小児重症喘息を対象とした治療薬としてヌーカラ(メポリズマブ)を 欧州委員会が承認 好酸球性の小児重症喘息に対する欧州初の抗IL-5生物学的製剤

グラクソ・スミスクライン(本社:英国、以下GSK)は8月30日、小児から青年期(6~17歳)の好酸球性の重症喘息患者に対する追加維持治療薬としてヌーカラ(一般名:メポリズマブ(遺伝子組換え))が欧州委員会から製造販売承認を取得したことを発表しました。この適応拡大により、ヌーカラは、欧州医薬品庁(EMA)の管轄下にある欧州31カ国で、成人および小児の患者の両方を対象とした好酸球性の重症喘息の治療薬として承認されたことになります。

Dr. Hal Barron(Chief Scientific Officer and President, Pharmaceuticals R&D, GSK)は、次のように述べています。

「喘息は小児で最もよくみられる慢性疾患です。小児の重症喘息患者で用いることのできる初の標的治療薬としてヌーカラが使用可能となることで、対象となる小児患者の喘息コントロールができるようになり、患者さんのご両親の負担軽減も期待されます。」

 

ヌーカラは、好酸球の働きをコントロールする上で重要な役割を果たすインターロイキン-5(IL-5)を標的として小児重症喘息患者に対し承認された初の生物学的製剤です。小児や青年期では成人よりも疾患の重症度が高くなることで、致死的またはそれに近い事象が発現するリスクがより高いため、今回対象となる患者集団には高いアンメット・ニーズがあります。また、現在では重症喘息に対する治療選択肢が限られており、小児患者に対する新たな治療選択肢が必要とされています。さらに、現在の標準治療である経口ステロイド薬の長期投与は、小児患者において、成人患者でもみられる複数の有害事象に加えて、成長障害というリスクが伴います。

 

重症喘息および好酸球性炎症について

重症喘息は、「“コントロール不良”となるのを予防するため、高用量の吸入ステロイド薬(ICS)および長期管理薬(および/または全身性ステロイド薬)による治療が必要である喘息、あるいはこうした治療にもかかわらず“コントロール不良”である喘息」と定義されています[1]。また、経口ステロイド薬(OCS)を長期間使用している患者も重症喘息患者として分類されます。重症喘息患者の集団では、好酸球(白血球の一種)の産生亢進に伴い肺の炎症を引き起こされることが知られています[2]。IL-5は好酸球の増殖、活性化、および生存を促進する主要因子であり、骨髄から肺への好酸球の遊走にも深く関与しています[2][3][4][5]。重症喘息患者の約60%に好酸球性の気道炎症が認められることが複数の研究で示唆されています。

 

ヌーカラ(メポリズマブ)について

2015年に好酸球性の重症喘息に対して初めて承認されたメポリズマブは、IL-5を標的とするファースト・イン・クラスのモノクローナル抗体です。ヌーカラはIL-5と好酸球の表面にある受容体との結合を阻害することにより作用すると考えられています。このようにIL-5との結合を阻害することで血中好酸球数を減少させます。*日本における承認取得は2016年です。

 

メポリズマブは、好酸球により引き起こされる炎症がもたらす疾患の治療薬として開発されました。数多くの好酸球性疾患を持つ3,000例を超える患者を対象とした16の臨床試験が行われた結果、好酸球性の重症喘息患者に対する追加維持治療薬として、ヌーカラという製品名で米国、欧州、およびその他20カ国以上で承認されており、本適応において、代表的な生物学的製剤となっています。また、米国、日本、およびカナダでは、本剤は好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA)患者に対する追加維持治療薬として承認されています。さらにメポリズマブについては、重症の好酸球増多症候群、鼻茸、および慢性閉塞性肺疾患(COPD)に関する検討が行われています。

 

今回の製造販売承認は、EMAの小児委員会(Paediatrics Committee, PDCO)が合意した部分データ外挿法に基づいています。この方法を用いて、メポリズマブの開発プログラムの一環である12歳以上の重症喘息患者を対象とした第III相試験の有効性および安全性データを小児に外挿しました。12歳以上の重症喘息を対象とした複数の第III相臨床試験から得られた青年期の被験者データと6~11歳の好酸球性の小児重症喘息患者を対象とした薬物動態(PK)/薬力学(PD)試験により、この手法は裏付けされました。この手法は、好酸球性の重症喘息において成人と小児で同様の臨床症状がみられること、治療法およびメポリズマブの作用機序が一致すること、さらには有効性および安全性のいずれに関しても臨床的評価項目に関連性がみられることに基づいて認められています。その他の適応で18歳未満の患者を対象とした、PK、PD、および安全性に関する追加データもデータパッケージに含まれています。また、6~11歳の小児患者における安全性プロファイルは、12歳以上の患者における安全性プロファイルと同様でした。

 

日本においてヌーカラは、12歳以上の方にお使いいただくことができます。

 

GSKの呼吸器疾患への取り組みについて

GSKは、約50年間、喘息およびCOPDの管理を向上させる革新的な医薬品の開発をリードしてきました。過去5年にわたり、従来の治療法では満たされない患者さんからの絶えることのないアンメット・ニーズに応える6つの医薬品を上市しました。これらは適切な治療薬を適切な患者さんに届けるために開発された、幅広く、徹底したかつ革新的な業界をリードするポートフォリオとなっています。

 

生きる喜びを、もっと Do more, feel better, live longer

GSKは、より多くの人々に「生きる喜びを、もっと」を届けることを存在意義とする科学に根差したグローバルヘルスケアカンパニーです。詳細情報はhttps://jp.gsk.com/を参照ください。



[1] Chung KF, et al. International ERS/ATS guidelines on definition, evaluation and treatment of severe asthma. Eur Respir J. 2014;43:343–373 

[2] Rothenberg ME. Eosinophillia. N Engl J Med. 1998;338:1592-1600 

[3] Lopez AF, et al. Recombinant human interleukin 5 is a selective activator of human eosinophil function. J Exp Med. 1988;167:219–224 

[4] Rosenberg HF, Dyer KD, Foster PS. Eosinophils: changing perspectives in health and disease. Nat Rev Immunol. 2013;13:9-22 

[5] Kouro T, Takatsu T. IL-5- and eosinophil-mediated inflammation: from discovery to therapy. Int Immunol. 2009;21(12):1303–1309