貧血を伴う骨髄線維症患者さんを対象としたGSKの治療薬モメロチニブについて、欧州医薬品庁の医薬品委員会が承認を勧告する肯定的意見を採択

この資料は、英国GSK plcが2023年11月13日に発表したプレスリリースの日本語抄訳であり、報道関係者各位の利便性のために提供するものです。この資料の正式言語は英語であり、その内容およびその解釈については英語が優先されます。
詳細はhttps://www.gsk.comをご参照ください。

<2023年11月13日 英国ロンドン発>

貧血を伴う骨髄線維症患者さんを対象としたGSKの治療薬モメロチニブについて、欧州医薬品庁の医薬品委員会が承認を勧告する肯定的意見を採択

  • 中等度から重度の貧血を伴う骨髄線維症患者さんを対象としたEU初の治療薬となる可能性

  • EUでのモメロチニブの販売承認は2024年早期までに判断される見込み

GSK(本社:英国)は、ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬による治療歴のない、またはルキソリチニブによる治療歴のある中等度から重度の貧血を伴う骨髄線維症(原発性あるいは、真性多血症や本態性血小板血症に続発)の成人患者さんを対象とした脾腫(脾臓の肥大)または全身症状を改善する治療薬として、モメロチニブの販売承認を勧告する肯定的な意見を欧州医薬品庁(EMA)の医薬品委員会(Committee for Medicinal Products for Human Use、以下CHMP)が採択したことをお知らせします。

CHMPの承認勧告は、欧州委員会(European Commission)により販売承認が認可される前の最終段階のひとつです。承認されれば、モメロチニブは、中等度から重度の貧血を伴う新規に診断された、または治療歴を有する骨髄線維症患者さんにおける脾腫あるいは全身症状の治療を適応とする、欧州連合(EU)で唯一の薬剤となる可能性があります。

GSKのオンコロジー・グローバル・プロダクト・ストラテジー部門シニアプレジデントのニナ・モージャス(Nina Mojas)は次のように述べています。
「モメロチニブは、特に中等度から重度の貧血を有する骨髄線維症患者さんの重要なアンメットメディカルニーズに対応しうる新規の作用機序をもつ薬剤です。骨髄線維症の患者さんの多くは貧血を発症し、輸血を必要とします。その結果、治療を中止せざるを得ない患者さんが数多くいます。このたびのCHMPの肯定的意見の採択は、EUにおいて治療困難な血液がんである骨髄線維症の患者さんにモメロチニブをお届けするための重要な一歩と考えています。」

主要な試験であるMOMENTUM試験に加え、第III相試験であるSIMPLIFY-1試験の中等度から重度の貧血(ヘモグロビン10g/dL未満)を伴う成人患者さんの部分集団より得られたデータを裏付けとして、肯定的な意見がCHMPより採択されました1,2。MOMENTUM試験は、JAK阻害薬の治療歴があり、症状および貧血を有する骨髄線維症患者さんを対象に、治療および主たる症状の軽減を目的として、モメロチニブの安全性および有効性をダナゾールと比較評価した第III相国際多施設共同無作為化二重盲検試験です。またSIMPLIFY-1試験は、JAK阻害薬による治療歴のない骨髄線維症患者さんを対象として、モメロチニブの有効性および安全性をルキソリチニブと比較評価した国際多施設共同無作為化二重盲検試験です。

これらの臨床試験で認められた有害事象の多くは、下痢、血小板減少症、悪心、頭痛、浮動性めまい、倦怠感、無力症、腹痛、咳嗽でした1,2

モメロチニブはEUで承認された場合、Omjjaraという商標名で販売する予定です。今回採択されたモメロチニブに関する肯定的意見は、原発性骨髄線維症および二次性骨髄線維症(真性多血症または本態性血小板血症に続発)を含む、貧血を有する中間または高リスクの成人の骨髄線維症の治療薬として米国食品医薬品局(FDA)がモメロチニブをOjjaaraの商標名で2023年9月に承認したことに続くものです。モメロチニブは、米国以外の国では承認されていません。

モメロチニブについて
モメロチニブは、ヤヌスキナーゼ(JAK)1、JAK2の阻害に加え、アクチビンA受容体1型(ACVR1)阻害という3つ目の新規のシグナル伝達経路を阻害する独自の作用機序を有しています1,3,4,5。JAK1およびJAK2を阻害することで、全身症状や脾腫を改善できる可能性があり1,3,5、さらにACVR1を阻害することにより、骨髄線維症で増加する循環血液中のヘプシジンが減少し、貧血の要因を減少できる可能性があります1,3,4,5

骨髄線維症について
骨髄線維症は、JAK-STATシグナルの伝達および調節異常により、体内での正常な血球産生が妨害されることで起こるまれな血液がんです。その臨床上の特徴は、脾腫(脾臓の肥大)、進行性の貧血、および血液細胞の産生異常と炎症性サイトカインの過剰産生による消耗性の全身症状(倦怠感、寝汗、骨の痛みなど)です6

患者さんの約40%では、診断時に中等度から重度の貧血が認められ、ほぼすべての患者さんが貧血を発症すると推定されています7,8,9,10。貧血を伴う骨髄線維症患者さんは、輸血等の支持療法を必要とし、30%以上の患者さんが貧血のため治療を中止しています11。輸血依存の患者さんの予後は不良であり、生存期間が短縮されることが示されています3,12,13,14,15,16,17,18,19

主要な臨床試験について
MOMENTUM試験は、JAK阻害薬の治療歴があり、症状および貧血を有する骨髄線維症患者さんを対象に、モメロチニブとダナゾールを比較した第III相国際多施設共同無作為化二重盲検試験です。本試験は、骨髄線維症の主要な特徴である全身症状、輸血(貧血による)、脾腫の治療および軽減を目的として投与したモメロチニブの安全性と有効性を評価することを目的として実施されました。MOMENTUM試験では、主要評価項目および主要な副次評価項目をすべて達成しました。モメロチニブを投与した患者さんとダナゾールを投与した患者さんとの比較では、全身症状の改善、脾臓の縮小、輸血非依存割合において統計学的に有意な効果を示しました20。無作為化投与期間24週間の結果は、2022年の米国臨床腫瘍学会(ASCO)年次総会で発表され、その後医学誌「The Lancet」に掲載されました21,22。また、48週間のデータは、2022年12月に開催された第64回米国血液学会(ASH)年次総会・展示会で発表され、その後医学誌「The Lancet Haematology」に掲載されました23,24

SIMPLIFY-1試験は、JAK阻害薬による治療歴のない骨髄線維症患者さんを対象とし、モメロチニブの安全性および有効性をルキソリチニブと比較した第III相国際共同無作為化二重盲検試験です。SIMPLIFY-1試験の安全性および有効性の結果は、ベースライン時に貧血であった患者さんの部分集団に基づきます。SIMPLIFY-1試験の骨髄線維症患者さんでは、脾臓縮小割合(35%以上の縮小)に基づくモメロチニブの治療効果が認められました。

オンコロジー領域におけるGSK
GSKは、革新的な医薬品を通じて患者さんの生存期間をできるだけ長くすることに取り組んでいます。がん免疫療法および腫瘍細胞標的療法、ならびに血液悪性腫瘍、婦人科がん、その他の固形腫瘍に対する画期的な治療法の開発に注力しています。

グラクソ・スミスクライン(GSK)について
GSKは、サイエンス、テクノロジー、人財を結集し、力を合わせて病に先手を打つことを存在意義とするバイオ医薬品のグローバルリーダーです。詳細情報はhttps://jp.gsk.comをご参照ください。

 


1 Verstovsek S, et al. MOMENTUM: momelotinib vs danazol in patients with myelofibrosis previously treated with JAKi who are symptomatic and anemic. Future Oncol. 2021;17(12):1449-1458.
2 Mesa RA, Kiladjian JJ, Catalano JV, et al. SIMPLIFY-1: A Phase III Randomized Trial of Momelotinib Versus Ruxolitinib in Janus Kinase Inhibitor-Naïve Patients With Myelofibrosis. J Clin Oncol. 2017;35(34):3844-3850.
3 Chifotides, HT, Bose, P, Verstovsek, S. Momelotinib: an emerging treatment for myelofibrosis patients with anemia. J Hematol Oncol. 2022;15(7):1-18.
4 Asshoff M, et al. Momelotinib inhibits ACVR1/ALK2, decreases hepcidin production, and ameliorates anemia of chronic disease in rodents. Blood. 2017;129(13):1823-1830.
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