GSK、日本の気管支喘息患者さんの症状負荷に関する調査結果を日本呼吸器学会にて発表
- 喘息症状のコントロール不良な患者さんは、コントロール良好な患者さんと比較し、喘息の症状負荷が有意に大きく、かつ、健康関連QOLの低下および仕事や社会活動への影響も大きいことが確認された
- 喘息の症状は、患者さんに身体的・精神的な負荷を与えており、症状のコントロールと健康関連の改善に対するアンメットニーズが存在することが示された
グラクソ・スミスクライン株式会社(本社:東京都港区、代表取締役社長:ポール・リレット、以下 GSK)は、吸入ステロイド薬と長時間作用性β2刺激薬(以下、ICS/LABA)併用療法を受けている日本の気管支喘息患者さんの症状負荷と日常生活への影響を検討することを目的として実施された「気管支喘息の患者さんの症状負荷に関するインターネット調査」(定量調査)の結果を日本呼吸器学会で発表したことをお知らせします。
本研究から、アドヒアランスが良好な患者さんにおいても、一定数の患者さんが未だ喘息症状を有していること、特に、コントロール不良な患者さんの45%以上が咳、息切れ、喘鳴、喀痰(かくたん)の症状を有していることが明らかになりました。
また、咳および夜間症状(喘息のため夜眠ることができない)が、気管支喘息患者さんの生活の質(以下、QOL)に影響を与えていることも確認されました。コントロール不良の患者さんの約64%、コントロール良好(*)の患者さんでも約22%の患者さんが咳症状を有しており、コントロール不良の患者さんの約25%(コントロール良好(*)の患者さんでは約1%)が夜間症状を有していることがわかりました。
これらの結果より、既存治療では十分コントロールされていない咳をはじめとする喘息症状は、患者さんのQOLや症状、そして、労働生産性の低下にもつながることが示されました。また、ICS/LABA併用療法を受けているにも関わらずコントロール不良である喘息患者さんには、症状のコントロールと健康関連QOL(Health Related Quality of Life、以下HRQoL)の改善に対するアンメットニーズがあることも示唆されました。
気管支喘息は、咳、息切れ、気流閉塞などのさまざまな症状を呈する呼吸器系の慢性疾患で1、世界で約2億6,200万人が罹患しており2、日本では、約918,000人の患者さんが喘息の治療を受けています3。喘息症状のコントロール不良の患者さんでは症状のコントロールが必要ですが、現状、日本人患者さんにおけるHRQoLに与える喘息症状の影響を評価した研究は限られています。
帝京大学医学部内科学講座教授で、本研究のメディカルアドバイザーの長瀬洋之先生は次のように述べています。
「このたびの大規模な定量調査から、喘息症状が患者さんに対して身体的および精神的な負荷となっていることが明らかになりました。また、喘息症状をコントロールし、健康関連QOLを改善することは重要であることから、さらなる治療介入の必要性も示唆されました。今後継続して定性的な患者さんへのインタビューも行い、詳細な治療への期待について調査します。」
GSK代表取締役社長のポール・リレットは次のように述べています。
「呼吸器領域におけるリーディングカンパニーとして、治療薬の提供に加えて、気管支喘息患者さんの症状改善に向けた取り組みは、私たちGSKの重要な使命のひとつだと考えています。GSKでは呼吸器における様々な研究を通じて、より良い医療の提供に貢献したいと思います。」
また、2023年4月28日~30日に開催された日本呼吸器学会学術講演会では、上記研究結果に加えて、TRAIT研究の中間結果、AERIS-J研究の最終結果、3剤吸入療法の早期または遅延開始による臨床的・経済的アウトカムへの影響を評価したデータベース研究の結果についても発表しています。
日本の喘息患者さんの症状負荷に関するインターネット調査について
吸入ステロイド薬と長時間作用性β2刺激薬(ICS/LABA)で治療中のアドヒアランス良好な患者さんを対象に、仕事の生産性、症状負荷(咳を含む)など、健康関連QOL(Health Related Quality of Life:HRQoL)を含めた患者さんの日常生活に対する喘息の影響を、コントロール良好または不良の患者さんをサブグループとして、定量的患者調査を用いて評価すること、さらに、患者さんのHRQoLに与える喘息症状の影響を評価し、定量的患者調査から得られたデータを補完し、治療への期待を探索する目的で、定性的な患者インタビュー調査を行いました。
本研究では、ICS/LABA併用療法を行っている気管支喘息患者さんの疾病負荷と日常生活への影響を検討することを目的とした、質問票を用いたオンライン患者定量調査、および口頭での定性インタビューによるフォローアップからなります。患者アンケートは86,724人に配布され、25,405人が参加に同意し、そのうち1,347人がICS/LABAを使用している患者さんと特定され、最終的には、ICS/LABAのアドヒアランスが良好な喘息患者さん454人を解析対象としました。
(*) 喘息のコントロール状態については、喘息コントロールテスト(ACT)を用いACTのスコアが20点以上はコントロール良好、20点未満はコントロール不良と評価されます。
気管支喘息について
気管支喘息は、咳、息切れ、気流閉塞などのさまざまな症状を呈する呼吸器系の慢性疾患です1。世界で約2億6,200万人が罹患しており2、日本では、約918,000人の患者さんが喘息の治療を受け、19,000人が入院を、899,000人が外来受診を必要としています3。さらに、日本の成人患者さんの喘息有病率は、3.14%(1985年)から10.4% (2017年)と、ここ数十年で増加しています4。
日本の喘息予防・管理ガイドラインでは、軽症から重症の成人喘息患者さんに対して、ICS/LABA(吸入ステロイド薬と長時間作用性β2刺激薬)の併用(軽症はICS/LABA併用あるいはICS単独)による治療が推奨されています5-7。しかしながら、ICS/LABAで治療中のアドヒアランス良好な日本の成人喘息患者さんの40.3%は、症状がコントロールされていない、または十分なコントロールが得られていないと報告されており8、推奨される喘息治療を受けているにも関わらず、喘息症状を有する患者さんは一定数存在することが示唆されています。これらのコントロール不良の患者さんでは喘息症状のコントロールが必要ですが、日本人患者さんにおけるHRQoLに与える喘息症状の影響を評価した研究は限られています。
GSKの呼吸器における取り組みについて
GSKは約50年にわたり、気管支喘息とCOPDの領域において、治療薬の研究開発をリードしてきました。実臨床で機能する「Treatable traits(最適な治療を提供するために配慮すべき患者の形質・特徴)」の特定や診療の質向上に貢献し、患者さんがより早期に最適な治療を受けられることを目指しています。GSKでは、閉塞性肺疾患の早期診断、最適治療と治療継続、増悪予防の改善に向けて、遠隔医療ツールの活用や産官学の連携をしながら、閉塞性肺疾患の日本人患者さんの特性を評価する総合的な臨床研究を多数実施しています。TRAIT 研究、AERIS-J研究、Telemedicine研究、OCEAN研究、Cognitive研究などが進行・完了しています。
GSKは、サイエンス、テクノロジー、人財を結集し、力を合わせて病に先手を打つことを存在意義とするバイオ医薬品のグローバルリーダーです。詳細情報はhttps://jp.gsk.comをご参照ください。
1. Global Initiative for Asthma. Global Strategy for Asthma Management and Prevention 2022. [05 January 2023] Available from: https://ginasthma.org/wp-content/uploads/2022/07/GINA-Main-Report-2022-FINAL-22-07-01-WMS.pdf.
2. Collaborators GDaI. Global burden of 369 diseases and injuries in 204 countries and territories, 1990-2019: a systematic analysis for the Global Burden of Disease Study 2019. Lancet. 2020;396(10258):1204-22.
3. Ministry of Health, Labour and Welfare. Overview of patient survey in 2020. [05 January 2023] Available from: https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kanja/20/dl/suikeikanjya.pdf.
4. Nakamura Y, Tamaoki J, Nagase H, Yamaguchi M, Horiguchi T, Hozawa S, et al. Japanese guidelines for adult asthma 2020. Allergol Int. 2020;69(4):519-48.
5. Nakamura Y, et al. Allergol Int 2020;69:519-48.
6. Japan Asthma Society. Practical Guidelines for Asthma Management 2022. [10 February 2023] Available from: https://jasweb.or.jp/guideline.html.
7. Japanese Society of Allergology. Asthma Prevention and Management Guidelines 2021. [10 February 2023] Available from: https://www.jsaweb.jp/modules/journal/index.php?content_id=4.
8. Gon Y, et al. Respir Investig 2021;59:454-63.