腎性貧血治療薬「ダーブロック錠」GSKとして、世界初の製造販売承認を日本で取得
この資料は、英国グラクソ・スミスクラインplcが2020年6月29日に発表したプレスリリースの日本語抄訳であり、報道関係者各位の利便性のために提供するものです。この資料の正式言語は英語であり、その内容及びその解釈については英語が優先します。詳細は https://www.gsk.com をご参照ください。
<2020年6月29日 英国ロンドン発>
腎性貧血治療薬「ダーブロック錠」
GSKとして、世界初の製造販売承認を日本で取得
腎性貧血患者さんに新たな治療選択肢を提供
グラクソ・スミスクライン(本社:英国、以下GSK)は本日、経口の低酸素誘導因子プロリン水酸化酵素阻害薬(hypoxia-inducible factor prolyl-hydroxylase inhibitor、以下HIF-PHI)である「ダーブロック錠」(一般名:ダプロデュスタット)について、腎性貧血の効能・効果で製造販売承認を取得いたしました。
Dr. Hal Barron(Chief Scientific Officer and President, R&D, GSK)は、今回の承認を受け、次のように述べています。「今回のダーブロック錠の承認により、日本で約350万人いると推計される1,2腎性貧血の患者さんに、新たな、かつ経口薬という利便性の高い治療選択肢を提供できるようになります。今回の承認取得を大変嬉しく思うとともに、世界中の多くの腎性貧血の患者さんを支援するため、現在進行中の第III相プログラムから得られるデータを今後皆さんにご紹介できることを楽しみにしております。」
慢性腎臓病(Chronic Kidney Disease、以下CKD)の患者さんでは、赤血球産生を促すホルモンであるエリスロポエチンが十分に産生されないため、貧血がよく見られます3。HIF-PHIは低酸素(酸素欠乏)で生じる生理学的作用と同様に、骨髄での赤血球産生を促すことで、腎性貧血に効果をもたらす作用機序の薬剤です。
この承認は、主に日本で実施された第III相試験における有効性及び安全性の結果に基づいています。これらの臨床試験では、CKDステージ3~5の患者さんを対象としてダーブロック錠を評価しました。これらの試験では、透析(血液透析及び腹膜透析)を受けている患者さん及び透析を受けていない患者さんを、赤血球造血刺激因子(ESA)注射剤による治療の有無に関わらず、対象としています。ダーブロック錠は、注射剤による標準治療と比べ、透析を受けている患者さん及び透析を受けていない患者さんのいずれにも経口投与できるという利便性と1日1回投与という柔軟性を備えています。
ダプロデュスタットについては、現在、腎性貧血その他のいかなる効能・効果においても、承認を取得している国は日本以外ではありません。現在、心血管イベントを評価項目とする2つのアウトカム試験ASCEND-DとASCEND-NDを含むグローバル第III相プログラムが進行中であり、これらの試験結果は世界各国における承認申請に使用される予定です。
ダーブロック錠は、GSKのスペシャリティケア領域の中でも重要な製品の1つです。日本国内においてダーブロック錠は、2018年に締結した戦略的販売提携契約に基づき、流通・販売業務は協和キリン株式会社が独占的に行う予定です。協和キリン株式会社は、日本における腎領域での豊富な経験と専門性を有しており、医療関係者への適切な情報提供を通じて、本剤を患者さんに提供できるものと考えます。医療機関等へのプロモーション活動は協和キリン株式会社が実施し、MSL活動は協和キリン株式会社とGSKが協働で実施します。
日本における臨床開発プログラムについて
国内で実施された3つの第III相試験の概要は以下の通りです。
- ESA注射剤で治療中の血液透析患者271例を対象とした52週間のダプロデュスタットとダルベポエチン アルファ(遺伝子組換え)の比較試験。
- CKDステージ3~5の保存期患者(ESA注射剤による治療の有無は問わない)299例を対象とした52週間のダプロデュスタットとエポエチン ベータ ペゴル(遺伝子組換え)の比較試験。この試験には、腹膜透析患者56例も含まれる(全例がダプロデュスタットを投与)。
- ESA注射剤で治療されていない血液透析患者28例を対象とした24週間の試験(全例がダプロデュスタットを投与)。
グローバル開発プログラム
GSKでは以下の試験を含むグローバル第III相プログラムが進行中です。
- ASCEND-D(Anaemia Studies in CKD: Erythropoiesis via a Novel PHI Daprodustat-Dialysis)では、赤血球造血刺激因子製剤(ESA)から切り替えた、CKDに伴う貧血を有する約3,000例の透析患者を登録しました。患者募集は既に終了しています。
- ASCEND-ND(Anaemia Studies in CKD: Erythropoiesis via a Novel PHI Daprodustat-Non-Dialysis)では、ESAから切り替えた、または、ESA未治療のCKDに伴う貧血を有する約4,500例の保存期患者を登録する予定です。患者募集は引き続き行われています。
いずれの試験においても、複合主要評価項目は、主要心血管イベント(MACE)が最初に発現するまでの期間とヘモグロビンの有効性評価期間(28~52週の平均値)のベースラインからの平均変化量です。両試験では、これらの評価項目について、ESAに対するダプロデュスタットの非劣性を主要解析として評価します。主要解析で非劣性が示された場合は、MACE評価項目について優越性を評価する予定です。
ダプロデュスタットについて
ダプロデュスタットは、経口の低酸素誘導因子プロリン水酸化酵素の阻害薬で、透析の有無に関わらず、成人の腎性貧血を効能・効果とした治療薬です。酸素を検知するプロリン水酸化酵素を阻害することで低酸素誘導因子を安定化し、高地で身体に生じる生理学的作用と同様に、赤血球産生や鉄代謝に関与するエリスロポエチンやその他の遺伝子の転写を誘導すると考えられています。ダプロデュスタットは、ESA注射剤と異なり、経口投与が可能で、低温保管の必要性がない新たな治療の選択肢として開発されました。
腎性貧血について
貧血は、酸素を体内に運ぶ赤血球の減少やヘモグロビン濃度の低下がみられる状態を述べた用語であり、一般に貧血の診断にはヘモグロビン濃度が用いられます。腎臓は、エリスロポエチンなどのホルモンを産生することで赤血球の産生を促進します3。エリスロポエチンは赤血球の産生の促進に関与するホルモンですが、腎障害を有する患者では腎臓が十分な量のエリスロポエチンを産生できなくなることから、腎性貧血がよく起こります。腎機能の低下に伴い、腎性貧血の有病率は高くなります。
日本ではCKDステージ3~5の患者は1,090万人おり、このうち約32%に貧血が見られるとされています1,2。世界中で10人に1人がCKDに罹患しているとされており、2017年にはそれが原因で100万人を超える人々が亡くなっています4,5。そしてこういったCKD患者の多くで貧血が起こります。
GSKは、より多くの人々に「生きる喜びを、もっと」を届けることを存在意義とする科学に根差したグローバルヘルスケアカンパニーです。詳細情報は https://jp.gsk.com/ をご覧ください。
1 Akizawa T. et al. Burden of Anemia in Chronic Kidney Disease Patients in Japan: A Literature Review. Ther Apher Dial. 2018;22(5):444-56. https://doi.org/10.1111/1744-9987.12712
2 Imai E. et al. Prevalence of chronic kidney disease in the Japanese general population. Clin Exp Nephrol. 2009;13(6):621-30. https://doi.org/10.1007/s10157-009-0199-x
3 Anemia in Chronic Kidney Disease. National Institute of Diabetes and Digestive and Kidney Diseases. https://www.niddk.nih.gov/health-information/kidney-disease/anemia
4 Hill NR et al. Global Prevalence of Chronic Kidney Disease – A Systematic Review and Meta-Analysis. Plos One. 2016. https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0158765#authcontrib
5 GBD Chronic Kidney Disease Collaboration. Global, regional, and national burden of chronic kidney disease, 1990-2017: a systemic analysis for the Global Burden of Disease Study 2017. The Lancet. Volume 395, Issue 10225, p709-733; February 29, 2020.