GSK、日本人ループス腎炎既往のSLE患者さんを対象とした「Moonlight研究」を開始 ~産学連携の疾患レジストリ利活用によって新たなエビデンスの創出を実現する~

  • 産学連携を通じて、アンメットメディカルニーズの高いループス腎炎でのエビデンスを創出
  • 実臨床下のリアルワールドデータと疾患レジストリを活用した有効性比較試験を実施

グラクソ・スミスクライン株式会社(本社:東京都港区、代表取締役社長:ポール・リレット、以下GSK)は、全身性エリテマトーデス(以下SLE)を対象とした多施設共同疾患レジストリであるLUpus registry of NAtionwide institutions(以下”LUNA”、研究代表:昭和大学、矢嶋宣幸)との連携のもと、活動性ループス腎炎の既往を有する日本人SLE患者さんを対象としたベンリスタ(一般名:べリムマブ)の有効性を評価するMoonlight研究(Japan belimumab post Marketing cOhOrt and JapaN Lupus natIonwide reGistry coHorT study)を開始したことをお知らせします。

Moonlight研究は、市販後の実臨床下におけるベンリスタの3年間の長期間臨床データを収集し、SLE疾患レジストリであるLUNAを比較群として、ループス腎炎に対するベンリスタの有用性を検討する観察研究です。再発、透析などの末期腎不全に至るリスクもある活動性ループス腎炎の既往を有するSLE患者さんにおいて、ベンリスタ使用群と標準療法群との統計的背景調整を行った上で比較し、腎フレア等の再燃やコルチコステロイド用量について評価を行います。

疾患レジストリは、長期的に患者さんから経年変化や臨床転帰などのデータを収集することで、病態の解明や新たな治療法の開発にもつながることが期待されています。また、比較群として疾患レジストリを用いリアルワールドでの薬剤の評価を行うことは、治療法の有効性と安全性の示唆、そして、将来の患者さんのより適切な治療管理に寄与します。一方で、現在日本では、レジストリの整備が不十分で具体的な活用事例が少ないことが課題となっています。そのため、国は疾患レジストリの活用に向けて環境整備を進めている状況です1

Moonlight研究は、疾患レジストリ活用の具体例となると同時に、薬剤処方の単独群でしかデータが得られないことが多い製造販売後調査(Post marketing surveillance:PMS)のデータ利活用を期待できます。また、日本最大規模のSLEレジストリを有するLUNAとの産学連携を通じて、SLEの中で最も多く合併するループス腎炎の既往を有するSLE患者さんの治療におけるエビデンスの創出に寄与します。

GSK代表取締役社長のポール・リレットは次のように述べています。
「今回、LUNAと協働し、アンメットメディカルニーズの高いループス腎炎において、新たなエビデンスの創出に貢献できる機会が得られたことを光栄に思います。GSKはこれまで、呼吸器領域において日本の患者さんを対象とするリアルワールドデータを駆使した臨床研究に取り組んできました。加えて、このたびの自己免疫疾患領域における産学連携の取り組みが、現在の治療を必要とする患者さんだけでなく、将来の患者さんのより健康な生活の一助につながることを期待しています。GSKはこれからも最先端の科学を追求するヘルスケアカンパニーとして、患者さん、および医療従事者の先生方に役立つ情報を提供できるよう注力してまいります。」

Moonlight研究の研究責任医師でLUNAの代表を務める昭和大学医学部准教授の矢嶋宣幸博士は次のように述べています。
「GSKとLUNAが今回の新たな研究を開始できたことを大変嬉しく思います。LUNAは日本最大規模のSLEレジストリであり、これまでは困難であった層別化や調整などの解析手法を用いて個別化医療の実現を目指しています。GSKとLUNAとの産学連携を通じて、SLEで最も多く合併する腎障害に対する有用なエビデンスを創出し、医療の発展に貢献することが可能になると考えています。また、今回の研究チームにはアカデミアから疫学専門家、生物統計家の先生にご参画いただいており、質の高い研究発信が期待できます。」

Moonlight研究(Japan belimumab post Marketing cOhOrt and JapaN Lupus natIonwide reGistry coHorT study)について
本研究は、全国30カ所以上の医療機関からベリムマブの長期処方されている患者さんのデータを収集し、LUNAレジストリデータと比較を行う多施設共同観察研究です。生検で活動性ループス腎炎の既往を有し、3年間の追跡データを保持している日本人の患者さんにおいて、ベリムマブ+標準療法と標準療法単独で比較し、腎フレア等の予後について評価を行います。観察開始日前にループス腎炎(クラスⅢ~Ⅳ±ⅤまたはⅤのみ)の診断を受けている患者さんを対象とした後向き観察研究です。2022年2月に研究を開始し、目標症例数200例として、2023年第3四半期に終了・結果入手を予定しています。
(jRCT登録No.:jRCT1031210522)

SLE疾患レジストリLUNA(LUpus registry of NAtionwide institutions)について
国の難病に指定されている全身性エリテマトーデスの希少性をカバーするために、全国の13のリウマチ膠原病専門施設が参加し、通院中のSLE患者を対象とした大規模レジストリとして、昭和大学、岡山大学などが中心となり2016年に設立されました。LUNAは日本国内では最大規模のSLEレジストリであり、2021年4月時点で16施設1608例の収集実績を有します。また、患者報告アウトカムを含んでいる特徴があり、現在、36の臨床研究、トランスレーショナル研究が進行中です。2022年4月からは21施設へと拡大し、2800例の集積を予定しています。
詳細情報は、http://showa-u-rheum.com/research-facility/を参照ください。

全身性エリテマトーデス(SLE)とループス腎炎について
SLEは、全身の様々な場所、臓器に、多彩な症状を引き起こす自己免疫疾患です。男女比は、1:9ほどで、女性に多く、特に20-40歳の女性に多いとされ、日本全国に約6~10万人ほどの患者さんがいると考えられています2。ループス腎炎は、SLE患者の40~80%の患者さんでみられる重要な臓器病変であり、無治療では末期腎臓病に至ります。SLE患者さんにおいて、ループス腎炎の合併は生命予後の悪化につながるといわれています3

ベンリスタ(一般名:ベリムマブ(遺伝子組換え))点滴静注用および皮下注製剤について
「ベンリスタ」は可溶性BLySに高親和性に結合し、その生物活性を阻害する完全ヒト型モノクローナル抗体です。BLySは、B細胞の生存および分化を促進する因子(リガント)であり、B細胞の免疫グロブリン産生形質細胞の生存および分化に重要な役割を果たしています。SLE患者では、BLySの増加によって自己反応性B細胞が活性化され、炎症を促進する自己抗体が産生されます。ベンリスタはB細胞に直接結合せず、BLySに結合することにより、自己反応性B細胞の生存および分化を阻害します。

日本においてベンリスタの点滴静注用製剤(IV製剤)及び皮下注製剤(SC製剤)は、「既存治療で効果不十分な全身性エリテマトーデス」を効能・効果として、2017年9月に製造販売承認を取得しました。また、小児SLEに対しては、2019年9月にIV製剤で製造販売承認を取得しました。

米国においては2011年3月に、ベンリスタの点滴静注用製剤(IV製剤)は、標準治療を受けており、疾患活動性を有する自己抗体陽性のSLEの成人患者の治療薬として、最初の承認を取得し、現在、欧米を含む世界各国で承認されています。更に、2017年7月に皮下注製剤(SC製剤)が同じ適応症に対して米国で承認され、2019年5月現在、欧米、カナダ、スイス及びイスラエルで承認されています。また、小児SLEに対しては、2019年4月にIV製剤で、米国にて5歳以上の小児に係る販売承認を取得しています。

GSKは、科学に根差したグローバルヘルスケアカンパニーです。詳細情報はhttps://jp.gsk.com/を参照ください。

 


1 日本製薬工業協会 医薬品評価委員会 臨床評価部会2019. 医薬品開発における疾患レジストリの現状分析と展望
2 難病情報センター ウェブサイト
3 日本腎臓学会誌2018. ループス腎炎のエンドポイント60(5)601‒606