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ワクチン科学で薬剤耐性菌と闘う

ワクチン科学で薬剤耐性菌と闘う

ワクチンは、抗菌薬と同様に重要であるにもかかわらず、抗菌薬への耐性菌の世界的拡大を抑制するという目的では未だ充分に活用されていません。GSKは新たなワクチンを通じてその現状を変えようとしています。

20世紀の初めに抗菌薬が発見されたことで、ヘルスケアに革命が起こり、世界中の数え切れない命が救われました。1928年にアレクサンダー・フレミングがペニシリンを発見する前の平均寿命は47歳でした。ごく小さな切り傷でも、そこからの感染症によって命を落とすことがあったのです[2]

過去90年間、抗微生物薬、とりわけ抗菌薬の使用は、医学の進歩を支え、現代医療の幅を広げました[2]。しかしながら、増加する薬剤耐性(AMR)により、世界中の人々、公衆衛生、社会、経済が、脅威にさらされています。

薬剤耐性(AMR)とは?

薬剤耐性(AMR)は、病原微生物(バクテリア、ウイルス、真菌、寄生虫)増殖を抑制する薬剤に耐性を持ち、反応を示さなくなる現象です。突然変異や、不適切な治療などによる抗微生物薬の過剰投与により生じます。AMRにより効果的な治療ができなければ、感染が長引き、さらに感染が身体のほかの部分に波及する可能性があります。

増大するAMRの脅威

抗微生物薬の使用とともに、抗菌薬の不適切な使用も世界的に拡大しており、通常の耐性菌だけでなく、現存するほぼすべての抗菌薬に耐性を持つスーパーバグ(超多剤耐性菌)も加速的に増加しています。

そのため、通常の感染症でも、治療ができないケースが増加の一途をたどっています。これにより、過去1世紀にわたって大きく進歩してきたヘルスケアが、後退してしまう可能性があります。がん治療の効果がなくなり、通常の外科手術もできなくなるかもしれません。出産さえ今よりも危険なものとなる可能性があります[3]

一方、新たな抗菌薬の開発は、科学的にも経済的にも困難を伴います。そのような中でGSKは、次世代型抗菌薬の開発に力を入れており、また、開発中の新薬候補の豊富なパイプラインを備えています。

今後数十年間は、人口動態の変化、気候変動、人の移動によって病原体の拡散が容易となり、ますますAMRが発生していくでしょう。薬剤耐性菌による感染症のために毎年70万人が亡くなっていると推計されています。最悪の場合、2050年までに毎年1,000万人がAMRで命を落とす可能性があります。これは現在のがんと糖尿病による死亡者数の合計より多い数です[4]

AMR拡大抑制のための感染防止

ほとんどの大手製薬会社が抗菌薬研究から撤退した中、GSKは、次世代の抗菌薬の開発に力を注ぐ研究部門があり、新薬候補の開発パイプラインを有しています。ワクチンは、抗菌薬と同様に重要であるにもかかわらず、薬剤耐性菌の世界的拡大を抑制するという目的では未だ充分に活用されていません。

ワクチンの接種は、感染症のリスクを下げる一方で、ヒトの免疫システムが病原体を認識し迅速かつ効果的な免疫防御システムを構築するよう働きかけます。多くの人々がワクチンを接種することで、免疫異常等の理由でワクチン接種を受けることのできない人々を守ることができます。これは「集団免疫」と呼ばれ、全人口における罹患数を大幅に減少させます。ワクチンの使用により感染拡大が抑制され、抗菌薬の需要と使用数が減少すると、結果的に耐性菌の出現が大幅に抑制されます。

GSKは、世界的脅威であるAMR対策でワクチンが重要な役割を果たすと考えています。GSKのワクチンのポートフォリオにより、細菌性感染から非細菌性感染にいたるまで、幅広い脅威から世界中の何千万もの人々を守ることができるでしょう。

GSKの新たな科学的知見とテクノロジーの結晶であるアジュバント、SAM(自己増幅mRNA)、バイオコンジュゲート、GMMA(一般化膜抗原モジュール)などに注力することにより、耐性を獲得しそうな病原体を標的にできるようになりました。そのため、従来のアプローチよりも迅速に効果的なワクチンを生み出すことが可能となりました。

現在GSKでは、世界保健機関(WHO)や欧州疾病予防管理センター(ECDC)、米国疾病予防管理センター(CDC)のために、AMR病原体を優先的に標的とする複数のワクチンおよび治療薬のプロジェクトを行なっています。

具体的には、RSウイルスに対する新たな予防ワクチンや、抗菌薬への耐性が増していることが問題となっている赤痢菌、黄色ブドウ球菌、クロストリジウム・ディフィシル菌、淋菌などの細菌感染症に作用する新たなワクチンと現存するワクチンの可能性を探求しています。

GSKは、急速に出現した公衆衛生の危機との闘いを助ける新たなアプローチに取り組んでいます。GSKはAccess to Medicines Foundation(医薬品アクセス財団)の「薬剤耐性ベンチマーク2020報告書」で、第1位にランクされ、AMR分野のR&Dプロジェクトの約1/5を手がけていることを誇りに思います[1]

これからも抗菌薬が重要な役割を果たすことに変わりはありません。しかし、私たちはAMRの問題に根本から対処する潜在力を持った、新しく効果的な方法であるワクチン開発の分野で知見と能力を高めることにより、耐性菌を減らし、より多くの人々を感染症から守りたいと考えています。

AMRとの戦いは長い道のりですが、この大きな意義を持つ試みが成功すると、人々の健康に大きな恩恵がもたらされ、社会がヘルスケアの次の段階を模索していくことが可能になると期待しています。

 

参考文献

[1] Adedeji, W.A. The treasure called antibiotics. Ann Ib Postgrad Med. 2016 Dec; 14(2): 56–57.  Available at: https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5354621/#!po=8.33333  Last accessed 12 June 2020

[2] Shallcross, L.J & Davies, S.C, Antibiotic overuse: a key driver of antimicrobial resistance, Br J Gen Pract. 2014 Dec; 64(629): 604–605.  Available at https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4240113/#__ffn_sectitle  Last accessed 12 June 2020

[3] World Health Organization, ‘About AMR’. Available at: https://www.euro.who.int/en/health-topics/disease-prevention/antimicrobial-resistance/about-amr  Last accessed 17 June 2020

[4] HM Government, ‘Antimicrobial Resistance: Tackling a crisis for the health and wealth of nations’, p.5.
https://amr-review.org/sites/default/files/AMR%20Review%20Paper%20-%20Tackling%20a%20crisis%20for%20the%20health%20and%20wealth%20of%20nations_1.pdf  Last accessed 12 June 2020

[5] Access to Medicines Foundation, Antimicrobial resistance 2020 benchmark.  Available at: https://accesstomedicinefoundation.org/amr-benchmark/2020-benchmark.  Last accessed June 2020