GSK、開発中のモノクローナル抗体「オチリマブ」について新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の成人入院患者を対象とした治療に関する評価結果を発表
この資料は、英国グラクソ・スミスクラインplcが2021年2月25日(英国現地時間)に発表したプレスリリースの日本語抄訳であり、報道関係者各位の利便性のために提供するものです。この資料の正式言語は英語であり、その内容およびその解釈については英語が優先されます。詳細は https://www.gsk.com をご参照ください。
<2021年2月25日 英国ロンドン発>
GSK、開発中のモノクローナル抗体「オチリマブ」について新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の成人入院患者を対象とした治療に関する評価結果を発表
グラクソ・スミスクライン(本社:英国、以下GSK)は2月25日、抗顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(抗GM-CSF)モノクローナル抗体「オチリマブ」の第II相Proof of Concept臨床試験「OSCAR (Otilimab in Severe COVID-19 Related Disease)」の結果を発表しました。
OSCAR試験の主要評価項目は、標準治療(抗ウイルス薬や副腎皮質ホルモン製剤を含む)とオチリマブ単回投与+標準治療群とを比較し、治療から28日後の時点において生存し呼吸不全のないCOVID-19患者さんの割合でした。全年齢の患者データでは、両群間で5.3%(95%信頼区間:-0.8%,11.4%)の治療成績の差が認められましたが、統計学的な有意差には至りませんでした。しかし、70歳以上の患者さん(N=180、総症例数806例)における、予め計画されていた年齢別の有効性解析では、治療から28日後に生存し呼吸不全のない患者さんの割合は、標準治療群で45.9%であったのに対し、標準治療+オチリマブ投与群では65.1%でした(Δ=19.1%、95%信頼区間:5.2%, 33.1%)(名目上のp値=0.009)。また、70歳以上の患者さんにおける60日目までの死亡率解析では、標準治療群が40.4%であるのに対し、標準治療+オチリマブ投与群は26%で、両群で14.4%の治療成績の差が認められ(95%信頼区間:0.9%, 27.9%)(名目上のp値=0.040)、オチリマブの投与を支持する結果となりました。
これらのデータが、ハイリスク患者からなる予め規定されたサブグループにおいて、臨床上重要な有益性を示唆していること、また公衆衛生上のニーズがあることから、GSKはこれらの重要な知見を確認するため、OSCAR試験を修正し、本コホートを拡大することを決定しました。
GSK研究開発部門のシニアバイス・プレジデントであるクリストファー・コルシコは次のように述べています。
「70歳以上の患者さんは、COVID-19関連死において70%、入院においては40%近くを占めています。GM-CSFがこれらの患者さんにおいて上昇していることを示唆する最近の試験結果により、私たちのCOVIDに対する科学的な理解は急速に進化し続けています。このパンデミックが高齢者に与えている深刻な影響や、本日私たちがお示しした勇気づけられるデータを見て、この知見が追加コホートで再現されることを期待しています。」
COVID-19と診断された患者さんの約10~15%は、入院や集中治療を要する可能性のある呼吸器系の症状を伴う重篤な疾患を発症し、さらに5%は重症化します。年齢は、重症COVID-19の重要な危険因子であることが広く認識されています。また重症肺疾患を伴うCOVID-19高齢者において、症状の重症化と死亡率の上昇が一貫して認められています。米国疾病予防管理センターによると、入院リスクは70~74歳の患者さんでは5倍、75歳以上では8倍高くなります。これらの患者さんでは、高流量酸素や人工呼吸器などの呼吸への介入がしばしば必要になります。ウイルスを排除しようと体内の免疫系が暴走することで引き起こされるCOVID-19の重症呼吸器症状は、生命を脅かす合併症や死亡にまで至ることがあります。
最近の研究によると、COVID-19に対する免疫応答におけるサイトカインGM-CSFの役割は、70歳以上の患者さんにおいてより顕著であり1、これらの患者さんにおいてCOVID-19関連の重篤な合併症のリスクが高まることを示唆しています。このような患者さんにおける免疫応答を仲介するための更なる治療薬へのニーズは、まだ満たされていません。
OSCAR試験におけるこの追加コホートは、同様の試験デザインで、70歳以上の患者さん約350例が組み入れられます。
高流量酸素や侵襲的な人工呼吸器を必要とするCOVID-19の入院患者さんのより重度の段階において、現在可能な治療法の臨床上の有用性は限られています。現在までのところ、70歳以上の患者さんにおける呼吸不全からの回復改善や死亡率の低下において、十分な有効性が立証された標的免疫調整薬はありません。
OSCAR試験で報告された最も一般的な重篤な有害事象は、呼吸不全でした(プラセボ群で5%、オチリマブ群で4%)。報告されたすべての有害事象と重篤な有害事象は、重症のCOVID-19患者さんにおいて典型的なものでした。70歳以上のサブグループにおける重篤な有害事象と致死的な有害事象の発現率は、プラセボ群に比べ、オチリマブ投与群で低いことが報告されました。
第II相臨床試験OSCAR studyについて
国際共同多施設無作為化二重盲検プラセボ対照の第IIa相POC臨床試験であるOSCAR試験(NCT04376684)では、COVID-19関連の重症肺疾患を有する入院中の患者さん計806例(18~79歳)を対象に、標準治療に加え、オチリマブ(90mgを1時間以上かけて単回静脈内投与)もしくはプラセボを投与し、有効性と安全性を評価しました。各地域の病院や施設の方針に従い、標準治療では、デキサメタゾンを含む副腎皮質ホルモン製剤、レムデシビル、回復期患者血漿の投与が認められました。米国、欧州、アジア、ロシア、南アフリカ、南米を含む世界130か所の施設で、すべての患者さんが組み入れられました。また全ての被験者は、SARS-CoV-2検査が陽性で、肺炎と診断されて入院し、高流量酸素、非侵襲的な酸素療法や人工呼吸器を必要とする新たな呼吸不全症状の発現が治療開始の48時間以前であり、全身性炎症に関するバイオマーカーの上昇が認められた患者さんです。
被験者は、世界保健機関(WHO)2020のオリジナル版をもとにGSKが改定した測定基準に照らし、明らかに酸素療法を必要としない場合、「生存しており、呼吸不全がない」とされました。
Full analysisは現在進行中で、公表可能になり次第、preprint(査読前論文)として公開予定です。
オチリマブについて
オチリマブ(旧GSK3196165)は、完全ヒトモノクローナル抗体であり、関節リウマチをはじめとする多くの免疫性疾患において中心的な役割を果たすタンパク質、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)を阻害します。GM-CSFは、マクロファージ(炎症過程において重要な役割を果たす免疫細胞)をはじめとする細胞に対して作用し、炎症、関節損傷、痛みを引き起こします。オチリマブは、GM-CSFとその細胞表面にある受容体との相互作用を阻害することで、GM-CSFの生物学的作用を中和します。2013年、GSKはMorphoSys AGより、すべての疾患領域におけるオチリマブの開発および販売活動に関する全世界における独占的権利を譲り受けました。
COVID-19に対するGSKの取り組み
COVID-19に対するGSKの取り組みは、業界内でも最も幅広いものであり、現在2種類の治療薬および複数のワクチン候補の開発を進めています。
GSKは、アジュバント技術を提供することで、世界における複数の企業や団体と協力し、COVID-19ワクチンの開発に取り組んでいます。サノフィ社との協働に加え、メディカゴ社とのアジュバント添加タンパク質ベースのワクチン候補の共同開発は、現在後期臨床試験の段階にあります。
またSK Bioscience社と初期段階の協働も現在進めており、感染症流行対策イノベーション連合(CEPI)とビル&メリンダ・ゲイツ財団の資金援助を受け、COVAXを通じて世界に供給できるよう、差別化でき、かつ手頃な価格で入手可能なCOVID-19ワクチンを開発しています。
アジュバントの使用は、パンデミックの状況下では特に重要です。アジュバントを使用することにより、1回の接種に必要な抗原の量が抑えられるため、ワクチンの生産量を増やすことができ、より多くの人々を守ることに貢献できるからです。
GSKは、メッセンジャーRNA技術を専門とするCureVac社と、1つのワクチンで複数の新たな変異株に対処できるCOVID-19次世代多価mRNAワクチンを開発すべく協働を進めています。またGSKは、CureVac社の第一世代COVID-19ワクチン候補について、承認された場合、最大1億回分の製造も支援します。
GSKは、COVID-19患者さんに対する治療薬や治療選択肢の開発にも取り組んでいます。Vir Biotechnology社と協働し、COVID-19に対する治療もしくは予防の選択肢として使用可能な既存の抗ウイルス抗体医薬の開発や、新たな抗体医薬の特定に取り組んでいます。
GSKについて
GSKは、より多くの人々に「生きる喜びを、もっと」を届けることを存在意義とする科学に根差したグローバルヘルスケアカンパニーです。詳細情報については https://jp.gsk.com/ をご覧ください。
1. Thwaites et al. Elevated antiviral, myeloid and endothelial inflammatory markers in severe COVID-19. 13 October 2020; medRxiv preprint https://doi.org/10.1101/2020.10.08.20209411