GSK、デペモキマブにおける重症喘息および鼻茸を伴う慢性鼻副鼻腔炎の2つの適応を日本で承認申請

  • 承認された場合、デペモキマブは本適応において、6カ月(26週)に1回投与となる初めての長時間作用型の生物学的製剤となる可能性

  • 本申請は、SWIFT試験とANCHOR試験の良好な結果に基づく

  • SWIFT-1およびSWIFT-2試験において、デペモキマブは追加療法として重症喘息の増悪を減少

  • ANCHOR-1およびANCHOR-2試験において、デペモキマブはプラセボと比較し、鼻茸を伴う慢性鼻副鼻腔炎における鼻茸の大きさの縮小や鼻閉の改善を示した

グラクソ・スミスクライン株式会社(本社:東京都港区、代表取締役社長:ポール・リレット、以下GSK)は、デペモキマブ(遺伝子組換え)(以下、デペモキマブ)における以下2つの適応について厚生労働省に医薬品製造販売承認申請したことをお知らせします。

  • 気管支喘息(既存治療によっても喘息症状をコントロールできない重症又は難治の患者に限る)
  • 鼻茸を伴う慢性鼻副鼻腔炎(既存治療で効果不十分な患者に限る)

シニアバイスプレジデントで呼吸器・免疫領域のR&Dグローバルヘッドのカイヴァン・カヴァンディ(Kaivan Khavandi)は、次のように述べています。
「今回の2つの適応に対する同時の承認申請は、喘息患者さんおよび鼻茸を伴う慢性鼻副鼻腔炎患者さんや医療システムの負担軽減に寄与する上で、デペモキマブに対するわたしたちの自信を示しています。SWIFT試験とANCHOR試験は、デペモキマブの年2回投与によって、2型炎症の主な因子であるIL-5を持続的に抑制する可能性を裏付けています。」

デペモキマブは、インターロイキン-5(interleukin-5、以下IL-5)を標的とするモノクローナル抗体であり、第III相試験で評価されたIL-5を標的とする初の長時間作用型の生物学的製剤です1-3。デペモキマブは、半減期が長く、IL-5に対する高い結合親和性と効力により、SWIFT試験およびANCHOR試験において、6カ月(26週)の投与間隔で検討されました1-3。これらの試験において、デペモキマブは喘息患者さんおよび鼻茸を伴う慢性鼻副鼻腔炎患者さんの主要な疾患要因を持続的に抑制し、年2回(26週ごと)の投与間隔で主要な臨床結果を達成できることが示されました1-3。投与間隔を長くすることで、患者さんのアドヒアランスなど、最適な治療への障壁を克服できる可能性が示されています4

IL-5は、2型炎症において重要なサイトカイン(タンパク質)であることが知られています1,5,6。血中好酸球数を特徴とする2型炎症は、多くの病態の根本的な要因となっています5。この2型炎症は、治療が困難な喘息患者さんの多くに存在し、疾患および症状の悪化や入院と関連しています5,7。また、2型炎症の所見は鼻茸を伴う慢性鼻副鼻腔炎患者さんの最大80%に認められ、重症度や症状と関連しています8,9

日本では、喘息患者さんの約8%が重症であるといわれています10。こうした患者さんでは、日常の症状が重く、医療上および経済上の負担が高くなっています11。鼻茸を伴う慢性鼻副鼻腔炎は、一般人口の最大4%が罹患している慢性疾患であり、そのうちの40%では疾患がコントロール不良となっています8,12,13。日本には約200万人の慢性鼻副鼻腔炎の患者さんがいると推定され、そのうち約20万人が鼻茸のため鼻手術が必要であるとされています14

現在、デペモキマブは、世界のどの国・地域においても承認されていません。欧州医薬品庁(EMA)中国では、デペモキマブの承認申請が受理されています。

デペモキマブ開発プログラムについて
喘息の第III相プログラムは、重症喘息患者さんを対象としたSWIFT-1試験、SWIFT-2試験、また非盲検継続投与試験であるAGILE試験で構成されています1,15。加えて、メポリズマブまたはベンラリズマブで治療中の重症喘息患者さんを対象にデペモキマブに切り替えたときの有効性および安全性を評価するNIMBLE試験が進行中です16

鼻茸を伴う慢性鼻副鼻腔炎の第III相プログラムには、ANCHOR-1試験とANCHOR-2試験の2つの試験が含まれています2,3

現在、デペモキマブは好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(eosinophilic granulomatosis with polyangiitis:EGPA)患者さんを対象としたOCEAN試験17や好酸球増多症候群(hypereosinophilic syndrome:HES)患者さんを対象としたDESTINY試験18など、他のIL-5を介する疾患を適応として第III相試験で評価・検討されています。

SWIFT-1試験、SWIFT-2試験について
SWIFT-1試験およびSWIFT-2試験はいずれも、52週間の無作為化、二重盲検、プラセボ対照、並行群間比較、多施設共同第III相試験です1。これらの試験では、それぞれ382例および380例の血中好酸球数を特徴とする2型炎症を有する成人および12歳以上の小児の重症喘息患者さんをデペモキマブ群またはプラセボ群それぞれに無作為に割り付け、中~高用量の吸入ステロイド薬と1種類以上の長期管理薬の標準治療に併用投与し、追加療法として用いたデペモキマブの有効性と安全性を評価しました1。各試験の解析対象集団(Full Analysis Set:FAS)の例数は以下のとおりです。SWIFT-1試験:デペモキマブ群250例、プラセボ群132例、SWIFT-2試験:デペモキマブ群252例、プラセボ群128例1

本試験の結果はNew England Journal of Medicine誌に掲載されています。

ANCHOR-1試験、ANCHOR-2試験について
ANCHOR-1試験とANCHOR-2試験は同一の試験デザインで、いずれも同じ主要評価項目と副次的評価項目を用い、鼻茸を伴う慢性鼻副鼻腔炎の成人患者さんにおける追加療法としてのデペモキマブの有効性と安全性をプラセボと比較評価しました2,3。いずれも、52週間の無作為化、二重盲検、並行群間比較、プラセボ対照、多施設共同試験として実施しました。各試験の解析対象集団(FAS)の例数は以下のとおりです。ANCHOR-1試験:デペモキマブ群143例、プラセボ群128例、ANCHOR-2試験:デペモキマブ群129例、プラセボ群128例。

両試験ともに、52週時の内視鏡検査における鼻茸スコア合計のベースラインからの変化量と、49週から52週時の鼻閉の言語式評価スケール(verbal response scale:VRS)症状スコアの平均値のベースラインからの変化量の2つの主要評価項目を達成しました。ANCHOR-1試験とANCHOR-2試験の治験薬投与下で発現した有害事象の全体的な発現割合および重症度は、デペモキマブ群とプラセボ群で同程度でした。

ANCHOR-1試験およびANCHOR-2試験の詳しい結果は、今後学会で発表予定です。

重症喘息、鼻茸を伴う慢性鼻副鼻腔炎、2型炎症について
喘息は世界で2億6千万人以上の人々に影響を及ぼしており、そのうち重症喘息の患者さんは高用量の吸入ステロイド薬に加え長期管理薬(および/または全身性ステロイドの投与)による治療を受けているにもかかわらず、さまざまな症状や増悪を繰り返しています4,11,19。重症喘息の患者さんは、増悪により救急外来への受診や入院が増える場合があり、大きな経済的負担になるとともに、医療システムにも負担をもたらしています5,11

鼻茸を伴う慢性鼻副鼻腔炎は、鼻粘膜の炎症により、鼻茸という軟部組織の増殖が生じる病態です8,12。鼻茸を伴う慢性鼻副鼻腔炎の患者さんでは、鼻閉、嗅覚消失、顔面痛、睡眠障害、感染症、鼻汁などの症状がみられ、これらは精神的および身体的健康に影響を及ぼす可能性があります8,12

IL-5は好酸球の増殖活性と生存に関与することに加え、IL-5は好酸球以外の細胞にも影響を与え、炎症への寄与および、肺のリモデリングや病態進行につながる可能性が示されています5,6,20-24。呼吸器疾患における個々の細胞の役割や臨床上の影響について、さらなる研究が行われています。2型炎症は、さまざまな免疫介在性疾患を引き起こすといわれており、IL-5は2型炎症の主要なサイトカイン(タンパク質)です5,6。好酸球(白血球の一種、血中好酸球数は、簡単な血液検査によって測定が可能)は、重症喘息や鼻茸を伴う慢性鼻副鼻腔炎における2型炎症の存在を検出できます5,8,9

呼吸器領域におけるGSKの取り組み
GSKは、何十年にもわたる呼吸器領域の先進的な取り組みを基盤とし、より意欲的な治療目標を達成し、次世代の標準治療を開発し、何億人もの呼吸器疾患の患者さんのために将来の呼吸器疾患治療のあり方を変えていきます。業界をリードする呼吸器治療薬のポートフォリオとワクチン、生物学的製剤、吸入薬のパイプラインを有するGSKは、あらゆる種類の喘息やCOPDに加え、難治性の慢性咳嗽や間質性肺疾患を伴う全身性強皮症のような希少疾患とともに生きる患者さんの転帰と生活を改善することに注力しています。GSKは、基礎疾患の機能不全を改善し、疾患の進行を予防するために最新の科学技術を活用しています。

グラクソ・スミスクライン(GSK)について
GSKは、サイエンス、テクノロジー、人財を結集し、力を合わせて病に先手を打つことを存在意義とするバイオ医薬品のグローバルリーダーです。GSKは、免疫学、遺伝学、先端テクノロジーを駆使し、感染症、免疫・呼吸器疾患、オンコロジーをはじめとする疾患領域の研究開発に注力しています。そして、ワクチン、スペシャリティ医薬品、ジェネラル医薬品を通じて、病気の予防と治療に貢献します。詳細情報はhttps://jp.gsk.comをご参照ください。

 


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3. ClinicalTrials.gov.Efficacy and Safety of Depemokimab (GSK3511294) in Participants With Chronic Rhinosinusitis With Nasal Polyps (ANCHOR-2) Available at: https://clinicaltrials.gov/study/NCT05281523 Accessed December 2024.
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