GSKとVir Biotechnology 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)成人患者に対する早期治療においてVIR-7831が入院・死亡リスクを低減、との結果を発表
この資料は、英国グラクソ・スミスクラインplcが2021年3月10日(英国現地時間)に発表したプレスリリースの日本語抄訳であり、報道関係者各位の利便性のために提供するものです。この資料の正式言語は英語であり、その内容およびその解釈については英語が優先します。詳細は https://www.gsk.com をご参照ください。
<2021 年3 月10 日、英国ロンドン、米国サンフランシスコ発>
GSKとVir Biotechnology
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)成人患者に対する早期治療においてVIR-7831が入院・死亡リスクを低減、との結果を発表
- 独立データモニタリング委員会は、第III相臨床試験COMET-ICEにおいて入院もしくは死亡リスク85%の低減が示されたことから、同試験の早期中止を勧告
- GSKとVir社は米国での緊急使用許可申請と他国での承認申請を予定
- 加えて、新たなin vitro試験では、現在出現している新型コロナウイルスの主な変異株に対しVIR-7831が活性を維持することが示唆される
グラクソ・スミスクライン(本社:英国、以下GSK)とVir Biotechnology, Inc.(本社:米国、以下Vir社)は3月10日、独立データモニタリング委員会が、入院リスクの高い新型コロナウイルス感染症(COVID-19)成人患者に対する早期治療を目的に、単剤療法としてのVIR-7831(GSK4182136)を評価する第III相臨床試験COMET-ICE(COVID-19 Monoclonal antibody Efficacy Trial - Intent to Care Early)について、十分な有効性が確認されたため、組み入れ中止の勧告をしたことを発表しました。
独立データモニタリング委員会の勧告は、COMET-ICE試験に登録された583人の患者さんのデータの中間解析に基づくものです。中間解析の結果、単剤療法としてVIR-7831を投与した患者群において、主要評価項目である入院もしくは死亡リスクが、プラセボ群と比較し85%(p=0.002)低減したことが示されました。またVIR-7831の忍容性は良好でした。本試験は継続しており、患者さんは盲検化された状態で24週間の追跡調査が行われているため、疫学データやウイルス学データなどの結果は、試験終了後に公表される予定です。
これらの結果に基づき、Vir社とGSKは米国食品医薬品局(FDA)への緊急使用許可申請、また他国において承認申請を行う予定です。また本登録試験で得られた結果は、FDAへの生物学的製剤承認申請のための元データとなります。
また両社は3月10日、bioRxivに提出し、現在オンライン公開を待っている新たな試験結果についても発表しました。この試験では、シュードタイプウイルスアッセイによるin vitroのデータにおいて、英国型、南アフリカ型およびブラジル型をはじめとする、現在懸念されている変異株に対しVIR-7831が活性を維持することが示されています。他のモノクローナル抗体と異なり、VIR-7831はスパイクタンパク質の高度に保存されたエピトープに結合します。このため、耐性がより生じにくくなる可能性があります。
VIR-7831に関するCOMET試験開発プログラムには、COMET-ICEの他に、以下の試験があります。
- COMET-PEAK試験:2つのパートで構成される現在進行中の第II相臨床試験。低リスクの軽症から中等症のCOVID-19成人患者さんにおいて、VIR-7831(500mg)の筋肉内注射とVIR-7831(500mg)の点滴静脈内投与について、安全性とウイルス動態を比較するとともに、異なるプロセスで製造されたVIR-7831の類似性と薬物動態を評価。
- COMET-TAIL試験:ハイリスクの成人患者さんに、VIR-7831を筋肉内注射した場合、COVID-19による入院もしくは死亡リスクを減らせるかどうかを評価する第III相臨床試験で、2021年第2四半期に開始予定。
- COMET-STAR試験:ハイリスクの未感染成人患者さんを対象に、VIR-7831を筋肉内注射した場合、症候性感染を予防できるかどうかを評価する第III相臨床試験で、2021年第2四半期に開始予定。
Vir社の最高経営責任者、ジョージ・スカンゴス博士は次のように述べています。
「保存されたエピトープに対するモノクローナル抗体の単剤でのこの素晴らしい試験結果により、私たちは世界中の患者さんに効果的な新たなソリューションをご提供するという目標に、更に一歩近づくことができます。VIR-7831は、正常細胞へのウイルス侵入を防ぎ、感染細胞を除去するという2つの作用を有し、また薬剤耐性に対する高いバリア機能を備えているという際立った特徴があります。薬剤耐性に関する公表待ちの試験結果とともに、今回の試験結果は、COVID-19による最も深刻な転帰を防ぐというVIR-7831の可能性を示し、また現在出現している新型コロナウイルスの変異株からも身を守る潜在的な可能性を強調するものです。」
GSKのチーフ・サイエンティフィック・オフィサーであり、研究開発部門のプレジデントであるハル・バロンは次のように述べています。
「このユニークなモノクローナル抗体が、患者さんにこのような素晴らしいベネフィットをもたらすことができて、非常に嬉しく思います。1日も早く患者さんにVIR-7831をお届けできるよう、また他の状況におけるVIR-7831の可能性を更に追求していきたいと思います。」
COMET-ICE試験の第III相では、世界の入院していない患者さんを対象に、VIR-7831(500mg)もしくはプラセボを単回静脈内投与した場合の安全性と有効性を評価しました。今回の中間解析では、VIR-7831での治療群291人、プラセボ群292人の患者さんが対象となりました。有効性の主要評価項目は、無作為化の後、29日以内に症状が悪化(少なくとも24時間の入院が必要もしくは死亡と定義)した患者さんの割合です。対象者のうち、63%はヒスパニック系もしくはラテン系、7%は黒人もしくはアフリカ系アメリカ人でした。米国疾病予防管理センターによると、これらの人々は、COVID-19による入院リスクが約3倍1、死亡リスクが約2倍高い2とされています。
VIR-7831は、イーライ・リリー社が主導する第II相臨床試験「BLAZE-4」で、外来患者さんにおける評価も行われています。この試験は、軽症から中等症の、リスクの低いCOVID-19成人患者さんを対象に、イーライ・リリー社のbamlanivimab(LY-CoV555)単剤、およびbamlanivimabとVIR-7831をはじめとする他の中和抗体を併用した場合の安全性と有効性を、プラセボと比較し評価するものです。
またVIR-7831はVIR-7832とともに、軽症から中等症のCOVID-19成人患者さんを対象に、National Health Serviceが主導する第Ib/IIa相臨床試験「AGILE」でも評価される予定です。VIR-7832は、Vir社とGSKとの協働における2つ目のモノクローナル抗体で、COVID-19に対する潜在的な治療薬として研究開発が進められています。
VIR-7831とVIR-7832は現在治験中の化合物であり、米国食品医薬品局や他の規制当局の承認は得ておりません。
COMET-ICE試験デザインについて
多施設共同二重盲検プラセボ対照比較試験である「COMET-ICE」は、重症化リスクの高い軽症から中等症のCOVID-19成人患者さんにおけるVIR-7831を評価する試験です。本剤のヒトに対する初めての試験となった第I相lead-inパートでは、米国で登録された入院していない成人患者さん21人を対象に、VIR-7831もしくはプラセボ500mgを単回静脈内投与し、14日間の安全性と忍容性を評価しました。
本lead-inパートで得られたVIR-7831の安全性と忍容性に対する、独立データモニタリング委員会の肯定的な見解に基づき、2020年10月、本試験の国際共同第III相臨床試験のパートにおいて、北米、南米および欧州における患者さんの組み入れを開始しました。このパートでは、世界の、入院していない患者さん最大1,300人を対象に、VIR-7831もしくはプラセボを単回静脈内投与した場合の安全性と有効性を評価しています。
VIR-7831/GSK4182136について
VIR-7831は、2つの作用を持つモノクローナル抗体です。前臨床試験では、正常細胞へのウイルス侵入を防ぐとともに、感染細胞を除去する能力を高めるという可能性が示唆されています。この抗体は、SARS-CoV-2のエピトープと結合します。これは、SARS-CoV-1(SARSを引き起こすウイルス)と共有され、保存性が高いことが示されるエピトープで、そのためエスケープ変異がより生じにくくなると考えられます。
Xencor社のXtend™技術を取り入れたVIR-7831は、SARS-CoV-2が感染した気道組織への最適な浸透性を確保するため、肺における高い組織移行性と半減期の延長も図られています。
VIR-7832/GSK4182137について
VIR-7832は、2つの作用を持つモノクローナル抗体です。前臨床試験では、正常細胞へのウイルス侵入を防ぐとともに、感染細胞を除去する能力を高めるという可能性が示唆されています。この抗体は、SARS-CoV-2のエピトープと結合します。これは、SARS-CoV-1(SARSを引き起こすウイルス)と共有され、保存性が高いことが示されるエピトープで、そのためエスケープ変異がより生じにくくなると考えられます。Xencor社のXtend技術とその他Fc領域に関する技術を取れ入れたVIR-7832は、SARS-CoV-2が感染した気道組織への最適な浸透性を確保するため、肺における高い組織移行性と半減期の延長が図られています。重要なのは、VIR-7832は、ウイルス特異的なT細胞機能を高めるよう設計されており、COVID-19の治療と予防の両方、もしくはいずれかにおいて貢献できる可能性があることです。
Vir社とGSKの協働について
2020年4月、Vir Biotechnology社とGSKは、COVID-19を引き起こすSARS-CoV-2を含むコロナウイルスに対するソリューションの研究開発において、提携する契約を締結しました。この提携では、Vir社独自のモノクローナル抗体プラットフォーム技術を駆使し、今回のCOVID-19の世界的大流行と今後発生する可能性のある大流行に対応するため、治療や予防の選択肢となりうる既存の抗ウイルス抗体の開発を加速させ、新規抗ウイルス抗体を特定します。また両社は、機能ゲノミクス分野でGSKが持つ専門性を活用するとともに、CRISPRスクリーニングと人工知能の分野において両社が培った技術を結集し、細胞宿主遺伝子を標的とした抗コロナウイルス化合物を特定します。さらに、両社それぞれの専門性をSARS-CoV-2やその他のコロナウイルスワクチンの研究に活用します。
COVID-19に対するGSKの取り組み
COVID-19に対するGSKの取り組みは、業界内でも最も幅広いものであり、現在2種類の治療薬および複数のワクチン候補の開発を進めています。
GSKは、アジュバント技術を提供することで、世界における複数の企業や団体と協力し、COVID-19ワクチンの開発に取り組んでいます。サノフィ社との協働に加え、メディカゴ社とのアジュバント添加タンパク質ベースのワクチン候補の共同開発は、現在後期臨床試験の段階にあります。
またSK Bioscience社と初期段階の協働も現在進めており、感染症流行対策イノベーション連合(CEPI)とビル&メリンダ・ゲイツ財団の資金援助を受け、COVAXを通じて世界に供給できるよう、差別化でき、かつ手頃な価格で入手可能なCOVID-19ワクチンを開発しています。
アジュバントの使用は、パンデミックの状況下では特に重要です。アジュバントを使用することにより、1回の接種に必要な抗原の量が抑えられるため、ワクチンの生産量を増やすことができ、より多くの人々を守ることに貢献できるからです。
GSKは、メッセンジャーRNA(mRNA)技術を専門とするCureVac社と、1つのワクチンで複数の新たな変異株に対処できるCOVID-19次世代多価mRNAワクチンを開発すべく協働を進めています。またGSKは、CureVac社の第一世代COVID-19ワクチン候補について、承認された場合、最大1億回分の製造も支援します。
Vir Biotechnologyについて
Vir Biotechnologyは、免疫学的考察と最先端技術を組み合わせ、重篤な感染症の治療と予防にフォーカスした臨床段階の免疫系専門企業です。Vir社では、自然免疫過程に関する重要な所見を探索することで、免疫系を刺激し活性化するための4つの技術プラットフォームを確立しました。現在、同社が有する開発パイプラインには、COVID-19を標的とする製品候補、B型肝炎ウイルス、A型インフルエンザ、ヒト免疫不全ウイルスを標的とした製品候補が含まれています。詳細については、www.vir.bioをご覧ください。
GSKについて
GSKは、より多くの人々に「生きる喜びを、もっと」を届けることを存在意義とする科学に根差したグローバルヘルスケアカンパニーです。詳細情報についてはhttps://jp.gsk.com/をご覧ください。
1. Data source: COVID-NET (https://www.cdc.gov/coronavirus/2019-ncov/covid-data/covid-net/purpose-methods.html, accessed March 1, 2020, through January 30, 2021). Numbers are ratios of age-adjusted rates standardized to the 2019 US standard COVID-NET catchment population.
2. Data source: NCHS provisional death counts (https://data.cdc.gov/NCHS/Deaths-involving-coronavirus-disease-2019-COVID- 19/ks3g-spdg, data through January 30, 2021). Numbers are ratios of age-adjusted rates standardized to the 2019 US intercensal population estimate.