慢性閉塞性肺疾患(COPD)早期診断をサポートする「簡便なスクリーニング質問票」の有用性を示唆~適切な診断や治療に、早期にアクセスできる環境の整備にも貢献~

グラクソ・スミスクライン株式会社(本社:東京都港区、代表取締役社長:ポール・リレット、以下 GSK)は、慢性閉塞性肺疾患(Chronic Obstructive Pulmonary Disease、以下COPD)の早期診断をサポートするための、簡便なスクリーニング質問票の有用性がOCEAN study(Okinawa COPD casE finding AssessmeNt study)で示唆されたと、米国胸部学会議(2020 American Thoracic Society virtual)で発表しました。

簡便なスクリーニング質問票(COPD-Q*およびCAPTURE**)への回答を通じ、一般集団の中から気流閉塞が認められる人や、COPDではないもののCOPDへの移行率や死亡率が高いと言われている人(Preserved Ratio Impaired Spirometry、以下PRISm⁂群)1,2,3を予め特定し、これらの人々に呼吸機能検査を行うことで、効率的かつ費用対効果の高い方法で、COPDの早期診断につなげるという新しいアプローチの可能性を示すものです。

COPDにおいては、症状の進行を遅らせ、増悪のリスクを低下させるという身体的負担の軽減、また患者さんの日常生活の維持・改善、医療費の削減、そして社会的な生産性の維持や向上、健康寿命の延伸などが課題として挙げられます。これらの課題を解決するには、早期発見・早期治療に取り組むことも重要であり、本研究結果はその点において貢献できる可能性を示唆しています。

当社代表取締役社長のポール・リレットは次のように述べています。
「私たちは呼吸器領域におけるリーディングカンパニーとして、治療薬を提供するだけでなく、適切な診断と治療に、早期にアクセスできる環境を整備するという新たな価値を創造し、社会に提供していくことも、我々の重要な使命の1つだと考えています。高齢化が今後ますます進展する日本において、COPDで苦しむ人を1人でも減らせるよう、引き続き取り組んで参ります。」

*COPD-Q :COPDスクリーニングのための質問
**CAPTURE :COPD Assessment in Primary Care to Identify Undiagnosed Respiratory Disease and Exacerbation Risk
⁂PRISm :Preserved Ratio Impaired Spirometry。FEV1/FVCが70%以上、かつ% predicted FEV1が80%未満

慢性閉塞性肺疾患(COPD)とは
COPDは、タバコ煙を主とする有害物質を長期に吸入曝露することで発症する不可逆性の肺疾患で、呼吸機能検査では、気流閉塞を示します4。「せき・たん」や「息切れ」といった呼吸に関わる症状が現れることが特徴です4。これらの症状は徐々に進行し、自覚症状にも乏しいため、気が付いた時には既に症状が進行してしまっている可能性もあります4。そのため、早期発見・早期治療が非常に重要です。国内では、40歳以上の有病率は8.6%5で、約530万人の患者さんがいると推計されていますが、実際に治療を受けているのは約26万人にすぎません5

OCEAN Study(Okinawa COPD casE finding AssessmeNt study)について
本試験は、沖縄県の那覇市医師会生活習慣病検診センターでの特定健康診査(特定健診)を受けた40歳以上の市民2,518名を対象に、COPD-QおよびCAPTUREという2つのCOPDスクリーニング質問票の有用性を評価することなどを目的に実施されました。本試験は、一般社団法人 那覇市医師会、慶應義塾大学およびGSKの共同研究です。

試験の結果、上記2つのスクリーニング質問票の活用により、気流閉塞が認められる人、PRISm群、またCOPDの症状を有する人を、一定以上の感度および特異度で検出することができ、その有用性が示唆されました。また気流閉塞が認められる人は全体の2.1%(52/2518例)、PRISm群は全体の16.7%(420/2518例)を占めていました。そして気流閉塞が認められる群の63.5%(33例)、PRISm群の80%(336例)は60歳未満であり、早期のスクリーニング、早期介入の重要性も示唆されました。
特定健診の場を活用し、PRISmを含めて両質問票を同時に評価する大規模試験が行われたのは今回が初めてとなります。

GSKの呼吸器領域への注力と貢献
GSKは約50年にわたり、気管支喘息とCOPDの領域において、治療薬の研究開発をリードしてきました。1969年の世界初となる短時間作用型β2刺激薬をはじめ、最近5年間で6つもの薬剤を発売し、今日の呼吸器領域における先進的な製品群につなげてきました。私たちはこれからも適切な患者さんに適切な治療を届けられるよう、多くの医療関係者とともに、世界に誇る科学を駆使し、明日の治療を変える薬剤の研究開発に注力してまいります。すべての患者さんが、呼吸を妨げられずに生活できる日が来るまで、私たちは歩みを止めることはありません。

GSKは、より多くの人々に「生きる喜びを、もっと」を届けることを存在意義とする科学に根差したグローバルヘルスケアカンパニーです。詳細情報は https://jp.gsk.com/ をご参照ください。

 


1 Adibi A, et al. European Respiratory Journal 2020; 55: 1902217
2 Renata S, et al. European Respiratory Journal 2020; 55: 1901217
3 Barnes P, et al. Journal of the COPD Foundation 2019; 6(5):380-383
4 一般社団法人 日本呼吸器学会. https://www.jrs.or.jp/modules/citizen/index.php?content_id=12 より改編
5 2001年 福地義之助ら NICE Study