬投与下で発現した有害事象の全体的な発現割合および重症度は、デペモキマブ群とプラセボ群で同程度でした。

本試験の結果は、2025年3月1日にサンディエゴで開催された米国アレルギー・喘息・免疫学会(AAAAI)および世界アレルギー機構(WAO)の合同会議で発表され、The Lancetに掲載されました19

重症喘息、鼻茸を伴う慢性鼻副鼻腔炎、2型炎症について
喘息は世界で2億6千万人以上の人々に影響を及ぼしており、そのうち重症喘息の患者さんは高用量の吸入ステロイド薬に加え長期管理薬(および/または全身性ステロイドの投与)による治療を受けているにもかかわらず、さまざまな症状や増悪を繰り返しています5,20。重症喘息の患者さんは、増悪により救急外来への受診や入院が増える場合があり、大きな経済的負担になるとともに、医療システムにも負担をもたらしています5,21

鼻茸を伴う慢性鼻副鼻腔炎は、鼻粘膜の炎症により、鼻茸という軟部組織の増殖が生じる病態です8,9。鼻茸を伴う慢性鼻副鼻腔炎の患者さんでは、鼻閉、嗅覚消失、顔面痛、睡眠障害、感染症、鼻汁などの症状がみられ、これらは精神的および身体的健康に影響を及ぼす可能性があります8-11

IL-5は好酸球の増殖活性と生存に関与することに加え、IL-5は好酸球以外の細胞にも影響を与え、炎症への寄与および、肺のリモデリングや病態進行につながる可能性が示されています5,6,22-26。呼吸器疾患における個々の細胞の役割や臨床上の影響について、さらなる研究が行われています。2型炎症は、さまざまな免疫介在性疾患を引き起こすといわれており、IL-5は2型炎症の主要なサイトカイン(タンパク質)です4,5。好酸球(白血球の一種、血中好酸球数は、簡単な血液検査によって測定が可能)は、重症喘息や鼻茸を伴う慢性鼻副鼻腔炎における2型炎症の存在を検出できます5,10

呼吸器領域におけるGSKの取り組み
GSKは、何十年にもわたる呼吸器領域の先進的な取り組みを基盤とし、より意欲的な治療目標を達成し、次世代の標準治療を開発し、何億人もの呼吸器疾患の患者さんのために将来の呼吸器疾患治療のあり方を変えていきます。業界をリードする呼吸器疾患治療薬のポートフォリオとワクチン、生物学的製剤、吸入薬のパイプラインを有するGSKは、あらゆる種類の喘息やCOPDに加え、難治性の慢性咳嗽や間質性肺疾患を伴う全身性強皮症のような希少疾患とともに生きる患者さんの転帰と生活を改善することに注力しています。GSKは、基礎疾患の機能不全を改善し、疾患の進行を予防するために最新の科学技術を活用しています。

グラクソ・スミスクライン(GSK)について
GSKは、サイエンス、テクノロジー、人財を結集し、力を合わせて病に先手を打つことを存在意義とするバイオ医薬品のグローバルリーダーです。詳細情報はhttps://jp.gsk.comをご参照ください。

 


1 Jackson DJ, et al. Six Monthly Depemokimab in Severe Asthma With an Eosinophilic Phenotype. NEJM. Published on September 9 at NEJM.org.
2 ClinicalTrials.gov. Efficacy and Safety of Depemokimab (GSK3511294) in Participants With Chronic Rhinosinusitis With Nasal Polyps (ANCHOR-1) Available at: https://clinicaltrials.gov/study/NCT05274750. Accessed February 2025.
3 ClinicalTrials.gov. Efficacy and Safety of Depemokimab (GSK3511294) in Participants With Chronic Rhinosinusitis With Nasal Polyps (ANCHOR-2) Available at: https://clinicaltrials.gov/study/NCT05281523. Accessed February 2025.
4 Scarsi KK, Swindells S. The Promise of Improved Adherence With Long-Acting Antiretroviral Therapy: What Are the Data? Journal of the International Association of Providers of AIDS Care (JIAPAC). 2021;20.
5 Global Initiative for Asthma. Global Strategy for Asthma Management and Prevention,2024. Updated May 2024. Available at: https://ginasthma.org/. Accessed February 2025.
6 Heaney L, et al. Eosinophilic and Noneosinophilic Asthma: An Expert Consensus Framework to Characterize Phenotypes in a Global Real-Life Severe Asthma Cohort. Chest. 2021;160(3):814-830.
7 Principe S, et al. Severe asthma: Targeting the IL-5 pathway. Clin Exp Allergy. 2021 Aug;51(8):992-1005
8 Laidlaw TM, et al. Chronic Rhinosinusitis with Nasal Polyps and Asthma. J. Allergy Clin. Immunol. 2001;9(3):1133-1141.
9 Bachert C, et al. Burden of Disease in Chronic Rhinosinusitis with Nasal Polyps. J Asthma Allergy. 2021;b 11;14:127-134.
10 De Corso E, et al. How to manage recurrences after surgery in CRSwNP patients in the biologic era: a narrative review. Acta Otorhinolaryngol Ital. 2023;43(Suppl. 1):S3-S13.
11 Chen S, et al. Systematic literature review of the epidemiology and clinical burden of chronic rhinosinusitis with nasal polyposis. Curr Med Res Opin. 2020;36(11):1897-1911.
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14 American Lung Association. Asthma Trends and Burden. Available at: https://www.lung.org/research/trends-in-lung-disease/asthma-trends-brief/trends-and-burden. Accessed February 2025.
15 ClinicalTrials.gov. An Open-Label Extension Study of GSK3511294 (Depemokimab) in Participants Who Were Previously Enrolled in 206713 (NCT04719832) or 213744 (NCT04718103) (AGILE). Available at: https://clinicaltrials.gov/study/NCT05243680. Accessed February 2025.
16 ClinicalTrials.gov. A Study of GSK3511294 (Depemokimab) Compared With Mepolizumab or Benralizumab in Participants With Severe Asthma With an Eosinophilic Phenotype (NIMBLE). Available at: https://clinicaltrials.gov/study/NCT04718389. Accessed February 2025.
17 ClinicalTrials.gov. Efficacy and Safety of Depemokimab Compared With Mepolizumab in Adults With Relapsing or Refractory Eosinophilic Granulomatosis With Polyangiitis (EGPA) Available at: https://clinicaltrials.gov/study/NCT05263934. Accessed February 2025.
18 ClinicalTrials.gov. Depemokimab in Participants With Hypereosinophilic Syndrome, Efficacy, and Safety Trial (DESTINY) Available at: https://clinicaltrials.gov/study/NCT05334368. Accessed February 2025.
19 Gevaert P, et al. Efficacy and safety of twice per year depemokimab in chronic rhinosinusitis with nasal polyps (ANCHOR-1 and ANCHOR-2): phase III, randomised, double-blind, parallel trials. The Lancet. Published on February 28 at thelancet.com.
20 World Health Organisation. Asthma Key Facts. Available at: https://www.who.int/news-room/fact-sheets/detail/asthma. Accessed February 2025.
21 Israel, E, et al. Severe and Difficult-to-Treat Asthma in Adults. N Engl J Med 2017;377:965-76.
22 Buchheit KM, et al. Mepolizumab targets multiple immune cells in aspirin-exacerbated respiratory disease. J Allergy Clin Immunol. 2021;148(2):574-584.
23 Barretto KT, et al. Human airway epithelial cells express a functional IL-5 receptor. Allergy. 2020;75(8):2127-2130.
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25 Siddiqui S, et al. Eosinophils and tissue remodeling: Relevance to airway disease. J Allergy Clin Immunol. 2023;152(4):841-857.
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