GSK、帯状疱疹予防ワクチン「シングリックス筋注用」の日本人高齢者を対象とした医療経済分析の結果が学術誌に掲載
~65歳の日本人において、帯状疱疹予防ワクチンであるシングリックスの接種は、ワクチン接種を行わない場合と比べ、費用対効果に優れることが示された~
- 65歳集団100万人あたり、71,423例の帯状疱疹、および、15,858例の帯状疱疹後神経痛を予防すると推計
グラクソ・スミスクライン株式会社(本社:東京都港区、代表取締役社長:ポール・リレット、以下 GSK)は、帯状疱疹予防ワクチン「シングリックス筋注用(乾燥組換え帯状疱疹ワクチン)以下、シングリックス」の65歳の日本人を対象とした帯状疱疹の費用対効果分析の結果が学術誌(Dermatology and Therapy)に掲載されたことをお知らせします。本研究では、シングリックスに対して、最新の有効性・効果減弱率の推計値1を用い、65歳の日本人におけるシングリックスの接種時と非接種時とを比較し、費用対効果および公衆衛生上の影響に関する分析を行いました。
本研究では、65歳の日本人にシングリックスを接種(接種率40%)したと仮定し、接種後、生涯期間にわたって追跡したシミュレーション分析を実施した結果、シングリックスの接種が、接種しない場合と比較して、65歳集団100万人あたり71,423例の帯状疱疹の罹患、および、15,858例の帯状疱疹後神経痛(PHN)を予防すると推計されました。
また、予防と治療にかかる費用では約118億円、生産性損失などを含めると約130億円の増分費用があることが推計されました。一方で、シングリックスを接種することによって得られる増分質調整生存年(QALY)は、2,807QALYsでした。増分費用対効果比(ICER)は、質調整生存年(QALY)あたり、医療費支払者の立場では約420万円、社会の立場では約460万円でした。日本で一般的に許容される閾値は500-600万円/QALY以下であり、本研究が示すこれらのICERの数値は、良好であることが確認されました。
本研究の結果から、65歳の日本人においてシングリックスを接種することは、ワクチン非接種と比較して、医療費支払者および社会の立場において、費用対効果に優れることが示されました。
GSKのEpidemiology & Health Economicsのリージョンヘッドであるスミトラ・シャンタクマー(Dr. Sumitra Shantakumar)は次のように述べています。
「ワクチン接種による帯状疱疹の予防は、疾病負担の減少、そして、生活の質の向上につながることが期待されます。本研究は、帯状疱疹予防の重要性を裏付ける、シングリックスの定期接種化の実現に向けた日本の政策決定の一助となる可能性を示唆した意義のある研究です。」
GSK代表取締役社長のポール・リレットは次のように述べています。
「高齢化が今後ますます進展する日本において、帯状疱疹から身を守ることの重要性について、より多くの方々に知っていただくことは大切だと考えています。本研究が、帯状疱疹や合併症で苦しむ人をひとりでも減らすことに寄与することを願うとともに、私たちはこれからも医療従事者の先生方への情報提供活動に注力してまいります。」
なお、これらの結果を含む詳細な分析結果は、Dermatology and Therapy誌、および、第25回日本ワクチン学会学術集会で発表されました。
各国のシングリックスの接種推奨および公費助成の状況について
シングリックスは、現在、米国、カナダ、英国、ドイツ、オランダ、イタリア、スペイン、スイスで接種が推奨されており、そのうち、英国とオランダを除く、6カ国(米国、カナダ、ドイツ、イタリア、スペイン、スイス)では、国あるいは地域単位で公費助成が実施されています。日本では、定期接種(接種推奨および公費助成)に関するワクチンのひとつとして議論されています。また、一部の地方自治体で公費助成が実施されています。
シングリックスについて
シングリックスは、50歳以上の成人を対象とした帯状疱疹予防のためのワクチンとして、2018年に厚生労働省より製造販売承認を取得し、2020年1月から日本で発売されています。シングリックスは、筋肉内に2回接種する、生ワクチンではない遺伝子組換え型アジュバント添加サブユニットワクチンです。抗原である糖タンパクEおよびアジュバントであるAS01Bを組み合わせた本品は、水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)に特異的な免疫反応を誘導することを目的としており、加齢に伴うVZVに対する免疫低下を防ぐことを助けます。
帯状疱疹について
帯状疱疹は、子供の頃に感染した水ぼうそうと同じウイルスである水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)が、体の中で再活性化することで発症する皮膚の病気です2。日本人成人の90%以上は、帯状疱疹の原因となるウイルスがすでに体内に潜んでいる可能性があり、50歳を過ぎると帯状疱疹の発症が増え始め、80歳までに約3人に1人が帯状疱疹を発症するといわれています3。
帯状疱疹の症状には、通常、胸部、腹部または顔面に痛みを伴う水疱やかゆみを伴う発疹が現れ、しばしば灼熱感、発赤、または刺すような痛みを伴うこともあります。発疹が消えた後、帯状疱疹後神経痛(PHN)という痛みが数ヶ月間続くことがあります。PHNは、帯状疱疹の最も一般的な合併症です4。また、50歳以上の帯状疱疹の患者さんは、PHNに移行しやすく、加齢とともに移行率は高まることから、高齢者ほどPHNになりやすいと考えられています5。
GSKは、科学に根差したグローバルヘルスケアカンパニーです。詳細情報はhttps://jp.gsk.com/をご参照ください。
1 Curran D, Van Oorschot D, Matthews S, et al. Long-term efficacy data for the recombinant zoster vaccine: impact on public health and cost effectiveness in Germany. Hum Vaccin Immunother. 2021;17(12):5296–303.
2 Harpaz. Prevention of herpes Zoster. June 2008. Available at: https://www.cdc.gov/mmwr/preview/mmwrhtml/rr5705a1.htm Last accessed: 20th December 2021
3 Shiraki K. et al.: Open Forum Infect Dis. 4(1), ofx007, 2017
4 Dworkin RH, et al. Diagnosis and assessment of pain associated with herpes zoster and postherpetic neuralgia. J Pain 2008;9:S37–44.Harpaz. Prevention of herpes Zoster. June 2008. Available at: https://www.cdc.gov/mmwr/preview/mmwrhtml/rr5705a1.htm Last accessed: 20th December 2021
5 稲田 英一 責任編集:帯状疱疹Up-to-Date. p50-51, 診断と治療社. 2012Dworkin RH, et al. Diagnosis and assessment of pain associated with herpes zoster and postherpetic neuralgia. J Pain 2008;9:S37–44.