GSK、gepotidacinの良好な第III相臨床試験結果を発表、20年超ぶりの単純性尿路感染症に対する新規の経口抗菌薬となる可能性
この資料は、英国GSK plcが2023年4月15日に発表したプレスリリースの日本語抄訳であり、報道関係者各位の利便性のために提供するものです。この資料の正式言語は英語であり、その内容およびその解釈については英語が優先されます。
詳細はhttps://www.gsk.comをご参照ください。
<2023年4月15日 英国ロンドン発>
GSK、gepotidacinの良好な第III相臨床試験結果を発表、20年超ぶりの単純性尿路感染症に対する新規の経口抗菌薬となる可能性
- Gepotidacinは、GSKの感染症治療領域における開発後期段階の抗菌薬
- EAGLE-2およびEAGLE-3試験で主要評価項目を達成し、ニトロフラントインに対する非劣性を、EAGLE-3試験では統計的な優越性を示す
- 米国食品医薬品局(FDA)への承認申請は2023年第2四半期を予定
GSK(本社:英国)は、成人および青年期の女性の単純性尿路感染症(Uncomplicated Urinary Tract Infections以下、uUTI)に対して新規の作用機序を有する新規の経口抗菌薬候補である治験薬gepotidacinを評価する主要な第III相臨床試験(EAGLE-2およびEAGLE-3試験)で、良好な結果が得られたことを発表しました。本試験データは、デンマークで開催された欧州臨床微生物感染症学会(ECCMID)で口頭発表されました。
これらの良好な試験結果は、GSKのパイプラインの3分の2を占める感染症治療薬でのポートフォリオの強みと、uUTIのようなアンメットメディカルニーズの高い領域での新しい抗菌薬の開発に取り組むGSKのコミットメントを示しています。本発表は、2022年11月の独立データモニタリング委員会(Independent Data Monitoring Committee以下、IDMC)の勧告による主要なEAGLE-2およびEAGLE-3試験の早期有効中止の続報です。最終的な試験結果は、2023年中に査読付きジャーナルへの論文に投稿します。
女性の半数以上が生涯で一度はuUTIを発症し1、4分の1以上の女性がuUTIの再発に苦しんでいます2,3,4。不快感や日常生活の制限など、患者さんは大きな負担を強いられています。また、耐性菌によるuUTIが増加しており、治療失敗率を高める可能性があります5。
GSKの開発部門シニアバイスプレジデントであるChris Corsicoは次のように述べています。
「単純性尿路感染症は、女性に最も一般的な外来感染症のひとつであり、また、既存の治療に対する耐性獲得増加の懸念がつのる状況下にありながら、過去20年以上もの間、新規クラスの抗菌薬は登場していません。Gepotidacinが承認されれば、耐性菌によるuUTIや再発性のuUTIによって治療失敗のリスクがある患者さんに待ち望まれていた新規経口治療の選択肢を提供することができます。GSKは規制当局と協力しながら、患者さんにできるだけ速やかに新規クラスの抗菌薬を提供するために取り組んでまいります。」
EAGLE-2およびEAGLE-3試験では、uUTIに対する既存の第一治療選択肢であるニトロフラントインに感性の尿路病原細菌によるuUTI患者さんで、gepotidacinは、ニトロフラントインに対する非劣性を示しました。また、EAGLE-3試験では、gepotidacinは、ニトロフラントインに対して統計的に有意な優越性を示しました。これらは、有効性の主要評価項目である治療成功に基づく結果であり、治療成功は治療開始10~13日後の治癒判定(Test-of-Cure以下、ToC)来院時の臨床的消失と細菌学的消失を指標とした複合評価項目です。
EAGLE-2試験では、治療成功であった患者さんの割合は、ニトロフラントインが47%であったのに対し、gepotidacinは50.6%でした。EAGLE-3試験では、治療成功であった患者さんの割合は、ニトロフラントインが43.6%であったのに対し、gepotidacinは58.5%でした。両試験とも、gepotidacinによる治療を受けた患者さんの94%が、フォローアップ来院のDay 28までの治験期間中に、uUTIに対する他の抗菌薬投与を受けていませんでした。EAGLE-2およびEAGLE-3試験におけるgepotidacinの安全性および忍容性プロファイルは、gepotidacinの過去の試験と一致しました。
また、gepotidacinは、治療失敗のリスクが高いとされている主要なサブグループで、ニトロフラントインと比較し、一貫した有効性(治療の成功)を示しました。主要なサブグループとして、他の抗菌薬に耐性の大腸菌を病原菌とする患者さん、再発の患者さん、50歳以上の患者さんなどが含まれています6,7。
第III相臨床試験、ToC来院時の主要な有効性データは以下の通りです。
EAGLE-2 | EAGLE-3 | |||||
Gepotidacin 1500mg BID (n=320) | ニトロフラントイン100mg BID (n=287) | 治療間の差i (95% CI) | Gepotidacin 1500mg BID (n=277) | ニトロフラントイン 100mg BID (n=264) | 治療間の差i (95% CI) | |
治療成功ii | 162 (50.6%) | 135 (47.0%) | 4.3% (-3.6%, 12.1%) |
162 (58.5%) | 115 (43.6%) | 14.6% (6.4%, 22.8%) |
臨床的成功iii | 210 (65.6%) | 187 (65.2%) | 1.2% (-6.3%, 8.7%) |
188 (67.9%) | 167 (63.3%) | 4.4% (-3.5%, 12.3%) |
細菌学的成功iv | 232 (72.5%) | 194 (67.6%) | 5.2% (-2.1%, 12.5%) |
200 (72.2%) | 151 (57.2%) | 15.0% (7.2%、22.9%) |
両試験は、事前規定された非劣性の成功基準に基づき中止された。また、EAGLE-3試験は事前規定された優越性の基準を満たした。
i 差 = gepotidacin-ニトロフラントイン、Micro-ITT NTF-S (IA set) = 細菌学的intent-to-treatニトロフラントイン感性中間解析集団
ii 臨床的および細菌学的成功の複合的評価項目
iii Test-of-Cure(ToC)来院時の臨床的成功 = 症状の消失
iv 尿路病原体の消失 = <103 CFU/mL
EAGLE-2試験の治験責任医師であるFlorian Martin Erich Wagenlehner氏は次のように述べています。
「このたびの結果は、この数十年革新がみられなかった領域にとって大きな前進です。Gepotidacinは、単純性尿路感染症治療の有効性に対して高い基準を設けた最新の規制基準を満たした最初の抗菌薬です。Gepotidacinは、この一般的な感染症治療領域における新たな経口治療薬の選択肢になる可能性があります。」
Gepotidacinによる治療を受けた患者さんでもっとも多く報告された有害事象は胃腸障害です。下痢がもっとも多く(16%)、次いで悪心(9%)が報告されました。Gepotidacinによる治療を受けた患者さんのうち、胃腸障害の有害事象が報告された患者さんのほとんどは、その重症度は軽度(69% Grade 1)および中等度(28% Grade 2)でした。Grade 3の胃腸障害は全事象の3%で、患者さんの1%未満でした。両試験をあわせて、各治療群(gepotidacinおよびニトロフラントイン)に、1件の治験薬と因果関係のある重篤な有害事象が認められました。
Gepotidacinの開発は、GSK、米国保健福祉省の戦略的準備・対策局の生物医学先端研究開発局(BARDA)、米国国防総省の国防脅威削減局(DTRA)との官民パートナーシップにより行われています(契約番号HHSO100201300011C)。BARDAのフェデラルファンドおよび契約番号HDTRA1-07-9-0002の下、DTRAのフェデラルファンドより一部または全部に資金提供を受けて行われています。
EAGLE(Efficacy of Antibacterial Gepotidacin Evaluated)第III相プログラムについて
成人および青年期の患者さんを対象としたgepotidacinの第III相臨床プログラムは、以下の3つの試験で構成されています。
EAGLE-2およびEAGLE-3試験は、uUTI治療における経口gepotidacinの有効性および安全性をニトロフラントインと比較する、国際共同、ランダム化、並行群間、二重盲検、非劣性(10%マージン)試験で、ほぼ同様の試験デザインです。両試験で、計3,136例の患者さんを対象としました。
EAGLE-2試験(uUTI、非劣性試験)は、gepotidacin(1500mgを1日2回5日間経口投与)の有効性と安全性をニトロフラントイン(100mgを1日2回5日間経口投与)と比較しています。治験期間は約28日間です。主要評価項目は、ニトロフラントインに感性の適格な尿路病原細菌を有する患者さんでのToC来院時(Day 10~13)の臨床的消失および細菌学的消失を指標とした複合評価項目です。
EAGLE-3試験(uUTI、非劣性試験)は、gepotidacin(1500mgを1日2回5日間経口投与)の有効性と安全性をニトロフラントイン(100mgを1日2回5日間経口投与)と比較しています。治験期間は約28日間です。主要評価項目は、ニトロフラントインに感性の適格な尿路病原細菌を有する患者さんでのToC来院時(Day 10~13)の臨床的消失および細菌学的消失を指標とした複合評価項目です。
EAGLE-1試験(泌尿生殖器の淋菌感染症、非劣性試験)は、淋菌に起因する単純性淋菌感染症患者約600例を対象として、gepotidacinの有効性と安全性を、セフトリアキソンとアジスロマイシンの併用と比較します。EAGLE-1試験は現在進行中で、泌尿生殖器の単純性淋菌感染症の治療薬としてgepotidacinを検討しています。データは2023年の下半期に得られる予定です。
Gepotidacinについて
Gepotidacinは、GSKの科学者により発見され開発が進められている抗菌薬です。他の抗菌薬とは異なる作用機序によって細菌のDNA複製を阻害する、新規の作用機序を有するトリアザアセナフチレン骨格の抗菌薬であり、2つの異なるII型トポイソメラーゼ酵素に結合してバランスよく阻害します。これにより、既存薬への耐性を示す分離株を含む、大腸菌株や腐性ブドウ球菌株などのほとんどの尿路病原細菌に対して抗菌活性を示します。また、gepotidacinは、2つの標的酵素にバランスよく結合し阻害することから、病原菌株がgepotidacinに対する耐性を獲得するためには、両酵素の変異が必要となります。
GSKと抗菌薬について
GSKは薬剤耐性菌に対して先手を打ちソリューションを提供するべく、継続的な投資と研究に取り組んでいます。GSKはすでに、医薬品アクセス財団の薬剤耐性ベンチマークにおいて業界をリードする評価を受けています。従来の抗菌薬に加え、GSKは、UTIの治療薬候補としてgepotidacinをはじめとする開発後期段階の抗菌薬のパイプラインを拡充しています。2022年9月、GSKはSpero Therapeutics社との間で、複雑性尿路感染症(cUTI)の治療薬候補として開発後期段階の抗菌薬であるテビペネムHBrをパイプラインに追加する独占的ライセンス契約を締結しました。また、2023年3月、GSKはSCYNEXIS社との間で、成人および初潮後の女児における外陰膣カンジダ症の治療薬である、米国FDAより承認取得済みの新規抗真菌薬Brexafemme(ibrexafungerp)を、GSKが拡充する抗菌薬ポートフォリオに追加する独占的ライセンス契約を締結しました。取引の終了は、1976年に制定されたハート・スコット・ロディノ反トラスト改正法に基づく待機期間の満了に従います。
GSKは、サイエンス、テクノロジー、人財を結集し、力を合わせて病に先手を打つことを存在意義とするバイオ医薬品のグローバルリーダーです。詳細情報はhttps://jp.gsk.comをご参照ください。
1 Historic self-reported data from a survey sample of 2000 women in the US. 1. Foxman, 2000, 2. Foxman, 2003.
2 Hooton TM. Uncomplicated Urinary Tract Infection. N Engl J Med. 2012;366:1028-37.
3 Rich SN, Klann EM, Almond CR, Larkin EM, Nicolette G, Ball JD. Associations between antibiotic prescriptions and recurrent urinary tract infections in female college students. Epidemiology and Infection. 2019;147.
4 Medina M, Castillo-Pino E. An introduction to the epidemiology and burden of urinary tract infections. Therapeutic Advances in Urology. 2019;11:175628721983217.
5 Kaye KS, et al. Antimicrobial resistance trends in urine Escherichia coli isolates from adult and adolescent females in the United States from 2011 to 2019: rising ESBL strains and impact on patient management. Clin Infect Dis 2021;73:1992–1999. doi: 10.1093/cid/ciab560.
6 Trautner et al. Risk Factors Associated With Antimicrobial Resistance and Adverse Short-Term Health Outcomes Among Adult and Adolescent Female Outpatients With Uncomplicated Urinary Tract Infection.
7 Data on file.