GSKとVir Biotechnology 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する抗体医薬の第2/3相臨床試験を開始
この資料は、英国グラクソ・スミスクラインplcが2020年8月31日に発表したプレスリリースの日本語抄訳であり、報道関係者各位の利便性のために提供するものです。この資料の正式言語は英語であり、その内容およびその解釈については英語が優先します。詳細は https://www.gsk.com をご参照ください。
<2020年8月31日 英国ロンドン、米国サンフランシスコ発>
GSKとVir Biotechnology
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する抗体医薬の第2/3相臨床試験を開始
-
第2/3相臨床試験「COMET-ICE」で、COVID-19による入院予防における抗体医薬の有効性と安全性を検証
-
2020年末までに初期の試験結果が得られ、2021年上半期に実用化の可能性
グラクソ・スミスクライン(本社:英国、以下GSK)とVir Biotechnology, Inc.(本社:米国、以下Vir社)は入院リスクが高い患者さんに対する新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の早期治療薬として開発中の完全ヒトモノクローナル抗体VIR-7831(別称GSK4182136)による第2/3相臨床試験において、先週、最初の患者さんへの投与が行われたことを発表しました。
COMET-ICE試験(COVID-19 Monoclonal antibody Efficacy Trial - Intent to Care Early)では、感染の初期症状がある、世界約1,300 名の患者さんを対象に、モノクローナル抗体VIR-7831の単回投与で、COVID-19による入院を予防できるかどうかを検証します。初期の試験結果は今年末までに、またすべての試験結果は2021年第1四半期に得られ、早ければ2021年上半期に実用化の見込みです。今年4月、両社が新型コロナウイルスに対するソリューションの研究開発を目的とした提携に関する契約を締結したことを受け、先週の試験開始となりました。
Vir社の最高経営責任者、ジョージ・スカンゴス博士は次のように述べています。
「重症化を防ぐため、COVID-19の早期感染患者さんを治療することは、患者さんにとっても社会にとっても非常に重要です。世界的に見ても医療システムは逼迫しており、限られた医療資源にとって、新規感染は負担となっています。本試験は、モノクローナル抗体VIR-7831が、高齢者や肺・心臓に基礎疾患を抱えるリスクの高い患者さんにおける入院を有意に減らせるかどうかを示すことを目的としています。」
GSKのチーフ・サイエンティフィック・オフィサーであり、研究開発部門のプレジデントであるハル・バロンは次のように述べています。
「新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に対するモノクローナル抗体は、体内における抗体産生を介することなく、COVID-19に対する効果的で速やかな免疫応答を引き起こします。これは効果的なワクチンがない状況下においては、特に重要です。本試験では、VIR-7831の投与によるリスクの高い患者さんの重症化予防の効果を評価し、今後は、リスクの高い患者さんにおける感染予防、また既に入院している患者さんの重症化予防を評価する予定です。」
COVID-19を引き起こすウイルスSARS-CoV-2の感染を中和するモノクローナル抗体は、治療薬やワクチンの候補として研究が進められており、研究所では免疫細胞から産生、またはクローン産生されます。Vir社の抗体プラットフォームは、ウイルスの細胞感染を阻止(中和)し、感染細胞を死滅させるために免疫系を増強する(エフェクター機能)ことで効果を発揮する独自の抗体を、感染症の回復者から同定しました。
SARS-CoV-2の主な特徴は、ウイルスの外表面を覆うスパイクタンパク質です。ウイルスは、このスパイクタンパク質を利用し、ヒトの細胞に結合、侵入し、感染を引き起こします。このスパイクタンパク質を標的とするモノクローナル抗体が、COVID-19の治療薬になるのではないかと期待されています。Vir社の抗体プラットフォームにより同定されたVIR-7831は、前臨床試験では、SARS-CoV-2スパイクタンパク質に対する高い親和性とSARS-CoV-2に対する強い中和作用を示し、薬剤耐性に対する高いバリアと感染細胞を死滅させるために免疫系を増強する能力が示唆されました。またVIR-7831は、肺におけるバイオアベイラビリティが高められています。
COMET-ICE試験は、多施設二重盲検プラセボ対照の第2/3相臨床試験で、重症化リスクの高い軽症または中等症のCOVID-19患者さんを対象にVIR-7831を評価する、2部構成の試験です。
最初のパート(The Lead-In Phase)は、ヒトに対する初めての試験です。The Lead-In Phaseでは、入院していない患者さんを対象にVIR-7831もしくはプラセボを500mg、単回静脈内投与し、14日間の安全性と忍容性を評価します。米国で20名の患者さんを組み入れる予定です。
最初の安全性評価に続き、2つ目のパート(The Expansion Phase)は、入院予防を目的に実施される試験です。The Expansion Phaseでは、入院していない、世界約1,300名の患者さんを対象に、VIR-7831もしくはプラセボを単回静脈内投与し、安全性と有効性を評価します。主要評価項目は、重症化した軽症もしくは中等症の患者さんのうち、無作為化の後、29日以内に悪化(入院もしくは死亡と定義する)した患者さんの割合です。
COMET臨床開発プログラムでは、VIR-7831に対して、更に2つの試験を計画しています。1つは、重症の入院患者さんに対する治療、もう1つは症状を伴う感染症の予防に関する試験です。
両社は、今年中にも、別のSARS-CoV-2中和抗体VIR-7832の第2相臨床試験を開始する予定です。この抗体はVIR-7831の特性を備えながら、同時に治療用および/または予防用のT細胞ワクチンとしても機能する可能性があります。
VIR-7831/GSK4182136について
VIR-7831(GSK4182136)は、in vitroでSARS-CoV-2の生ウイルスの中和能を示したモノクローナル抗体で、SARS-CoV-2のエピトープと結合します。これは、SARS-CoV-1(SARSとして知られる)と共有され、保存性が高いことが示されるエピトープで、そのためエスケープ変異が生じにくくなると考えられます。またVIR-7831/GSK4182136は、肺におけるバイオアベイラビリティが高められ、半減期も延長されています。
VIR-7832について
VIR-7832は、in vitroでSARS-CoV-2の生ウイルスの中和能を示したモノクローナル抗体で、SARS-CoV-2のエピトープと結合します。これは、SARS-CoV-1(SARSとして知られる)と共有され、保存性が高いことが示されるエピトープで、そのためエスケープ変異が生じにくくなると考えられます。またVIR-7832は、肺におけるバイオアベイラビリティが高められ、半減期も延長されています。さらに、治療用および/または予防用のT細胞ワクチンとしても機能する可能性があります。
VIR社とGSKの協働について
2020年4月、Vir Biotechnology社とGSKは、COVID-19を引き起こすSARS-CoV-2を含むコロナウイルスに対するソリューションの研究開発において、提携する契約を締結しました。この提携では、Vir社独自のモノクローナル抗体プラットフォーム技術を駆使し、今回のCOVID-19の世界的大流行と今後発生する可能性のある大流行に対応するため、治療薬やワクチンとして選択肢となりうる既存の抗ウイルス抗体の開発を加速させ、新規抗ウイルス抗体を同定します。また両社は、機能ゲノミクス分野でGSKが持つ専門性を活用するとともに、CRISPRスクリーニングと人工知能の分野において両社が培った技術を結集し、細胞宿主遺伝子を標的とした抗コロナウイルス化合物を同定します。さらに、両社それぞれの専門性をSARS-CoV-2やその他のコロナウイルスワクチンの研究に活用します。
Vir Biotechnologyについて
Vir Biotechnologyは、免疫学的考察と最先端技術を組み合わせ、重篤な感染症の治療と予防にフォーカスした臨床段階の免疫系専門企業です。Vir社では、自然免疫過程に関する重要な所見を探索することで、免疫系を刺激し活性化するための4つの技術プラットフォームを確立しました。現在、同社が有する開発パイプラインには、B型肝炎ウイルス、A型インフルエンザ、SARS-CoV-2、ヒト免疫不全ウイルス、および結核菌を標的とした製品候補が含まれています。詳細については、www.vir.bio をご覧ください。
GSKについて
GSKは、より多くの人々に「生きる喜びを、もっと」を届けることを存在意義とする科学に根差したグローバルヘルスケアカンパニーです。詳細情報については https://jp.gsk.com/ をご覧ください。