GSKのベピロビルセンナトリウムがB型肝炎ウイルス持続感染に対する先駆的医薬品に指定

  • B型肝炎ウイルス持続感染と共に生きる患者さんの機能的治癒(functional cure)の達成において本指定は重要な一歩

  • 今年上半期の米国FDAによるB型肝炎ウイルス持続感染での迅速審査の指定に続くもの

グラクソ・スミスクライン株式会社(本社:東京都港区、代表取締役社長:ポール・リレット、以下GSK)は、B型肝炎ウイルス(Hepatitis B virus:HBV)持続感染の治療薬として開発中のアンチセンスオリゴヌクレオチド(antisense oligonucleotide: ASO)のベピロビルセンナトリウム(Bepirovirsen Sodium、以下ベピロビルセン)について、厚生労働省より先駆的医薬品の指定を受けたことをお知らせします。

先駆的医薬品指定制度は、「治療薬の画期性」、「対象疾患の重篤性」、「対象疾患に係る極めて高い有効性」に加え、「世界に先駆けて日本で早期開発・申請する意思・体制」が指定要件とされています。本制度による迅速な審査プロセスは、重篤な疾患の治療や満たされていない医療ニーズに対応し、患者さんが画期的な医薬品へより早期にアクセスすることを可能にします。

本指定は、HBV持続感染の患者さんを対象に、ベピロビルセンの有効性、安全性、効果の持続性を評価した第IIb相試験(B-Clear試験とB-Sure試験)の結果1,2を裏付けとする先駆的医薬品指定申請に基づきます。現在、検証的な第III相プログラム(B-Well)が進行中です。ベピロビルセンに関する今回の指定は、今年2月に米国食品医薬品局(FDA)より取得した迅速審査指定(ファストトラック)に続くものになります。

HBV持続感染の患者さんは世界で2億5,700万人、日本では約100万人とされており3、現在の治療選択肢では機能的治癒率がペグインターフェロン(pegylated interferon:PegIFN)で2~8%未満、ヌクレオシド/ヌクレオチドアナログ(nucleoside/nucleotide analogues:NA)の経口治療薬で1%未満です4。機能的治癒(functional cure)とは、HBV DNAとウイルスタンパク質であるB型肝炎表面抗原(hepatitis B surface antigen:HBsAg)が、血液中では検出されないほど低いレベルになり、薬物療法をせずに患者さん自身の免疫系によって制御できるようになることです。現行の治療法ではウイルスを抑制するのみで、機能的治癒に不可欠なHBsAgの直接低下は実現していません。

ベピロビルセンは、経口NAと併用することで臨床的に意義のある機能的治癒効果を達成する可能性を示した唯一の薬剤であり、現在第III相試験段階にあります。また、ベピロビルセンは、将来的により幅広いHBV持続感染患者さんに機能的治癒をもたらす治療のバックボーン薬剤としての可能性について研究が進められています。

GSK代表取締役社長のポール・リレットは、次のように述べています。
「このたび、B型肝炎ウイルス持続感染の治療薬ベピロビルセンが先駆的医薬品として指定されたことを嬉しく思います。B型肝炎ウイルス持続感染は、世界的な健康課題であり、肝硬変や肝がんなどの重篤な病態に進行する可能性があります。日本には約100万人の患者さんがいるとされ、新たな治療法を待ち望む患者さんのために、ベピロビルセンを一日でも早くお届けできるよう努めてまいります。」

第IIb相試験(B-Clear試験およびB-Sure試験)について
B-Clear試験では、NA治療を受けている患者さんとNA治療を受けていない患者さんからなる2つの並行コホートで検討を行いました(https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa2210027)。さらにB-Sure試験では、NAの投与中止に関する基準を設け、すべての薬剤を問題なく中止できたうえでB型肝炎表面抗原(hepatitis B surface antigen:HBsAg)およびHBV DNAが血清中に認められない患者さんで機能的治癒の可能性を評価するため、B-Clear試験に参加した患者さんをさらに33カ月追跡することで、より長期的な有効性および効果の持続性が検討されています。

第III相試験(B-Well1試験およびB-Well2試験)について
ベースライン時にB型肝炎ウイルス表面抗原(hepatitis B virus surface antigen:HBsAg)が3000 IU/mL以下の核酸アナログ(nucleos[t]ide analogue:NA)投与を受けているHBV持続感染患者さんを対象として、ベピロビルセン投与による有効性、安全性、薬物動態プロファイル、HBsAg抑制の持続性を評価する多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照第III相試験として、B-Well 1試験およびB-Well 2試験の2試験を実施しています。試験の主要評価項目は、ベースラインのHBsAgが3000 IU/mL以下で機能的治癒を達成した患者さん数としています(https://clinicaltrials.gov/study/NCT05630807https://clinicaltrials.gov/study/NCT05630820)。

B型肝炎ウイルス(Hepatitis B virus:HBV)持続感染について
B型肝炎は、B型肝炎ウイルスによって引き起こされる肝臓のウイルス感染であり、急性肝疾患および慢性肝疾患の両方が生じます5。HBV持続感染は、感染したHBVが体内から排除されず長期間にわたり肝臓内にとどまっていることで、一部は慢性肝炎を発症します5。HBV持続感染は世界的な健康課題であり、患者さん数は世界で2億5,700万人とされますが3、診断を受けているのはそのうち13%、治療を受けているのは3%にとどまっています6。HBV持続感染は、肝硬変や肝がんなどのより重篤な病態に進行する可能性があり、2022年には110万人がこの感染症により死亡しています6

ベピロビルセン(bepirovirsen、GSK3228836)について
ベピロビルセンは、3つの作用を持つ治験段階のアンチセンスオリゴヌクレオチド(antisense oligonucleotide:ASO)で、現在、HBV持続感染の治療を適応としてB-Well第III相臨床試験プログラムのB-Well試験において評価されています。また、慢性疾患を引き起こす可能性のあるB型肝炎ウイルスの遺伝子構成要素(RNA)を認識して破壊する働きがあり、これにより免疫による制御を回復できると考えられています。さらに、体内でのウイルスDNAの複製を阻害し、血中のB型肝炎表面抗原(hepatitis B surface antigen:HBsAg)の量を抑制し、免疫系を刺激することで、持続的な効果の可能性を高めます。

Ionis Pharmaceuticals社によって創薬されたベピロビルセン(以前の呼称:ISIS 505358またはIONIS-HBVRX)を共同開発してきました。ベピロビルセンは、ASO HBVプログラムの資産の一環として2019年8月にIonis Pharmaceuticals社から導入したものになります。

GSK(グラクソ・スミスクライン)について
GSKは、サイエンス、テクノロジー、人財を結集し、力を合わせて病に先手を打つことを存在意義とするバイオ医薬品のグローバルリーダーです。GSKは、免疫学、遺伝学、先端テクノロジーを駆使し、感染症、免疫・呼吸器疾患、オンコロジーをはじめとする疾患領域の研究開発に注力しています。そして、ワクチン、スペシャリティ医薬品、ジェネラル医薬品を通じて、病気の予防と治療に貢献します。詳細情報はhttps://jp.gsk.comをご参照ください。

 


1 Yuen M-F, Lim S-G, Plesniak R, et al. Efficacy and safety of bepirovirsen in chronic hepatitis B infection. N Engl J Med. 2022;387(21):1957–68.
2 Gadano et al. EASL 2023 Abstract 4132
3 Polaris Observatory Collaborators.Lancet Gastroenterol Hepatol 2023;8(10):879-907
4 Slaets, L. et al. Systematic review with meta-analysis: hepatitis B surface antigen decline and seroclearance in chronic hepatitis B patients on nucleos(t)ide analogues or pegylated interferon therapy GastroHep 2, 106-116 (2020)
5 World Health Organisation.Hepatitis B Key Facts, January 2023
6 World Health Organization.Global Hepatitis Report 2024 WHO (2024).