子宮頸がん疾患啓発および予防に関する私たちの見解

子宮頸がんは、日本において毎年約11,000人の女性が発症し、約2,700人の女性の命を奪う疾患です1。その原因は、性交経験のある女性の約80%が一生涯に一度は感染をするといわれているヒトパピローマウイルス(HPV)であるため2、子宮頸がんは女性であれば誰もが発症する可能性のある疾患とされています。

我が国では胃がんや大腸がん、肺がんの死亡率が減少傾向にあるのに対し、子宮頸がんの死亡率は増加し続けています3。 また、たとえ早期発見と治療により命を失わなかった場合でも、子宮や卵巣および周囲のリンパ節の摘出といった治療によって、後遺症(出産ができなくなる、 リンパ浮腫や排尿障害に苦しむ、など)を引き起こす可能性があります。特に近年、20~30代の女性の発症率が増加しており、これらの後遺症は、女性の生 活の質(QOL)を下げるだけでなく、結婚や出産など女性のライフステージにおける大切なイベントにも深刻な影響を及ぼすことが懸念されています。また、 初期の子宮頸がんは自覚症状がほとんどなく、症状を自覚してから受診をしても、既に進行してしまっている可能性があります。さらに、子宮頸がんは罹患した 女性だけではなく、看病や労働損失の側面からもご家族や周囲の方へ大きな影響を及ぼす疾患です。

一方で、多くの場合、子宮頸がんは定期的 な検診とヒトパピローマウイルス・ワクチン(以下 HPVワクチン)の接種によって予防することが可能です。しかしながら、日本の子宮頸がん検診率は69%から85%を超える欧米諸国に比べて38%と低 く、特にHPVの感染リスクが増加する20歳代の検診受診率は10-20%程度であり4、このことは効果的な子宮頸がん予防を日本 国内で広く進めていく上で大きな課題となっています。また、子宮頸がん検診と同様に、子宮頸がんの主な原因となるHPV感染を予防するHPVワクチンも女 性を守る役割を担っています。従って、子宮頸がんで命を落とす、または後遺症で苦しむ女性を少しでも減らすためには、ワクチン接種よって得られる疾病予防 効果と副反応のリスクについてのさらなる理解と普及、および浸透は極めて重要であると考えられます。

世界保健機関(WHO)およびその他 各国のワクチンの評価団体もHPVワクチンについてその有益性が安全性のリスクを上回ると評価をしています。また日本産科婦人科学会も、HPVワクチン は、検診とともに子宮頸がん予防のために必須の両輪と位置付けており、HPVワクチン接種の勧奨再開を求める声明5を発表しています。

一 方、HPVワクチン接種後に広範な疼痛又は運動障害を中心とする多様な症状が特異的に見られたことから、より身近な地域において適切な診療を提供するた め、本年4月までに厚生労働省および日本医師会・都道府県医師会によって、接種後に生じた症状の診療に係る協力医療機関が全国47都道府県で選定されまし た。また、本年8月には日本医師会・日本医学会より「HPVワクチン接種後に生じた症状に対する診療の手引き」が発刊される等、治療体制も整備が進んでい ます。

このような状況を鑑み、弊社は将来、子宮頸がんに苦しむ女性が1人でも減るよう、子宮頸がんの疾患および予防啓発の活動により一層注力すると同時に、HPVワクチンの接種勧奨の再開を強く望みます。

弊 社は医薬品の品質・安全を最優先事項として取り組んでおります。日本においてHPVワクチンの積極的勧奨が中止されてから27カ月が経過しました。この間 にも、HPVに感染することで将来的に子宮頸がんに苦しむ女性は増えていると考えられ、弊社はこのことに対し更なる対策を講ずることができなかったことを 残念に思っています。私たちはHPVワクチンの接種勧奨の再開にむけて、これからも当局に対し必要な情報を提供し、女性特有のがんの中で3番目に患者数の 多い1この疾患で苦しむ女性を1人でも減らすために今後も取り組んでまいります。

さらに、HPVワクチン接種対象 者およびその保護者の方々のHPVワクチン接種後の症状に対する不安を軽減し、安心して接種を受けていただけるよう、引き続き積極的な情報提供をおこなっ てまいります。同時に、厚生労働省、関係学会、医師を始めとした関係者の皆様との連携のもと、万一HPVワクチン接種後の副反応と思われる症状が長期化し た場合でも、速やかに適切な治療が受けられ、一日も早く元の健康な生活が取り戻せるよう、企業として尽力してまいります。

最後となりましたが、HPVワクチン接種後の様々な症状に苦しんでおられる患者様の、1日も早い回復をお祈り申し上げます。

 1.全国がん罹患モニタリング集計2011年報告
 2.Castellsagué X, Schneider A, Kaufmann AM, Bosch FX. Gynecol Oncol.
   2009 Dec;115(3 Suppl):S15-23
 3.厚生労働省 第51回 がん対策推進協議会
   資料2、国立がん研究センターがん対策情報センター
   http://mtpro.medical-tribune.co.jp/mtpronews/1411/1411013.html
   http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000088581.html
 4.OECD Health Data 2011
 5.日本産婦人科学会 http://www.jsog.or.jp/statement/statement_150829.html