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がん免疫療法:標準治療へのイノベーションの統合

がん免疫療法:標準治療へのイノベーションの統合

1891年、米国の外科医ウィリアム・コーリーは、手術が適応できない肉腫患者の腫瘍が、細菌の培養液を投与することで縮小したと報告しました[1]。今日のがん免疫療法の先駆けと考えられています。注目すべき分野ですが、まだ解明されていないことも多く残っています。

GSKには幅広いポートフォリオがあり、私たちは先陣を切ってがん治療分野の発展に取り組んでいます。私は今、このような研究組織に所属していることにこの上ない喜びを感じています。

T細胞免疫チェックポイントであるCTLA-4とPD-1の発見は、がん免疫療法(Immuno-Oncology: I-O)の分野に革命をおこしました。これらをブロックすると、多くの自己免疫に関連する有害事象が発現する一方で、同時に腫瘍に対する免疫応答も強めることができました。この結果から、腫瘍は自ら生き残るために免疫システムを抑制し、免疫システムがさまざまな細胞や組織に影響を及ぼしつつも、多くのがんを抑制するために活用できる可能性があるという仮説が導き出されます[3,4]

現在、様々な臨床試験が行われ、免疫チェックポイントの毒性を克服する方法を探るその他の免疫チェックポイントの可能性も評価されています[3]。その他にも腫瘍免疫(I-O)分野では、腫瘍を標的とする新しい方法について、代謝に関わる「メタボリックチェックポイント」など腫瘍微少環境の研究や、患者のマイクロバイオームが免疫療法の応答に及ぼす影響についての研究も行われています[3]

免疫システムは「免疫監視」と言われるプロセスを通して腫瘍を認識し、応答していることが知られています[5]。腫瘍表面に提示されたウイルスの蛋白や変異蛋白を「腫瘍抗原」として認識する機能を用い、免疫監視を行っているのです[5]

しかし腫瘍には、自らの免疫応答を抑制する機能が備わっており、そのため免疫監視機構による初期の免疫応答が有効には働きません[5]

がん免疫(I-O)療法は、モノクロナール抗体から細胞ワクチンまで、さまざまな種類がありますが、いずれも特定の免疫チェックポイントを活性化もしくは抑制することで、患者自身の抗腫瘍免疫応答を増強します [3,6,7]。これは腫瘍を直接標的とする、または腫瘍への血液供給を阻害する「標的療法」とは異なるものであり、正常細胞にもダメージを与える従来の化学療法や放射線療法とも異なります[4,8,9]

次世代型がん治療としてのがん免疫(I-O)療法

がん免疫(I-O)療法は、免疫応答のよい患者さんの場合には、従来の化学療法や放射線治療と比べ安定した状態を長く保つことができ、時には腫瘍が消失する事例も認められることがあります。比較的、重篤な有害事象の頻度も少ないことから、がん免疫(I-O)療法は、患者さんのQOL(生活の質)を大きく下げることも少ないと考えられています[10]

しかし、すべての患者さんでがん免疫(I-O)療法に良好な反応を示すとは限りません。腫瘍の不均一性という問題があり、腫瘍内のがん細胞が時間とともに変異し、抗がん治療に対し異なるレベルの反応性を示すサブポピュレーションを形成していくためです[11]。その他にも、生体の自己免疫の働きを阻害する多くの経路が自然に生じ、それらが治療効果を限定的なものにすることがあります。

GSKは、免疫制御機構を標的として設計されたがん免疫療法を開発し、がん患者さんの治療奏効率を向上させることを試みています。

免疫機構は複雑であり、様々に異なった要素が相互に影響し合い、腫瘍に対する免疫療法の効果発現を難しくすることがある一方で、非常に強力で有望ながん治療法の選択肢となり得ることがあります。

がん免疫(I-O)療法を標準治療に押し上げる

がん免疫(I-O)療法が従来の治療と異なる点は、がん細胞に対し免疫記憶のメカニズムが加わる事で、長く安定した免疫応答を誘導し続け、長く効果の認められる患者さんがいることです。つまり、免疫機構が腫瘍抗原に再遭遇した時には、より大きな免疫応答を示すことができるということです[12]

がん免疫(I-O)療法が従来の治療に比べ、患者さんの生存期間を延ばす可能性があるという観察結果から、これまで一般的な指標であった無増悪生存率や全生存期間中央値を評価する臨床試験の潮流を、最も治療効果を信頼して推定できる指標である全生存期間の延長(例:2年もしくは5年生存率)を評価することへと変えることになりました[12]

がん免疫(I-O)療法は、数々の公表された臨床試験の結果により、標準治療として確立しつつあります。これらの試験の多くは、複数のがん免疫(I-O)療法同士の組み合わせ、がん免疫(I-O)療法と従来の治療法また標的療法との組み合わせの相乗効果の有無を調べる試験ですが、試験成績が上がるということは一方で、薬剤に関連した毒性も高めてしまう可能性があります[12]

参考文献

[1] McCarthy EF. The toxins of William B. Coley and the treatment of bone and soft-tissue sarcomas. Iowa Orthop J 2006;26:154.

[2] Cornejo CM, Haun P, English III J, et al. Immune checkpoint inhibitors and the development of granulomatous reactions. J Am Acad Dermatol 2019;81(5):1165-75.

[3] Esfahani K, Roudaia L, Buhlaiga N, et al. A review of cancer immunotherapy: from the past, to the present, to the future. Curr Oncol 2020;27(S2).

[4] Dempke WC, Fenchel K, Uciechowski P, Dale SP. Second-and third-generation drugs for immuno-oncology treatment—the more the better?. Eur J Cancer 2017;74:55-72.

[5] Finn OJ. Immuno-oncology: understanding the function and dysfunction of the immune system in cancer. Ann Oncol 2012;23(S8):viii6-9.

[6] Adams JL, Smothers J, Srinivasan R et al. Big opportunities for small molecules in immuno-oncology Nat Rev Drug Discov 2015;14(9):603-22.

[7] Hoos A, Britten CM. The immuno-oncology framework: Enabling a new era of cancer therapy. Oncoimmunology 2012 May 1;1(3):334-9.

[8] Bagnyukova TV, Serebriiskii IG, Zhou Y, et al. Chemotherapy and signaling: How can targeted therapies supercharge cytotoxic agents?. Cancer Biol Ther 2010 Nov 1;10(9):839-53.

[9] Baskar R, Dai J, Wenlong N, et al. Biological response of cancer cells to radiation treatment. Front Mol Biosci 2014 Nov 17;1:24.

[10] Kaufman HL, Atkins MB, Subedi P, et al. The promise of Immuno-oncology: implications for defining the value of cancer treatment. J Immunother Cancer 2019;7(1):129.

[11] Dagogo-Jack I, Shaw AT. Tumour heterogeneity and resistance to cancer therapies. Nat Rev Clin Oncol 2018 Feb;15(2):81.

[12] Harris SJ, Brown J, Lopez J, et al. Immuno-oncology combinations: raising the tail of the survival curve. Cancer Biol Med 2016;13(2):171.