GSKとVir Biotechnology、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する治療薬ソトロビマブの筋肉内注射を評価した第III相臨床試験COMET-TAILで主要評価項目を達成

この資料は、英国グラクソ・スミスクラインplcが2021年11月12日(英国現地時間)に発表したプレスリリースの日本語抄訳であり、報道関係者各位の利便性のために提供するものです。この資料の正式言語は英語であり、その内容およびその解釈については英語が優先します。詳細はhttps://www.gsk.comをご参照ください。

<2021年11月12日、英国ロンドン発、米国サンフランシスコ発>

GSKとVir Biotechnology、
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する治療薬ソトロビマブの筋肉内注射を評価した第III相臨床試験COMET-TAILで主要評価項目を達成

  • COMET-TAIL試験で得られたデータから、ソトロビマブの筋肉内注射は静脈内注射に対して非劣性を示し、高リスク集団で同程度の効果を示した

  • 本試験は、米国においてデルタ株が流行中に参加者を登録

グラクソ・スミスクライン(以下GSK)とVir Biotechnology Inc.(以下Vir社)は11月12日、多施設共同無作為化非盲検第III相臨床試験COMET-TAILの主要データを発表しました。本試験では、主要評価項目が達成され、ソトロビマブ1の筋肉内注射(IM)は、入院していない高リスク成人および小児(12歳以上)患者さんを対象とした軽症から中等症の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の早期治療において、静脈内注射(IV)と比べて非劣性であることが示されました。

COMET-TAIL試験は、症状発現から最長7日後までの高リスク患者さんを対象に、ソトロビマブのIM投与の有効性、安全性、および忍容性をIV投与と比較評価するようデザインされました。投与29日目までの24時間を超える入院または死亡への進行率は、IV投与(500mg)群の1.3%に対し、IM投与(500mg)群では2.7%でした。IM投与群とIV投与群の補正後の差は1.07%、95%信頼区間(CI)は-1.25%~3.39%であり、95%CIの上限は、米国食品医薬品局(FDA)との協議により事前に規定した試験の主要評価項目の非劣性マージン3.5%の範囲内でした。

さらに、主要データで認められた重篤な有害事象、およびグレード3~4の有害事象の発現率はいずれの投与群でも1%以下でした。

GSKとVir社は、ソトロビマブにおいて取得済みのソトロビマブ緊急使用許可に関するFDAとの協議を含め、各国の規制当局への承認申請を進める予定です。

GSKのチーフ・サイエンティフィック・オフィサーであり、研究開発部門のプレジデントであるハル・バロンは次のように述べています。
「今回の結果から、ソトロビマブを筋肉内に直接注射した場合と静脈内に注射した場合で有効性が同程度であることが示されました。患者さんにとって、より利用しやすい選択肢を提供することができ、たいへん嬉しく思います。この新たな治療選択肢をCOVID-19の患者さんへ適切に提供するべく、規制当局と協働して貢献していきます。」

Vir社の最高経営責任者であるジョージ・スカンゴス(Ph.D.)は次のように述べています。
「この試験は、デルタ株の感染が広がっている時期に実施され、フロリダでは多くの患者さんが登録されました。フロリダはデルタ株のホットスポットであり、平均入院率は確定症例の10%を超えていました。ソトロビマブは、今後も発生が予想される変異株に対処できるよう設計されました。これらのデータは、承認されたソトロビマブのIVまたはIM投与が、COVID-19との闘いにおいて重要になる可能性を示しています。まもなくパンデミックは3年目になりますが、特に複雑な健康ニーズがあるリスクの高い患者さんに対して、複数の治療選択肢が引き続き必要になると考えています。」

今回のアップデートは、2021年上半期に発表された第III相臨床試験COMET-ICE試験に続くものです。COMET-ICE試験では、軽症から中等症のCOVID-19に罹患し、重症化するリスクが高い成人患者さんを対象にソトロビマブの静脈内注射(IV)を検討しました。COMET-ICE試験に参加した1,057例全例における最終結果から、投与29日目時点の入院および死亡は、プラセボと比較して79%減少することが示されました。

ソトロビマブ(製品名:ゼビュディ)について
ソトロビマブはGSKとVir Biotechnology(本社:米国、以下Vir社)が研究開発を行う抗新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)モノクローナル抗体です。この抗体はSARS-CoV-1(SARSを引き起こすウイルス)と共通したSARS-CoV-2のエピトープと結合します。これは、エピトープの保存性が高いことを示し、エスケープ変異がより生じにくくなると考えられます。XencorのXten™技術を取り入れたソトロビマブは、SARS-CoV-2が感染した気道組織への最適な浸透性を確保するため、肺における高い組織移行性と半減期の延長も図られています。

bioRxivで発表された最新のin vitro試験データから、ソトロビマブは、世界保健機関(WHO)の定義による、懸念され、注目されている流行中のSARS-CoV-2ウイルス変異株に加え、デルタ(B.1.617.2)、デルタプラス(AY.1またはAY.2)、ミュー(B.1.621)など(ただしこれらに限定されません)に対する活性を維持することが示されています。

ソトロビマブ臨床開発プログラムについて

  • COMET-ICE:第III相多施設共同二重盲検プラセボ対照試験。入院しておらず、酸素吸入を必要としない、重症化リスクの高い軽症から中等症のCOVID-19の成人患者さんを対象に、ソトロビマブの静脈内(IV)投与を検討。COMET-ICE試験に参加した1,057例全例における最終結果から、投与29日目までの24時間を超える入院または死亡(死因は問わない)が、プラセボと比較して79%低減(補正相対リスク減少)(p<0.001)することが示され、試験の主要評価項目を達成しました。中間データはThe New England Journal of Medicine2021年10月27日号で発表され、最終データは2021年11月8日のmedRxivで先行発表されました。
  • COMET-TAIL:第III相多施設共同無作為化非盲検非劣性試験。高リスクの入院していない成人および小児(12歳以上)患者さんを対象に、軽症から中等症のCOVID-19の早期治療におけるソトロビマブの筋肉内注射(IM)と静脈内注射(IV)を比較。試験の主要評価項目は達成され、主要データにより、ソトロビマブのIM投与はIV投与に対して非劣性を示し、高リスク集団で同程度の効果を示すことが示されました。COMET-TAIL試験には、症状発現後7日以内の計983例を登録。この試験では当初、ソトロビマブIV投与(500mg)群と2つのIM投与群(500mgおよび低用量250mg)の3群が設定されました。250mg IM投与群で多くの入院が認められたため、独立安全性モニタリング委員会から、250mg IM投与群の登録を中止するよう勧告されました。500mg IM投与群では計画どおり登録を継続することが推奨されました。GSKとVir社は、COMET-TAIL試験の全データセットを提出し、2022年第1四半期に、査読付きジャーナルに発表する予定です。
  • COMET-PEAK試験:第II相多施設共同無作為化並行群間試験。軽症から中等症のCOVID-19の外来患者さんを対象にソトロビマブの静脈内(IV)および筋肉内(IM)注射を評価。これまでに得られたこの試験の非盲検パートB(500mg IM対500mg IV)のデータにおいて、ウイルス学的反応はIM群とIV群で同程度であることが示されました。IM投与の忍容性については、10/82例(12%)の患者さんに注射部位反応が認められましたが、そのすべてがグレード1(軽度)でした。GSKとVir社は、COMET-PEAK試験の全データセットを、論文発表に向けて、査読付きジャーナルに提出する予定です。
  • 症状を伴うCOVID-19感染を予防できるかを検討するため、GSKとVir社は提携して、COVID-19に罹患していない免疫不全の成人患者さんを対象としたソトロビマブの使用について検討しています。GSKとVir社は、研究者主導臨床研究を支援し、免疫不全患者さんに対する予防としてのソトロビマブの役割を理解するべく、免疫不全の一連のケアに携わる経験豊富な治験責任医師およびネットワークとの科学的協働を促進していきます。いずれは、規制当局と予防プログラムについての協議を行います。

ソトロビマブへのグローバルアクセスについて

  • ソトロビマブは、米国において緊急使用が認められており、EUの医薬品委員会(CHMP)は、ソトロビマブについてRegulation 726/2004のArticle5(3)に基づき肯定的な科学的見解を発表しています。オーストラリアでは暫定的承認、サウジアラビアでは条件付きの承認を取得しており、日本では特例承認を受けています。バーレーン、ブラジル、カナダ、エジプト、イタリア、クウェート、オマーン、カタール、シンガポール、スイス、タイ、アラブ首長国連邦では一時的承認が得られています。
    ソトロビマブは、各国との契約に基づいて供給している米国、日本、オーストラリア、カナダ、シンガポール、アラブ首長国連邦を含め、世界各国に供給されています。また、ソトロビマブの供給について欧州委員会と共同調達契約を締結しました。その他の合意については、秘密保持あるいは規制要件の制限があり、まだ発表されていません。

米国におけるソトロビマブについて
以下はソトロビマブに関する情報概要です。米国の医療従事者は、EUAによりソトロビマブに対して許可された使用および必須要件に関する情報について医療従事者向けファクトシート(Fact Sheet for Healthcare Providers)を確認する必要があります。FDAの承認書(FDA Letter of Authorization)医療従事者向けファクトシート(Fact Sheet for Healthcare Providers)(PDF - 306KB)、および患者・保護者・介護者向けファクトシート(Fact Sheet for Patients, Parents, and Caregivers)(PDF - 37.7KB)をご参照ください。

ソトロビマブについては、下記の通りFDAから緊急使用許可が得られていますが、FDAの承認を受けているわけではありません。

ソトロビマブの緊急使用許可は、緊急使用許可の早期打ち切りや取り消しがなく、合衆国法典第21巻360bbb-3(b)(1)、第564条(b)(1)に則り、ソトロビマブの緊急使用許可が妥当な状況であると宣言されている期間に限り、認められています。

許可された使用
米国食品医薬品局(FDA)は、SARS-CoV-2ウイルス陽性と診断された軽症から中等症の、入院や死亡などの重症化リスクの高い成人および小児患者(12歳以上で体重40kg以上)の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)治療薬として、未承認の製剤であるソトロビマブの緊急使用を認める緊急使用許可(EUA)を発出しました。

許可された使用の制限
以下の患者にはソトロビマブを使用することは許可されていません。

    • COVID-19による入院患者
    • COVID-19により酸素療法を必要とする患者
    • (COVID-19とは無関係の併存する基礎疾患により長期酸素療法を受けている者で)COVID-19によりベースライン酸素流量の増量を必要とする患者

COVID-19による入院患者にソトロビマブによる治療の効果は認められていません。高流量酸素吸入や機械的換気を必要としているCOVID-19入院患者にSARS-CoV-2モノクローナル抗体を投与すると、臨床転帰が悪化することがあります。

ソトロビマブに関する重要な安全性情報

禁忌
ソトロビマブ、または製剤の添加剤に対してアナフィラキシーの既往歴のある患者には禁忌です。

警告と注意事項
ソトロビマブに関する臨床データは限られています。ソトロビマブの使用に伴い、今までに報告されていない重篤で予測できない有害事象が発現する可能性があります。

アナフィラキシーや注入に伴う反応などの過敏症
ソトロビマブ投与により、アナフィラキシーなどの重篤な過敏反応が認められています。臨床的に重大な過敏反応やアナフィラキシーの徴候および症状がみられた場合、直ちに投与を中止し、適切な薬物療法および/または支持療法を開始してください。

ソトロビマブ投与により、注入時および注入から24時間以内に注入に伴う反応が認められることがありますが、これらの反応は重度または生命を脅かす可能性があります。
注入に伴う反応の徴候および症状には以下が含まれます:発熱、呼吸困難、酸素飽和度低下、悪寒、疲労、不整脈(例:心房細動、洞性頻脈、徐脈)、胸痛または胸部不快感、脱力感、精神状態の変化、悪心、頭痛、気管支痙攣、低血圧、高血圧、血管浮腫、咽喉刺激感、蕁麻疹やそう痒感を含む発疹、筋肉痛、血管迷走神経反射(例:前失神性、失神性)、浮動性めまい、発汗。

注入に伴う反応が発現した場合には、注入の減速または中止を検討し、適切な薬物療法および/または支持療法を実施してください。

緊急使用許可に基づきSARS-CoV-2モノクローナル抗体を使用した際に、注入から24時間以上経過した後の過敏症の発現も報告されています。

SARS-CoV-2モノクローナル抗体投与後の臨床的悪化
SARS-CoV-2モノクローナル抗体投与後にCOVID-19の臨床的悪化がみられた例が報告されています。その徴候や症状には、発熱、低酸素症/呼吸困難の増悪、不整脈(例:心房細動、頻脈、徐脈)、疲労、および精神状態の変化などがあります。それが原因で入院が必要となった事象もありますが、それらの事象がSARS-CoV-2モノクローナル抗体の使用と関連したものか、COVID-19の疾患進行によるものかについては分かっていません。

重症のCOVID-19患者における効果の限界と潜在的リスク
COVID-19による入院患者にソトロビマブによる治療の効果は認められていません。高流量酸素吸入や機械的換気を必要としているCOVID-19入院患者にSARS-CoV-2モノクローナル抗体を投与すると、臨床転帰が悪化することがあります。したがって、次の患者に対しソトロビマブを使用することは許可されていません:COVID-19による入院患者、COVID-19により酸素療法を必要とする患者、COVID-19とは無関係の併存する基礎疾患により長期酸素療法を受けている者でCOVID-19によりベースライン酸素流量の増量を必要とする患者。

有害事象
COMET-ICEでは、ソトロビマブを投与した患者の2%、プラセボを投与した患者の1%に過敏症の副作用が認められました。

COMET-ICE試験のソトロビマブ投与群で治療により生じた有害事象で、プラセボ群よりもソトロビマブ投与群に発現率が高いものは、発疹(1%)と下痢(2%)であり、その全てがグレード1(軽度)またはグレード2(中等度)でした。

特別な集団における使用

妊娠
本剤に関連した、重大な先天異常、流産、または妊婦や胎児に生じる有害な転帰のリスクを評価できるほど十分なデータは得られていません。妊娠中には、妊婦および胎児への潜在的ベネフィットが潜在的リスクを上回ると判断される場合にのみ、ソトロビマブを使用するようにしてください。

授乳婦
ヒト母乳中にソトロビマブが排泄されるかどうか、母乳栄養児や乳汁産生に影響を及ぼすかどうかについて、利用可能なデータはありません。乳児がCOVID-19に曝露しないよう、授乳中のCOVID-19患者は臨床ガイドラインに準拠した投薬法に従ってください。

Vir社とGSKの協働について
2020年4月、Vir社とGSKは、COVID-19を引き起こすSARS-CoV-2を含むコロナウイルスに対するソリューションの研究開発において、提携する契約を締結しました。この提携では、Vir社独自のモノクローナル抗体プラットフォーム技術を駆使し、今回のCOVID-19パンデミックと今後起こりうる急激な感染増加に対応するため、治療薬に加え、ワクチンなど予防のための選択肢となりうる既存の抗ウイルス抗体の開発を加速し、新たな抗ウイルス抗体を同定します。両社は、機能ゲノミクス分野でGSKが持つ専門性を活用するとともに、CRISPRスクリーニングと人工知能の分野において両社が培った技術を結集し、細胞宿主遺伝子を標的とした抗コロナウイルス化合物を同定します。さらに、両社それぞれの専門性をSARS-CoV-2やその他のコロナウイルスワクチンの研究に活用していきます。

COVID-19に対するGSKの取り組み
COVID-19に対するGSKの取り組みは、業界内でも最も幅広いものであり、提携企業との共同開発により、複数のワクチン候補に加え、3種類の治療薬候補の開発が進んでいます。

GSKは、アジュバント技術を提供することで、複数の企業や団体と協力し、COVID-19ワクチンの開発に取り組んでいます。サノフィ社、メディカゴ社、SK Bioscience社と共同で、アジュバント添加タンパク質ベースのワクチン候補を開発しており、いずれも現在、第3相臨床試験を実施中です。アジュバントを使用することにより、1回の接種に必要な抗原の量が抑えられるため、ワクチンの生産量を増やすことができ、より多くの人々を守ることに貢献できるからです。

GSKは、メッセンジャーRNA技術を専門とするCureVac社と、1つのワクチンで複数の新たな変異株に対処できるCOVID-19次世代多価mRNAワクチンを共同開発しています。さらにGSKは、COVID-19患者さんの治療法も検討しており、Vir Biotechnology社と共同で、COVID-19の治療法や予防法として使用可能なモノクローナル抗体の開発を行っています。

COVID-19に対するVir Biotechnologyの取り組み
Vir Biotechnologyは、世界で最も深刻な感染症に対処するというミッションを掲げ設立されました。2020年、Vir社は独自の科学的見解に加え、COVID-19に対する治療薬候補やワクチンなど予防のための選択肢となりうる複数のモノクローナル抗体を検討する業界最高レベルの抗体プラットフォームを活用し、COVID-19パンデミックに迅速に対応しました。ソトロビマブは、Vir社が開発した、臨床使用できる初めてのSARS-CoV-2を標的とする抗体です。この抗体は、薬剤耐性に対するバリア性の高さが予想されることに加え、正常細胞へのウイルスの侵入を防ぐとともに感染細胞を除去する能力を高めると期待されるなど、前臨床研究で証明された有望性に基づき、慎重に選ばれました。Vir社では、SARS-CoV-2や将来起こりうるコロナウイルスパンデミックと闘うため、独自に、また提携企業と協働して、治療や予防のための新たなソリューションを追求し続けます。

GSKについて
GSKは、科学に根差したグローバルヘルスケアカンパニーです。詳細情報は https://jp.gsk.comをご参照ください。

Vir Biotechnologyについて
Vir Biotechnologyは、免疫学的考察と最先端技術を組み合わせ、重篤な感染症の治療と予防にフォーカスした臨床段階の免疫系専門企業です。Vir社では、自然免疫過程に関する重要な所見を探索することで、免疫系を刺激し活性化するための4つの技術プラットフォームを確立しました。現在、同社が有する開発パイプラインには、COVID-19を標的とする製品候補、B型肝炎ウイルス、A型インフルエンザ、ヒト免疫不全ウイルスを標的とした製品候補が含まれています。詳細については、www.vir.bioをご覧ください。


1 ソトロビマブの日本における製品名は「ゼビュディ点滴静注液500mg」です