GSK、慢性閉塞性肺疾患(COPD)増悪予防のための ePROプラットフォームを活用した日本人対象の臨床研究結果を発表

~遠隔医療ツールの利活用は、COPD患者さんと医療従事者のコミュニケーションを基盤とした疾患マネジメントの向上に寄与することを示唆~

  • 遠隔医療ツールの毎日の利用率は6割以上、毎週の利用率は8割以上の高い結果が認められた
  • 受容満足度では、患者さんの54%、医療従事者の58%が、大変満足あるいは満足したと回答

グラクソ・スミスクライン株式会社(本社:東京都港区、代表取締役社長:ポール・リレット、以下 GSK)は、慢性閉塞性肺疾患(Chronic Obstructive Pulmonary Disease、以下COPD)の日本人患者さんを対象としたCOPD増悪予防のための電子患者報告アウトカム(Patient Reported Outcome、以下ePRO)プラットフォームに関するTelemedicine研究から、治療管理におけるePROプラットフォームの有用性を示す結果を発表しました。ePROプラットフォームとは、患者さんが自宅で症状を記録し、その記録をデータとして医師に電子報告することができる遠隔医療ツールです。

Telemedicine研究は、呼吸器内科に通院する外来COPD患者さんを対象に、遠隔医療ツールの利用率と、COPD患者さんと医療従事者の受容満足度を評価する1年間の臨床研究です。利用率では、高齢患者さんによるePROプラットフォームへの症状記録の入力について評価を行い、受容満足度では、患者さんと医師がこのプラットフォームを臨床現場におけるコミュニケーションツールとして効果的であると判断したか、満足できたかについて評価しました。

本研究の主要評価項目である遠隔医療ツールの利用率については、毎日入力する「毎日の質問」と毎週入力する「COPDアセスメントテスト」に対して、それぞれ6割以上、8割以上と高い利用完了率を示しました。また、副次評価項目であるCOPD患者さんと医療従事者の受容満足度については、患者さんの54%、医療従事者の58%が、遠隔医療ツールを通じたモニタリングについて大変満足あるいは満足したと回答しました。

これらの結果から、症状をモニタリングするePROプラットフォームなどの遠隔医療ツールの利活用は、COPD患者さんの症状把握や、COPD患者さんと医療従事者とのコミュニケーション、疾患マネジメントの向上につながる可能性が期待されます。

COPDにおける現状課題として、症状が増悪したCOPD患者さんのうち約8割は、自身の症状について医師に報告していないことが明らかになっています1。近年、患者さん個々の特徴(traits)に基づいて治療を選択する個別化治療が提唱されている中、まず、医師が患者さんの症状の悪化や増悪への気づきをきっかけに治療介入し、最適な治療選択肢を提供することは重要です。そのため、薬物治療に加え、患者さんと医師のコミュニケーションを基盤とした疾患マネジメントが推奨されています2

本研究の研究アドバイザリーを務める福島県立医大学 呼吸器内科学講座 主任教授の柴田陽光博士は次のように述べています。
「最適な治療選択肢を効果的に、かつ感染症リスクを減らしながら患者さんに提供するには、遠隔医療ツールのさらなる活用が重要だと考えています。Telemedicine研究は、COPD増悪予防のために、患者さんの症状把握や疾患管理に遠隔医療ツールが有用であることを示した意義のある取り組みです。」

GSK代表取締役社長のポール・リレットは次のように述べています。
「遠隔医療を取り巻く環境は、近年変化しています。私たちは、この変化を日本の医療の発展における重要な機会と捉え、医薬品の研究開発に加えて、閉塞性肺疾患の患者さんの増悪予防に寄与するようこれからも取り組んでまいります。」

なお、本研究結果は、2022年4月23日に開催された日本呼吸器学会学術講演会で発表されました。

GSKの呼吸器における取り組みについて
GSKは約50年にわたり、気管支喘息とCOPDの領域において、治療薬の研究開発をリードしてきました。実臨床で機能する「Treatable traits(最適な治療を提供するために配慮すべき患者の形質・特徴)」の特定や診療の質向上に貢献し、患者さんがより早期に最適な治療を受けられることを目指しています。GSKでは、閉塞性肺疾患の早期診断、最適治療と治療継続、増悪予防の改善に向けて、遠隔医療ツールの活用や産官学の連携をしながら、閉塞性肺疾患の日本人患者さんの特性を評価する総合的な臨床研究を多数実施しています。TRAIT研究、AERIS-J研究、Telemedicine研究、OCEAN研究、Cognitive研究などが進行・完了しています。

COPD、喘息、喘息とCOPDのオーバーラップ(Asthma and COPD Overlap: ACO)に代表される閉塞性肺疾患は非常に複雑で、PROを含む、traits(患者個々の状態や病態、形質といった特徴)を正確に捉え、現在選択し得る治療オプションから最適なものを選択し、提供することが求められています3-5。さまざまな「Treatable traits」を特定することは、個々の患者にとって最良の治療法を選択するための鍵となることから、さらに研究を進めることが期待されています5,6

GSKは、「Treatable traits」という概念や日本の閉塞性肺疾患の患者さんの特性を評価するために、GSKが実施している一連の研究に関する情報をまとめた医療従事者向けウェブサイト「TREATABLE TRAITS. JP」も開設しています。

Telemedicine研究(遠隔医療ツールを活用した臨床研究)について
Telemedicine研究は、日本人COPD患者さんの治療における遠隔医療アプローチを評価する多施設共同、前向き介入探索的研究です。宮城県、東京都、三重県、福岡県の地域中核病院の呼吸器内科に通院する外来COPD患者さん84名(平均年齢69歳)を対象としました。主要評価は遠隔医療ツールの利用率、副次評価はアンケートによるCOPD患者さんと医療従事者の受容満足度です。さらに、症状のモニタリングが増悪の予見と薬剤変更などの適切な治療介入に結び付いたかも評価しました。研究組み入れ時の来院から研究終了までの期間は52~56週です。患者さんは自身の症状を定期的にアプリ(YaDoc:ヤードック)に入力し、医師がその内容をモニタリングします。そして、症状悪化の兆候が認められた際には、医師が来院を促し、増悪予防のための治療等を提供します。YaDocは、株式会社インテグリティ・ヘルスケアが提供する「モニタリング」「オンライン問診」「オンライン診療」の3つの機能を有する疾患管理システムで、全国3,500の医療機関に導入されています。

COPDアセスメントテスト(COPD Assessment Test: CAT)について
COPDアセスメントテストは、GSKが開発したCOPDの症状把握を目的としたチェックシートです。COPDの状態が健康と日常生活にどのような影響を与えているかについて、COPD患者さんと主治医が把握し、共有する質問票です。このチェックシートによって、今のCOPDの症状を的確に医師に伝えることができ、またテストの点数によって、患者さんの状態により適した治療を行うことが可能になります。

慢性閉塞性肺疾患(COPD)について
COPDは、タバコ煙を主とする有害物質を長期に吸入曝露することで発症する不可逆性の肺疾患で、呼吸機能検査では、気流閉塞を示します7。「せき・たん」や「息切れ」といった呼吸に関わる症状が現れることが特徴です7。これらの症状は徐々に進行し、自覚症状にも乏しいため、気がついた時には既に症状が進行してしまっている可能性もあります7。そのため、早期発見・早期治療が非常に重要です。国内では、40歳以上の有病率は8.6%8で、約530万人の患者さんがいると推計されていますが、実際に治療を受けているのは約26万人にすぎません8

GSKは、科学に根差したグローバルヘルスケアカンパニーです。詳細情報はhttps://jp.gsk.com/をご参照ください。


1 International Journal of Chronic Obstructive Pulmonary Disease downloaded from https://www.dovepress.com/ by 118.159.235.253 on 23-Jul-2019.
2 Vogelmeier CF, Criner GJ, Martínez FJ, et al. Global strategy for the diagnosis, management, and prevention of chronic obstructive lung disease 2017 report: GOLD executive summary. Eur Respir J 2017; 49: 1700214.
3 Hizawa N. Int J Chron Obstruct Pulmon Dis. 2015; 10: 1093-1102. PMID: 26089659.
4 Agusti A, et al. Thorax. 2013; 68(7): 687-690. PMID: 23117977.
5 Agusti A, et al. Respirology. 2016; 21(1): 24-33. PMID: 26172306.
6 McDonald VM, et al. Eur Respir J. 2019; 53(5). PMID: 30846468.
7 一般社団法人 日本呼吸器学会. https://www.jrs.or.jp/citizen/disease/b/b-01.html より改編.
8 2001年 福地義之助ら NICE Study.