GSKのモメロチニブが欧州委員会より承認を取得
この資料は、英国GSK plcが2024年1月29日に発表したプレスリリースの日本語抄訳であり、報道関係者各位の利便性のために提供するものです。この資料の正式言語は英語であり、その内容およびその解釈については英語が優先されます。
詳細はhttps://www.gsk.comをご参照ください。
<2024年1月29日 英国ロンドン発>
GSKのモメロチニブが欧州委員会より承認を取得
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中等度から重度の貧血を伴う成人の骨髄線維症患者さんを対象とした脾腫(脾臓の肥大)または全身症状を改善する治療薬、モメロチニブがEUで初めて承認
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骨髄線維症患者さんの多くは疾患経過中に貧血を発症すると推定されており1,2,3,4、モメロチニブが高いアンメットニーズに対応する可能性
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新規診断の患者さんおよび既存の標準治療歴を有する患者さん両方に適応
GSK(本社:英国)は、1日1回経口投与のヤヌスキナーゼ(JAK)1、JAK2およびアクチビンA受容体1型(ACVR1)阻害薬モメロチニブ(欧州での製品名:Omjjara)について、欧州委員会*より販売承認を取得したことをお知らせします。モメロチニブは、JAK阻害薬による治療歴のない、またはルキソリチニブによる治療歴のある中等度から重度の貧血を伴う骨髄線維症(原発性あるいは真性多血症や本態性血小板血症に続発)の成人患者さんを対象とした脾腫(脾臓の肥大)または全身症状を改善する治療薬として、EUで初めて承認されました。
GSKのオンコロジー・グローバル・プロダクト・ストラテジー部門シニアプレジデントのニナ・モージャス(Nina Mojas)は次のように述べています。
「骨髄線維症の患者さんは、脾腫、倦怠感、寝汗、骨の痛みの症状により大きな負担を強いられています。これまで、貧血を伴う患者さんのこれらの症状の治療に適応のある選択肢はありませんでした。モメロチニブの承認は、欧州に独自の作用機序を有する新しい治療選択肢をもたらしました。」
EUでは骨髄線維症が、10,000人に1人の割合で発症すると推定されています5,6。患者さんの約40%で、診断時に中等度から重度の貧血が認められ、ほぼすべての患者さんが疾患経過中に貧血を発症すると推定されています1,2,3,4。貧血を伴う骨髄線維症患者さんは、輸血等の支持療法を必要とし、30%以上の患者さんが貧血のため治療を中止しています7。輸血依存の患者さんの予後は不良であり、生存期間が短縮されることが示されています8,9,10,11,12,13,14,15,16。
イタリアのボローニャ大学病院IRCCS(学際統合物質科学研究機構)S.Orsola-Malpighiに所属するフランチェスカ・パランドリ(Francesca Palandri)医学博士は次のように述べています。
「本承認は、欧州における骨髄線維症の患者さん、特に疾患関連の負担を軽減する新たな治療選択肢を必要とする中等度から重度の患者さんにとって意義深い進歩です。骨髄線維症の主な症状に対して単剤治療が可能になることは、対象となる患者さんにとって大きな前進を意味します。」
モメロチニブの承認は、第III相のピボタル試験であるMOMENTUM試験と、第III相試験であるSIMPLIFY-1試験の貧血(ヘモグロビンが10g/dL未満)を有する成人の患者さんからなる部分集団より得られたデータに基づいています17,18。MOMENTUM試験は、JAK阻害薬の治療歴があり、全身症状および貧血を有する骨髄線維症患者さんを対象に、治療および主たる症状の軽減を目的として、モメロチニブの安全性および有効性をダナゾールと比較評価した国際多施設共同無作為化二重盲検試験です。SIMPLIFY-1試験は、JAK阻害薬による治療歴のない骨髄線維症患者さんを対象とし、モメロチニブとルキソリチニブを比較した国際多施設共同無作為化二重盲検試験です。
これらの臨床試験で認められた主な有害反応は、下痢、血小板減少、悪心、頭痛、浮動性めまい、疲労、無力症、腹痛および咳嗽でした17,18。
(*)欧州委員会は、欧州連合(EU)加盟国および欧州経済領域(EEA)参加のアイスランド、ノルウェー、リヒテンシュタイン、加えて、北アイルランドにおける医薬品の承認権限を有しています。
モメロチニブ(欧州での製品名:Omjjara)について
モメロチニブは、ヤヌスキナーゼ(JAK)1、JAK2の阻害に加え、アクチビンA受容体1型(ACVR1)阻害という3つ目の新規のシグナル伝達経路を阻害する独自の作用機序を有しています8,17,19,20。JAK1およびJAK2を阻害することで、全身症状や脾腫を改善できる可能性があり8,17,20、さらにACVR1を阻害することにより、骨髄線維症で増加する循環血液中のヘプシジンが減少し、貧血の要因を減少できる可能性があります8,17,19,20。
原発性骨髄線維症および二次性骨髄線維症(真性多血症または本態性血小板血症に続発)を含む、貧血を有する中間または高リスクの成人の骨髄線維症の治療薬として、米国食品医薬品局(FDA)がモメロチニブをOjjaaraの商標名で2023年9月に承認しました。
EUで適用されているモメロチニブの重要な情報:効能・効果
モメロチニブは、ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬による治療歴のない、またはルキソリチニブによる治療歴のある中等度から重度の貧血を伴う骨髄線維症(原発性あるいは、真性多血症や本態性血小板血症に続発)の成人患者さんの脾腫(脾臓の肥大)または全身症状の治療を適応としています。
骨髄線維症について
骨髄線維症は、JAK-STATシグナルの伝達および調節異常により、体内での正常な血球の産生が妨害されることで起こる稀な血液がんです。その臨床上の特徴は、脾腫(脾臓の肥大)、進行性の貧血、および血液細胞の産生異常と炎症性サイトカインの過剰産生による消耗性の全身症状(倦怠感、寝汗、骨の痛みなど)です21。
主要な臨床試験について
MOMENTUM試験は、JAK阻害薬の治療歴があり、症状および貧血を有する骨髄線維症患者さん(195例)を対象に、モメロチニブとダナゾールを比較した第III相国際多施設共同無作為化二重盲検試験です。骨髄線維症の主要な特徴である全身症状、輸血(貧血による)、脾腫の治療および軽減を目的として投与したモメロチニブの安全性と有効性を評価することを目的として実施されました。本試験では、主要評価項目および主要な副次評価項目をすべて達成しました。モメロチニブを投与した患者さんとダナゾールを投与した患者さんとの比較では、全身症状の改善、脾臓の縮小、輸血非依存割合において統計学的に有意な効果を示しました(総症状スコアが50%以上低下:モメロチニブ25%、ダナゾール9%、p=0.0095。脾容積が35%以上縮小:モメロチニブ22%、ダナゾール3%、p=0.0011。24週時点の前12週間に輸血を行わず、ヘモグロビン濃度がすべて8g/dL以上:モメロチニブ30%、ダナゾール20%)17。無作為化投与期間24週間の結果は、2022年の米国臨床腫瘍学会(ASCO)年次総会で発表され、その後医学誌「The Lancet」に掲載されました22,23。また、48週間のデータは、2022年12月に開催された第64回米国血液学会(ASH)年次総会・展示会で発表され、その後医学誌「The Lancet」に掲載されました24,25。
SIMPLIFY-1試験は、JAK阻害薬による治療歴のない骨髄線維症患者さん(432例)を対象とし、モメロチニブの安全性および有効性をルキソリチニブと比較した第III相多施設共同無作為化二重盲検試験です。SIMPLIFY-1試験の安全性および有効性の結果は、ベースライン時に貧血であった患者さんの部分集団(181例)に基づきます。本試験の骨髄線維症患者さんでは、脾臓縮小割合に基づくモメロチニブの治療効果が認められました(脾容積が35%以上縮小:モメロチニブ31%、ルキソリチニブ33%、p=0.026)18。
オンコロジー領域におけるGSK
GSKは、革新的な医薬品を通じて患者さんの生存期間をできるだけ長くすることに取り組んでいます。がん免疫療法および腫瘍細胞標的療法、ならびに血液悪性腫瘍、婦人科がん、その他の固形腫瘍に対する画期的な治療法の開発に注力しています。
グラクソ・スミスクライン(GSK)について
GSKは、サイエンス、テクノロジー、人財を結集し、力を合わせて病に先手を打つことを存在意義とするバイオ医薬品のグローバルリーダーです。詳細情報はhttps://jp.gsk.comをご参照ください。
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