GSK、閉塞性肺疾患の日本人患者さんを対象とした2つの臨床研究データを日本呼吸器学会にて発表

  • TRAIT研究の中間データ(ベースラインデータ)から、より適切な治療を可能にするTreatable traitsを特定できる可能性を示唆
  • AERIS-J研究の中間データから、16S rRNA解析においてStreptococcus属が優位であり、日本人と欧米人との差異は少ない可能性が示唆

グラクソ・スミスクライン株式会社(本社:東京都港区、代表取締役社長:ポール・リレット、以下 GSK)は、日本呼吸器学会にて、閉塞性肺疾患の日本人患者さんを対象とするTRAIT研究とAERIS-J研究の中間報告データを発表したことをお知らせします。

TRAIT研究では、慢性閉塞性肺疾患(Chronic Obstructive Pulmonary Disease、以下COPD)、喘息、喘息とCOPDのオーバーラップ(Asthma and COPD Overlap、以下ACO)の各500症例を母集団としたベースラインの結果として、全てのコホートの半数以上の患者さんでQOLなど健康状態に改善の余地がみられました。また、バイオマーカーなどいくつかは、喘息とCOPDコホートの間で違いがみられ、特にFEV1、DLco、FeNO、IgEおよび好酸球で明らかな違いがみられましたが、コホート間での重複もみられました。これらの結果から、traits(患者さん個々の状態や病態、形質といった特徴)に関するディープフェノタイピングによって、より適切な治療を可能にするTreatable traits(最適な治療を提供するために配慮すべき患者の形質・特徴)を特定できる可能性が示唆されます。今後更なる分析を行い、研究結果を公表する予定です。

AERIS-J研究(Acute Exacerbation and Respiratory InfectionS in COPD-Japan Study)では、喀痰を用いて16S rRNA及びMetagenomic Sequencing(メタゲノムシークエンス)で日本人COPD患者さんがもつマイクロバイオームを確認しました。16S rRNA解析において、Streptococcus属が優位で、Haemophilus属とMoraxella属は少ないという結果が示されましたが、先行していた英国の研究においても同程度の気流閉塞の患者さんにおいては同様の傾向が認められており、日本人と欧米人との差異は少ない可能性が示唆されました。さらに、長期的なマイクロバイオームの影響を検討するため1年間の症状を電子日誌に記録し、症状変動との関連を評価する予定です。探索的なマイクロバイオームの解析を含めて、今後順次結果の公表を予定しています。

閉塞性肺疾患は、COPD、喘息、ACOに代表される疾患であり、病態や治療法に多くの共通点を持つものの、患者さんごとに異なる形質・特徴を併せ持ち、臨床症状が非常に複雑で不均一な疾患です。そのため、traitsを正確に捉え、現在選択し得る治療オプションから最適なものを選択し、患者さんの評価と治療をできるだけ個別化する必要性が示唆されています1-4。さまざまなTreatable traitsを特定することは、個々の患者さんにとって最良の治療法を選択するための鍵となります3,4

TRAIT研究の研究責任医師で、ステアリングコミッティの委員を務める筑波大学 檜澤伸之教授は次のように述べています。
「TRAIT研究は、全国から75施設に参画いただいている日本発の前向きの大規模観察研究です。参加施設の先生方のご尽力により、専門医によって診断された喘息、COPD、ACOの患者コホートがそれぞれ約500名登録されました。患者さんの状況を3年間、前向きに追跡することで、今後得られるデータは膨大で、貴重なデータになります。特に、閉塞性肺疾患の患者さんに、病名ではなく、Treatable traitsという新しい側面からアプローチすることの臨床的有用性がより明確になることを期待しています。」

AERIS-J研究の研究責任医師で、ステアリングコミッティの委員を務める産業医科大学 矢寺和博教授は次のように述べています。
「AERIS-J研究は、日本におけるCOPDを理解する上で非常に重要であると考えています。日本人のCOPDの病型は欧米と異なることが知られているためです。本研究で得られるデータを通じて、日本人COPD患者さんの安定期の肺のマイクロバイオームについての理解が進み、ひいては増悪のエンドタイプの特定やエンドタイプに基づくより適切な治療選択の実践につながることを期待します。」

GSK代表取締役社長のポール・リレットは次のように述べています。
「呼吸器領域におけるリーディングカンパニーとして、治療薬の提供に加えて、閉塞性肺疾患の患者さんの早期診断、最適治療と治療継続、増悪予防の改善に取り組むことは、私たちGSKの重要な使命のひとつだと考えています。今後さらなる究明が期待されるTreatable traitsの研究を通じて、より良い医療の提供に貢献したいと思います。」

GSKは、「Treatable traits」という概念や日本の閉塞性肺疾患の患者さんの特性を評価するために、GSKが実施している一連の研究に関する情報をまとめた医療従事者向けウェブサイト「TREATABLE TRAITS. JP」を開設しています。

なお、本研究結果は、2022年4月23日に開催された日本呼吸器学会学術講演会で発表されました。

GSKの呼吸器における取り組みについて
GSKは約50年にわたり、気管支喘息とCOPDの領域において、治療薬の研究開発をリードしてきました。実臨床で機能する「Treatable traits(最適な治療を提供するために配慮すべき患者の形質・特徴)」の特定や診療の質向上に貢献し、患者さんがより早期に最適な治療を受けられることを目指しています。GSKでは、閉塞性肺疾患の早期診断、最適治療と治療継続、増悪予防の改善に向けて、遠隔医療ツールの活用や産官学の連携をしながら、閉塞性肺疾患の日本人患者さんの特性を評価する総合的な臨床研究を多数実施しています。TRAIT研究、AERIS-J研究、Telemedicine研究、OCEAN研究、Cognitive研究などが進行・完了しています。

TRAIT研究について
TRAIT研究は、慢性閉塞性肺疾患(Chronic Obstructive Pulmonary Disease: COPD)、喘息、喘息とCOPDのオーバーラップ(Asthma and COPD Overlap: ACO)と診断された40歳以上の患者を対象とした3年間の多施設共同前向きコホート研究です。診断名(喘息、ACO、COPD)を超えて、異なるフェノタイプ(肺気腫、喘息様病態など)のデータが、全国規模かつ比較的大きなサンプルサイズで集積されています。また、サブスタディとして一部の研究対象者でHRCT(High Resolution Computed Tomography)の評価も行われており、横断的調査に加え3年間の縦断的追跡調査を実施しています。研究開始時とその後1年ごとに、肺機能、症状、バイオマーカー、併存症、既存CT等のデータを得て、各疾患名に加えて種々のtraitと病態推移との関連を評価します。2019年に研究を開始し、2021年3月までに、75施設で1,529例(COPD:522、喘息:507、ACO:500)が組み入れられました。現在、3年間の観察が継続中です(2024年3月に観察終了予定)。

医薬品情報データベース[JapicCTI-194844]
Hizawa N, et al. Int J Chron Obstruct Pulmon Dis. 2021; 16: 1813-1822. PMID: 34168442

AERIS-J研究(Acute Exacerbation and Respiratory InfectionS in COPD-Japan Study)について
AERIS-J研究(Acute Exacerbation and Respiratory InfectionS in COPD-Japan Study)は、40歳以上のCOPD、ACOと診断された患者を対象とした1年間の多施設共同前向きコホート研究です。安定期の肺のマイクロバイオームを評価することで、日本人と欧米人の比較ならびに日本人患者さんの増悪時のマイクロバイオームを推論し、患者個人レベルでの最適な治療を行う医学的アプローチに寄与することを目的として2019年に研究を開始しました。研究対象者から安定期の喀痰、血液及び電子日誌を用いて各種評価データを収集します。喀痰のシーケンシング(メタゲノム、16S rRNA)、qPCR及び細菌培養を行い、安定期に潜在的に疾患へ関与するウイルス及び細菌など肺のマイクロバイオームを評価します。また、喀痰および血液細胞数測定を含む各種評価を用いてCOPDエンドタイプを分類します。

医薬品情報データベース[JapicCTI-194704] ClinicalTrials.gov[NCT03957577]

慢性閉塞性肺疾患(COPD)について
COPDは、タバコ煙を主とする有害物質を長期に吸入曝露することで発症する不可逆性の肺疾患で、呼吸機能検査では、気流閉塞を示します5。「せき・たん」や「息切れ」といった呼吸に関わる症状が現れることが特徴です5。これらの症状は徐々に進行し、自覚症状にも乏しいため、気が付いた時には既に症状が進行してしまっている可能性もあります5。そのため、早期発見・早期治療が非常に重要です。国内では、40歳以上の有病率は8.6%6で、約530万人の患者さんがいると推計されていますが、実際に治療を受けているのは約26万人にすぎません6

GSKは、科学に根差したグローバルヘルスケアカンパニーです。詳細情報はhttps://jp.gsk.com/をご参照ください。


1 Hizawa N, Int J Chron Obstruct Pulmon Dis. 2015; 10: 1093-1102. PMID: 26089659.
2 Agusti A, et al. Thorax. 2013; 68(7): 687-690. PMID: 23117977.
3 Agusti A, et al. Respirology. 2016; 21(1): 24-33. PMID: 26172306.
4 McDonald VM, et al. Eur Respir J. 2019; 53(5). PMID: 30846468.
5 一般社団法人 日本呼吸器学会. https://www.jrs.or.jp/citizen/disease/b/b-01.html より改編.
6 2001年 福地義之助ら NICE Study.